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コラム

家族信託の費用はどれくらいかかる?専門家への依頼費用・運用費用のポイントをケース別に弁護士が解説

2026.05.26

家族信託の費用は、信託する財産が預貯金だけなのか、不動産を含むのか、収益物件や複数の資産を対象にするのかなどによって変わります。実際にはどのくらいの費用がかかるのでしょうか。この記事では、家族信託にかかる費用の全体像と、代表的な信託内容ごとの費用イメージを弁護士がわかりやすく解説します。

第1章 家族信託とは?費用を考える前に押さえておきたい基本

家族信託とは、自分の財産を信頼できる家族などに託し、その家族が契約で定めた目的に沿って財産を管理・処分できるようにする仕組みです。認知症などで判断能力が低下した場合に備える方法として注目されています。
たとえば、父が所有している自宅や預貯金を、長男に管理してもらう形で信託するケースがあります。この場合、父を「委託者」、財産を管理する長男を「受託者」、財産から利益を受ける父を「受益者」として設計することが一般的です。

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家族信託の仕組みについて詳しく知りたい場合は以下の記事から確認いただけます。

家族信託って何?認知症による資産凍結を防ぐ仕組みと具体的な活用シーンを弁護士がわかりやすく解説

第2章 家族信託で発生する主な費用項目

家族信託にかかる費用は、誰に何を託すのか、信託する財産に不動産が含まれるのか、税務確認が必要になるのかなどによって変わります。

2-1 専門家に依頼する設計・契約書作成費用

家族信託を専門家に依頼する場合、まず検討することになるのが、設計・契約書作成費用です。
家族信託では、信託契約書の形式を整えるだけでなく、家族構成、財産内容、将来想定される相続、受託者の権限、信託終了時の財産の帰属先などを踏まえて、契約内容を設計する必要があります。
一般的には、専門家報酬は数十万円程度からになることが多く、信託財産の評価額や設計の複雑さによっては、100万円を超えるケースもあります。

2-2 公正証書を作成する場合の費用

家族信託契約書は、実務上、公正証書で作成することが多くあります。
公正証書作成費用は、公証役場に支払う手数料です。金額は信託財産の価額や契約内容によって変わりますが、数万円から十数万円程度が目安金額です。契約書の枚数や正本・謄本の取得数によっても費用が変わるため、実際の金額は公証役場での確認が必要です。
専門家に依頼する場合、公証役場との事前調整や必要書類の準備を専門家がサポートすることもあります。この部分が専門家報酬に含まれるのか、別途費用が必要になるのかも確認しておくと安心です。

2-3 不動産を信託する場合の登記費用

不動産を家族信託の対象にする場合、信託財産であることを登記上も明らかにするため、実務上は不動産について信託登記を行うことになります。
信託登記にかかる主な費用は、登録免許税と司法書士に支払う報酬などです。

登録免許税の目安

登録免許税は、不動産の固定資産税評価額などをもとに計算されます。目安としては、建物については固定資産税評価額の0.4%、土地については原則として0.4%ですが、軽減措置が適用される場合には0.3%で計算されます。ただし、土地・建物の別や適用される税率、軽減措置の有無によって変わるため、実際には個別に確認する必要があります。

司法書士費用の目安

司法書士費用については、信託登記1件あたり10万円前後から20万円程度が一般的な目安です。ただし、自宅の土地建物を信託する場合と、複数の賃貸アパートを信託する場合では登記にかかる費用が変わります。物件数が多い場合や、不動産の所在地によって申請先の法務局が複数に分かれる場合には、登記申請の件数や確認事項が増えるため、司法書士費用も高くなる傾向があります。

2-4 税務確認を税理士に依頼する場合の費用

典型的な家族信託では、委託者と受益者が同じ人物になることが多く、この場合、通常は信託を組んだ時点で直ちに贈与税が問題になるわけではありません。しかし、受益者の設定方法、信託終了時の帰属先、受益権の移転、収益不動産の扱いなどによっては、贈与税、相続税、所得税の検討が必要になることがあります。

税理士費用の目安

税理士に税務確認をする場合の費用は、信託財産の内容や検討範囲によって変わります。簡易な確認で足りる場合には、5万円から15万円程度が一つの目安になります。一方、相続税の概算シミュレーションまで行う場合には更に追加で報酬が発生することも多いため、二次相続まで含めて複数パターンを比較する場合には、必要な検討内容を整理し、費用の見通しを確認しておくと安心です。

