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再婚相手の住まいを守りつつ、妻が死亡した後は自宅を前妻との子に残したい場合は?遺言・配偶者居住権・信託による相続対策を弁護士・税理士が解説

2026.10.05

前妻との間に子がいる一方、現在は再婚した妻と自宅で暮らしている場合、「自分の死後も妻には住み続けてもらいたいが、妻の死亡後は自宅を前妻との子に残したい」と考える方もいます。しかし、自宅をそのまま妻に相続させるだけでは、妻の死亡後、希望どおり自宅が前妻との子に引き継がれるとは限りません。
本記事では、妻の住まいを守りながら、自宅を最終的に前妻との子へ引き継ぐために、どのような生前対策を取れるのか、遺言・配偶者居住権・信託の違いとともに弁護士・税理士が解説します。

※本コラムでは、前妻との間の子は1人、現在の配偶者との間に子はいない、現在の配偶者の両親および祖父母はすでに死亡していることを前提とします。

第1章 後妻の死亡後、前妻との子が当然に自宅を引き継げるわけではない

前妻との間に子がいる人が再婚した場合、自分が亡くなったときには、現在の配偶者と前妻との子が相続人になります。

一方、現在の配偶者がその後亡くなったときは事情が異なります。
現在の配偶者と前妻との子との間には通常、親子関係がないため、前妻との子は現在の配偶者の法定相続人にはなりません。そのため、自宅を配偶者に相続させると、その後の自宅の引継ぎ先を前妻との子に固定することができなくなってしまうのです。

何も対策しなければ自宅は配偶者の親族に引き継がれる

現在の配偶者に自宅を相続させた場合、その配偶者が亡くなった後、配偶者の相続人になるのは両親であり、両親が亡くなっていれば、配偶者の兄弟姉妹またはその子である甥・姪が相続人となります。

つまり、何も対策をしなければ、自分が大切にしてきた自宅が、最終的には現在の配偶者の兄弟姉妹や甥・姪など、自分とはほとんど関わりのない人に引き継がれる可能性があります。

第2章 遺言書に「配偶者の死後は自宅を実子へ」と書くだけでは希望どおりには実現できない

遺言書に、「自分が亡くなったら自宅は現在の配偶者に相続させ、その配偶者が亡くなった後は実子に引き継がせる」と書いておけばよいと考えるかもしれません。
しかし、通常の遺言書だけで自宅を配偶者に相続させて、配偶者の死後に実子へ引き継がせるという二段階の承継を確実に法的拘束することは困難です。

遺言書によって決められるのは、原則として自分が亡くなったときの財産の引き継ぎ方です。そのため、自身の遺言書で、配偶者が取得した後の財産について、その死亡後の行き先まで確実に固定することは難しいといえます。

そのため、「現在の配偶者には生涯安心して自宅に住んでもらいたい。しかし、その配偶者が亡くなった後は、自宅を自分の子に引き継がせたい」と考えているのであれば、その希望を実現するための仕組みを準備しておく必要があります。

第3章 遺言と配偶者居住権を使えば、配偶者の住まいを守りながら自宅は実子が相続できる

3-1 配偶者居住権とは、配偶者に「住む権利」を残すこと

自分が亡くなった後も配偶者に自宅に住み続けてもらいたいものの、自宅そのものは実子に引き継がせたい場合には、「配偶者居住権」を利用する方法があります。
配偶者居住権とは、亡くなった人が所有していた自宅に配偶者が住んでいた場合に、一定の要件のもと、その配偶者が自宅に住み続けることができる権利です。

3-2 自宅の所有権は実子に相続させ、配偶者には住む権利を残す

配偶者居住権を利用する場合のポイントは、自宅の所有権を現在の配偶者には移さないことです。
遺言書で、自宅の土地・建物は実子に相続させ、現在の配偶者には建物について配偶者居住権を遺贈するように定めます。こうすることで、自分が亡くなった時点で自宅の所有者は実子になりますが、現在の配偶者は配偶者居住権に基づいて、そのまま自宅に住み続けることができます。

3-3 配偶者は亡くなるまで自宅に住むことができ、死亡後、配偶者居住権はなくなる

配偶者居住権の存続期間について特別な定めをしなければ、原則として配偶者が亡くなるまで続きます。そのため、配偶者の住まいを確保しながら、自宅そのものは最初から実子に引き継がせることができます。
自宅が配偶者自身の財産になるわけではないため、配偶者が亡くなった後に、配偶者の兄弟姉妹や甥・姪が自宅を相続することもありません。

また、配偶者居住権は、現在の配偶者が亡くなると消滅し、誰かに引き継がれることはありません。自宅の所有権はすでに実子が取得しているため、配偶者の死亡後に改めて自宅の所有権を実子へ移す必要もありません。

このように、自宅を最終的に実子へ引き継がせることが目的であれば、配偶者居住権を利用することで実現できるケースは少なくありません。
一方、現在の配偶者が将来認知症になった場合の財産管理まで備えたい、実子は自宅に住む予定がないため配偶者の死亡後に売却して現金で引き継がせたいなど、自宅という財産を将来の状況に応じて柔軟に管理・処分したい場合には、「信託」を利用する方法も検討できます。

