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家族信託で受託者になってくれる家族がいない場合は?信託会社を使うメリット・デメリットを弁護士が解説

2026.09.28

「認知症に備えて家族信託をしたいけれど、受託者になってくれる家族がいない」と悩む方もいます。実は、家族信託の受託者は必ずしも家族である必要はありません。信託会社を受託者とする方法もあり、受託者になる家族がいない場合だけでなく、家族に財産管理の負担をかけたくないといった場合にも選択肢の一つになります。
本記事では、家族信託で受託者がいない場合に信託会社を利用する方法と、そのメリット・デメリットについて弁護士が解説します。

第1章 家族信託は受託者が家族でなくても利用できる

家族信託とは、自分の財産を受託者に託し、あらかじめ決めた目的に沿って管理・処分してもらう仕組みです。財産を託す人を「委託者」、財産を預かって管理する人を「受託者」、信託財産から利益を受ける人を「受益者」といいます。
実務では、認知症対策として、親が委託者・受益者となり、子どもを受託者として自宅や賃貸不動産などを管理してもらう形がよく用いられます。

家族信託の受託者は家族でなくてもよい

「家族信託」という名称から、子どもや兄弟姉妹などの家族でなければ受託者になれないと思われることがあります。
しかし、信託法は受託者を家族に限定していません。現在の信託法で受託者になることができないとされているのは未成年者であり、家族以外の第三者や法人が受託者となることは法律上可能です。
その具体策の一つとなるのが、信託会社を受託者とする方法です。

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※一般に、家族や親族が受託者となる信託を「家族信託」「民事信託」、信託会社などが受託する信託を「商事信託」と呼んで区別することがありますが、本記事では分かりやすさを優先し、信託会社を受託者とする場合も含めて「家族信託」と表現します。

第2章 家族信託で受託者がいない場合は信託会社を利用できる

2-1 信託会社とは?財産管理を業務として引き受ける会社

信託会社とは、信託契約に基づいて財産を預かり、その財産の管理や処分を業務として行う会社です。
たとえば、家族信託で信託会社を利用する場合には、受託者の役割を信託会社に任せることになります。

国の免許または登録がなければ営業できない

財産の管理を法人に任せることに不安を覚えるかもしれませんが、信託会社は一般の会社が自由に始められる事業ではありません。
信託の引受けを営業として行うには、原則として国の免許を受ける必要があり、受託者の裁量が限定される管理型信託業についても登録が必要です。また、法律上も、信託会社には受益者のために忠実に業務を行うことや、信託された財産を会社自身の財産と分けて管理することなどが求められています。

高齢化や認知症への備えとして家族信託のニーズが広がっており、信託会社の数も以前と比べて増えています。受託者になってくれる家族がいない場合には、信託会社に財産管理を任せることも選択肢の一つといえます。

第3章 家族信託で信託会社を受託者にするメリット

3-1 受託者が高齢になったり死亡したりする問題が起こりにくい

信託会社を利用する大きなメリットの一つが、受託者個人の年齢や健康状態に左右されにくいことです。
たとえば、75歳の父親が55歳の長男を受託者として家族信託を始めたとします。
信託が20年間続けば、その時点で長男も75歳です。長男自身が病気になったり、認知症になったり、父親より先に亡くなったりする可能性もあります。
信託法では、個人である受託者が死亡すると、その受託者の任務は終了すると定められており、家族を受託者にする場合には、後継の受託者についても考えておかなければなりません。

信託会社は法人のため、担当者個人が退職したり死亡したりしても、それだけで受託者である法人そのものがなくなるわけではありません。
もちろん信託会社自体の事業継続など別のリスクはありますが、特定の一人の寿命や健康状態に長期の財産管理を依存させずに済む点は、信託会社を利用するメリットといえます。

3-2 家族に面倒な財産管理を背負わせなくてよい

受託者には、信託財産を適切に管理する責任があります。信託法上も、受託者には注意義務や忠実義務、信託財産と自分自身の財産を分けて管理する分別管理義務、帳簿等の作成・報告・保存などの義務が定められています。