第3章 ケース別に見る家族信託の費用イメージ

3-1 ケース① 預貯金のみを信託する場合

預貯金のみを信託するケースは、将来、親の判断能力が低下した場合に備えて、生活費、医療費、介護費、施設費用などを子どもが管理できるようにしておきたい場合に利用されます。

想定される利用場面

たとえば、父(委託者・受益者)がまとまった預貯金を持っており、今後の介護費や施設入居費の支払いを長男(受託者)に任せたいといったケースです。不動産を信託しないため、信託登記は不要です。

主に発生する費用

このケースで主に発生する費用は、専門家による信託設計・契約書作成費用、公正証書作成費用、信託口口座または信託専用口座の開設・管理に関する費用です。
不動産登記費用が発生しないため、家族信託の中では比較的シンプルな類型といえます。

費用イメージ

専門家費用と公正証書作成費用を合わせて、数十万円程度が必要になるケースが多いといえます。

このケースで注意すべき点

預貯金のみの信託は、不動産を含む信託に比べると費用を抑えやすい反面、金融機関対応が重要になります。信託口口座を作る予定がある場合には、どの金融機関で対応できるのか、契約書の形式に指定があるのかを事前に確認する必要があります。

3-2 ケース② 自宅不動産を信託する場合

自宅不動産を信託するケースは、親が自宅に住み続けることを前提に、将来、施設入居や介護状態の変化に応じて自宅を売却できるようにしておきたい場合に利用されます。

想定される利用場面

たとえば、母(委託者・受益者)が自宅と一定の預貯金を持っており、将来、認知症などで判断能力が低下した場合には、長女(受託者)が自宅を売却して施設費用に充てられるようにしておきたいといったケースです。

主に発生する費用

このケースでは、専門家による設計・契約書作成費用、公正証書作成費用に加えて、不動産の信託登記に関する登録免許税と司法書士費用が発生します。
また、自宅を将来売却する可能性がある場合には、売却権限の定め方、売却代金の管理方法、本人の居住の確保、売却後の残余財産の扱いなどを契約で整理する必要があります。

費用イメージ

一般的には、預貯金のみの信託よりも費用は高くなりやすく、専門家費用、公正証書作成費用、登記費用を合わせると、数十万円後半から100万円前後になることもあります。
もっとも、不動産の評価額、物件数、契約設計の内容によって費用は変わります。自宅1件だけなのか、土地建物が複数筆に分かれているのかによっても登記費用は変動します。

このケースで注意すべき点

自宅不動産を信託する場合には、「誰が住むのか」「いつ売却できるのか」「売却代金を何に使えるのか」を明確にしておく必要があります。
本人が住み続けることを重視するのか、将来の施設費用の確保を重視するのかによって、契約内容が変わります。

3-3 ケース③ 賃貸アパートなど収益不動産を信託する場合

賃貸アパートなど収益不動産を信託するケースは、親が不動産賃貸業を行っており、将来、判断能力が低下しても賃貸経営を継続できるようにしたい場合に利用されます。

想定される利用場面

たとえば、父(委託者・受益者)が賃貸アパートを所有しており、毎月の賃料収入で生活費や介護費をまかなっているケースです。今後、父の判断能力が衰えた場合に備えて、長男(受託者)に賃料収入の管理、修繕対応、借主対応を任せるとともに、借入金がある場合には返済方法や金融機関との関係も整理しておく設計です。

主に発生する費用

このケースでは、専門家による信託設計・契約書作成費用、公正証書作成費用、信託登記費用に加え、税務確認費用が発生しやすくなります。収益不動産の場合、賃料収入や経費処理、所得税申告、相続税評価、借入金の有無などを確認する必要があるためです。

費用イメージ

一般的には、自宅不動産のみの信託よりも費用が高くなる傾向があります。物件数や収益規模によっては、専門家費用、公正証書作成費用、登記費用、税務確認費用を合わせて100万円を超えることもあります。
特に、複数の収益物件がある場合や、借入金が残っている場合には、物件ごとの登記内容、管理委託料や修繕費の支払い、借入金返済、相続税・所得税への影響などを確認する必要があるため、費用も個別の事情に応じて変わります。

このケースで注意すべき点

収益不動産の家族信託では、信託開始後の運用まで見据えることが重要です。受託者が賃貸借契約の更新、修繕、管理会社との連絡、賃料の入出金管理をどこまで行うのかを明確にしておかないと、信託を組んだ後に実務が回らなくなることがあります。
また、税務面を確認しないまま進めると、想定外の課税関係や申告上の問題が生じる可能性があります。費用を抑えるために税務確認を省くよりも、必要な範囲で税理士に確認することが望ましいといえます。