第4章 信託を使い、自宅を配偶者と実子のために柔軟に管理する方法

4-1 信託では本人の死亡後も受託者に自宅の管理を任せられる

信託とは、自宅などの財産を受託者に託し、あらかじめ決めたルールに従って財産を管理・処分してもらう仕組みです。
今回のケースで信託を利用する場合には、たとえば本人が生きている間は、本人が財産を託す「委託者」と、その財産から利益を受ける「受益者」を兼ねます。自宅を実際に管理する「受託者」には、実子などの家族や信託会社などを選びます。
本人が亡くなった後は、現在の配偶者が自宅を利用できる内容の受益権を取得するようにし、受託者が引き続き自宅を管理するように設計します。

つまり、本人の死亡後に現在の配偶者へ自宅の管理そのものを任せるのではなく、以下の形で受託者による財産管理を継続させます。

本人の生前

委託者・受益者=本人
受託者=実子や信託会社など

本人の死亡後

受益者=現在の配偶者
受託者=引き続き実子や信託会社など

さらに、配偶者が亡くなったときには信託を終了し、その時点で残っている自宅や金銭を実子へ引き継がせるように定めておくこともできます。

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4-2 配偶者が認知症や施設入居となっても自宅を配偶者のために活用できる

配偶者居住権との大きな違いが出るのは、現在の配偶者が自宅に住み続けられなくなった場合です。
たとえば、本人が亡くなった後、配偶者が認知症となり、自宅での生活が難しくなって介護施設へ入居することも考えられます。
信託では受託者が自宅を管理するため、信託契約であらかじめ定めておけば、配偶者の判断能力が低下した後でも、受託者が自宅を管理し、必要に応じて売却することもできます。
さらに、自宅を売却して得た代金を引き続き信託財産として管理し、そこから配偶者の施設費や生活費を支払うように設計することも可能です。

つまり、信託では「配偶者が自宅に住めるようにする」だけではなく、将来自宅に住めなくなった場合には、自宅を現金に換えて、その財産的な価値を配偶者の生活のために使うところまで備えることができます。
なお、この場合も配偶者が亡くなった時点で残っている信託財産を実子に引き継がせるように定めておくことができます。

4-3 実子が自宅を必要としない場合は現金で引き継がせることもできる

実子にとっては、自宅という不動産そのものを取得することが最適とは限りません。また、「自分が築いた財産を配偶者の兄弟姉妹や甥・姪などへ渡さず、最終的に実子へ引き継がせること」を目的とするならば、自宅という形のまま残す必要はありません。

たとえば、実子が遠方に住んでおり、自宅に住む予定がない場合には、配偶者が亡くなった後に受託者が自宅を売却し、その売却代金を実子へ交付するように設計することも考えられます。この方法であれば、実子は利用する予定のない不動産を取得して、自ら管理したり、売却の手続をしたりする必要がありません。

このように、「自宅そのものを残す」ことに限定せず、自宅を売却した後の金銭まで含めて、最終的に誰へ財産を残すかを設計できる点も信託のメリットといえます。

4-4 実子に財産管理を任せにくい場合は信託会社を利用する方法もある

受託者には、前妻との実子などの家族を選ぶこともできます。この場合は、一般に家族信託と呼ばれる仕組みになります。
しかし、再婚家庭では、現在の配偶者と前妻との子が疎遠であることも考えられます。そのような場合に検討されるのが、信託会社などの専門事業者を受託者とする信託です。

信託会社などを利用する場合には、信託報酬などの費用がかかりますが、現在の配偶者と実子のどちらにも財産管理を任せず、中立的な専門事業者に管理を任せられることはメリットといえます。また、個人の受託者とは異なり、長期間にわたる財産管理を継続して任せやすい点もあげられます。

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まとめ|自宅の承継対策は弁護士・税理士に相談を

配偶者居住権を使う場合は遺言書で具体的に定める

配偶者居住権を利用する場合、遺言書で現在の配偶者に配偶者居住権を遺贈し、自宅の所有権は実子に相続させるといった内容を具体的に定めておく必要があります。
自宅の名義や共有関係によっては配偶者居住権を利用できない場合もあるため、遺言書を作成する前に不動産の権利関係を確認しておくことも重要です。

相続税のシミュレーションが重要

希望どおりの承継を実現できても、相続税まで含めると最適とはいえない場合もあります。自宅を実子に相続させることで配偶者の税額軽減を利用できる範囲が狭くなったり、実子が別居している場合には小規模宅地等の特例を利用しにくく、相続税を軽減できなかったりする可能性もあるためです。
配偶者居住権を利用する場合と、配偶者に自宅を相続させる場合とで、相続税がどの程度変わるのかを事前にシミュレーションすることをおすすめします。

相続・税務・登記・信託までワンストップで対応

私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)グループでは、弁護士・税理士・司法書士が連携し、遺言書の作成や家族信託の設計にも対応しており、親族を受託者とすることが難しい場合の信託会社の利用も含めて検討できます。
現在の配偶者の生活を守りながら最終的に財産を実子へ引き継がせたいなど、相続へのお悩みがある場合には、お気軽にご相談ください。

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監修者:後藤 祐太郎
弁護士後藤 祐太郎

弁護士法人Nexill&Partners

弁護士後藤 祐太郎

  • 2010年
    日本大学法学部 卒業
  • 2012年
    慶應義塾大学大学院法務研究科 修了
  • 2014年
    竹口・堀法律事務所 入所
  • 2016年
    現:弁護士法人Nexill&Partners 入所 那珂川オフィス支店長 就任

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