たとえば賃貸不動産を信託すれば、受託者は家賃の入出金や修繕費の支払い、収支管理などを長期間続ける必要があります。売却することになれば、受託者が契約手続に関わることにもなります。

仕事や子育てをしている子どもにとって、こうした財産管理を10年、20年と続けることの負担は小さくありません。
信託会社を受託者にすれば家族に事務作業や責任を背負わせずに済むため、子どもに負担を軽くしたいという考えから信託会社の利用が検討されるケースもあります。

3-3 兄弟のうち誰か一人に財産管理を集中させずに済む

子どもが複数いる場合には、誰を受託者にするかが別の問題になることがあります。
たとえば、長男、次男、長女の3人がいる家庭で長男だけを受託者にした場合、信託した不動産などは受託者である長男名義で管理されます。
もちろん長男自身の財産になったわけではありませんが、次男や長女から見れば、「なぜ兄だけが財産を管理するのか」「本当に適切に管理されているのか」と疑念を抱くこともあります。

特に、将来の相続について兄弟間で考え方が異なる家庭では、家族の一人に大きな管理権限を持たせることが不信感につながるおそれもあります。
第三者である信託会社を受託者とすることで、兄弟姉妹の誰か一人に財産管理を集中させずに済み、家族の誰を受託者にするかという問題を避けやすくなる点も、信託会社を利用するメリットといえます。

第4章 家族信託で信託会社を受託者にするデメリット

信託会社を受託者にすることにはメリットがある一方、事前に確認しておきたい点もあります。信託会社を利用するかどうかは、こうした注意点も踏まえて検討することが大切です。

4-1 信託会社へ継続的な費用を支払う必要がある

信託会社を利用する場合のデメリットの一つは、費用です。
家族を受託者にする一般的な家族信託では、受託者を無報酬とすることもできます。一方、信託会社は事業として財産管理を引き受けるため、信託設定時の報酬に加えて、信託期間中の管理報酬などがかかります。

信託会社の料金には一律の相場があるわけではなく、信託する財産の種類や金額、依頼する管理内容などによって異なります。
公表されている個人向けサービスの料金を見ると、家族信託を始める際に数十万円程度、その後も財産を管理してもらうために月額数千円から1万円程度の費用がかかる例があります。不動産を信託する場合など、管理する財産や業務内容によっては、さらに費用がかかることもあります。

信託は10年、20年と続く可能性があるため、契約時の費用だけを見るのではなく、信託終了までの総額で検討することが大切です。

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4-2 家族を受託者にする場合ほど融通が利かないことがある

信託会社は、基本的に信託契約や自社が引き受けた業務の範囲に沿って財産を管理します。
そのため、家族を受託者にした場合と同じ感覚で、「事情が変わったから今回はこうしてほしい」と柔軟に対応してもらえるとは限りません。

たとえば、管理型信託業で扱われる信託の中には、委託者などからの指示に基づいて財産を管理・処分するものがあり、この場合、信託会社が財産の処分を自ら判断することはありません。そのため、将来認知症になった後に賃貸不動産を売却する可能性があるのであれば、「どのような場合に売却するのか」「誰が売却の必要性を判断するのか」「誰が信託会社に連絡するのか」などを、あらかじめ決めておく必要があります。

4-3 希望に合う信託会社を見つけるのに手間がかかる

信託会社であれば家族信託の内容すべてに対応しているというわけではありません。
信託会社によって、取り扱える財産や対応できる業務の範囲が異なるためです。たとえば、預貯金などの金銭は扱っていても不動産には対応していない会社や、不動産の管理には対応していても将来の売却までは引き受けていない会社もあります。

そのため、「自宅と賃貸不動産を信託したい」「認知症になった後には必要に応じて不動産を売却してほしい」と考えていても、その希望をそのまま引き受けてくれる信託会社がすぐに見つかるとは限りません。

信託会社と連携して家族信託を進めるなら

前述のとおり、信託会社を利用した家族信託を検討する場合には、希望する財産管理の内容に対応できる信託会社を探す必要があります。私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)グループは信託会社とも連携しながら、希望する信託の内容に応じた設計をサポートしています。

家族信託についてのご相談も初回は無料。相談の流れはこちらから。

第5章 家族信託で信託会社を利用する場合によくある質問

Q1. 信託会社を受託者にすると、不動産の名義も信託会社になるのですか?

A1. 信託会社名義になりますが、信託会社の固有財産になるわけではありません

不動産を信託すると、受託者である信託会社への所有権移転登記が行われるため、登記上の名義は信託会社になります。ただし、だからといって信託会社がその不動産を自由に使えるようになるという意味ではありません。信託された不動産は、信託会社自身の財産とは分けて管理されます。また、信託会社は信託契約で定められた目的や方法以外で不動産を管理・処分することもありません。

Q2. 信託会社が倒産したら、家族信託はどうなりますか?

A2. 倒産しただけで家族信託が直ちに終了するわけではありません

倒産の手続によって扱いは異なりますが、信託会社が破産・解散などにより受託者としての任務を終えた場合でも、それだけで家族信託そのものが直ちに終了するわけではありません。
信託契約で後継の受託者をあらかじめ定めている場合には、その後継受託者が就任を承諾したうえで信託財産を引き継ぎます。信託契約に新しい受託者に関する定めがない場合には、原則として委託者と受益者の合意によって新しい受託者を選びます。
ただし、受託者が欠けたまま新しい受託者が就任しない状態が1年間続くと、信託は終了します。そのため、信託会社を利用する際には、信託会社が業務を続けられなくなった場合に誰へ引き継ぐのかについても、契約時に検討しておくことが大切です。

Q3. 将来、家族が受託者になれるようになったら信託会社から交代できますか?

A3. 契約内容などによっては家族へ交代できる場合があります

将来、家族が受託者になれるようになった場合には、信託会社から家族へ受託者を交代できる場合があります。ただし、自由に交代できるとは限らず、信託契約で定めた受託者の変更方法や、その時点の状況に応じた手続が必要です。
将来的に家族へ受託者を引き継ぐ可能性がある場合には、家族信託を始める段階からそのことを伝え、受託者を変更する場合の条件や手続について確認しておくとよいでしょう。

Q4. 信託会社を使った家族信託は、まずどこに相談すればよいですか?

A4. 信託の設計と信託会社選びを一緒に検討できる専門家への相談がおすすめです

信託会社を利用したい場合でも、最初から信託会社を探して申し込めばよいとは限りません。
まずは、どの財産を信託したいか、認知症になった後にどのように管理したいか、不動産を売却する可能性があるかなどを整理し、そのうえで希望する家族信託の内容に対応できる信託会社を選びます。
そのため、信託契約の設計だけでなく、信託会社の選定や税務・登記まで含めて相談できる専門家を選ぶのが望ましいでしょう。

まとめ|受託者がいない場合の家族信託は専門家に相談を

受託者になってくれる家族がいない場合でも、信託会社を利用することで家族信託を実現できる可能性があります。ただし、信託会社を利用する場合には、信託契約を作成するだけでなく、希望する財産管理に対応できる信託会社を選び、信託する財産に応じて税務や不動産登記への影響も含めて仕組みを整える必要があります。
そのため、相談先によって、家族を受託者にする一般的な家族信託だけでなく、信託会社を利用する方法まで含めて検討できるかどうかが変わります。

私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)グループは、弁護士法人を母体に税理士法人・司法書士法人などの士業法人が連携する士業グループです。家族信託をはじめ、自己信託やペット信託など目的に応じた信託の設計に取り組んでおり、必要に応じて信託会社とも連携しながら、それぞれの方の財産や家族関係に応じた方法を検討しています。
相続のお悩みで「これはどうすればいいんだろう」という疑問がある場合には、まずはお気軽にご相談ください。

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監修者:池本 稔洋
弁護士池本 稔洋

弁護士法人Nexill&Partners

弁護士池本 稔洋

  • 2017年3月
    兵庫県立星陵高等学校 卒業
  • 2021年3月
    神戸大学法学部 法律学科 卒業
  • 2023年3月
    神戸大学法科大学院 修了
  • 2025年4月
    弁護士法人Nexill&Partners 入所

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