サポート内容ごとの具体的な費用は以下ページ内の「家族信託の費用とサポート内容」で確認できます。

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第4章 家族信託を組んだ後にかかる運用費用

家族信託では、信託した財産の内容や信託開始後の管理方法によって、継続的に、または必要な場面ごとに運用費用が発生することがあります。特に、収益不動産を信託する場合や、受託者に報酬を支払う設計にする場合、税理士による申告サポートを受ける場合には、契約時の初期費用だけでなく、信託開始後にかかる費用も含めて見通しを立てておく必要があります。

4-1 信託口口座・信託専用口座の管理に関する費用

家族信託では、信託財産を受託者個人の財産と分けて管理する必要があります。そのため、預貯金を信託する場合には、信託口口座や信託専用口座を利用することになります。
金融機関ごとに口座開設や管理費用の仕組みが異なりますので、継続的な管理費用がどの程度かかるのかは事前に把握をしておきましょう。

4-2 受託者への報酬を定める場合の費用

家族信託では、財産を管理する受託者に報酬を支払う設計にすることもできます。家族間の信託では無報酬とするケースもありますが、管理する財産が多い場合や、賃貸不動産の管理、修繕対応、入出金管理などの負担が大きい場合には、受託者報酬を定めることもあります。
受託者報酬を定める場合には、報酬額、支払時期、どの財産から支払うのかを信託契約書で明確にしておくことが重要です。必ず発生する費用ではありませんが、信託開始後の運用費用として検討しておくべき項目といえます。

4-3 収益不動産がある場合の管理費・修繕費・税務申告費用

賃貸アパートや月極駐車場などの収益不動産を信託する場合には、信託開始後も管理費、修繕費、固定資産税、保険料などの支出が発生します。これらは信託契約を組む前から発生している費用であっても、信託後は受託者がどのように管理し、どの口座から支払うのかを整理しておく必要があります。
また、収益不動産から賃料収入が発生する場合には、所得税の申告が必要になることがあります。信託を組んだ後も、税務申告そのものが不要になるわけではありません。賃料収入や経費の処理、信託財産に関する帳簿管理などについて、税理士に依頼する場合には、毎年の税理士費用についても考慮しておきましょう。

4-4 専門家による継続サポートを受ける場合の費用

家族信託は、実際に運用が始まってから判断に迷う場面が出てくることがあります。たとえば、不動産を売却したい場合、信託財産から大きな支出を行う場合、受託者を変更したい場合、契約内容により本人が亡くなって信託を終了する場合などです。
このような場面では、契約書の内容を確認しながら、弁護士、司法書士、税理士などに相談することがあります。継続的な相談契約を結ぶ場合や、個別に手続きを依頼する場合には、内容に応じた費用負担が必要となります。

第5章 家族信託の費用を見積もる前に準備しておきたいこと

家族信託の費用は、信託する財産の内容や評価額、契約設計の複雑さによって変わります。そのため、専門家に相談する前に一定の情報を整理しておくことで、ヒアリングや調査がスムーズになり、費用の見通しも立てやすくなります。

5-1 信託したい財産と資料を事前に整理しておく

たとえば、預貯金、自宅や賃貸アパートなどの不動産、有価証券、保険契約などについて、どの財産を信託の対象にしたいのかを整理しておくと、専門家側も検討範囲を把握しやすくなります。

信託の対象とする財産 事前に準備しておきたい資料の例 確認する主なポイント
不動産全般 不動産の登記事項証明書、固定資産税の課税明細書 所有者、共有者の有無、固定資産税評価額、土地・建物の数、抵当権の有無
賃貸不動産・収益不動産 賃貸借契約書、家賃収入が分かる資料、管理会社との契約書 賃借人との契約内容、家賃収入、管理会社との関係、修繕費や管理費の負担
預貯金 預貯金口座の一覧、通帳の写し、残高が分かる資料 どの口座を信託財産に入れるか、本人の生活費として手元に残す金額
有価証券 証券口座の資料、保有銘柄や評価額が分かる資料 信託の対象にできるか、証券会社での取扱いの可否、評価額
保険契約 保険証券、契約内容が分かる資料 契約者、被保険者、受取人、解約返戻金の有無
借入金がある財産 返済予定表、金銭消費貸借契約書(借入契約書)、担保設定の資料 借入残高、返済方法、抵当権の有無、金融機関との調整の要否
家族関係・承継先 家族構成が分かる資料、推定相続人の情報 誰を受託者にするか、本人死亡後に誰へ財産を承継させるか

5-2 【ポイント】不動産はまず名義を確認しておく

不動産の登記情報を確認すると、所有者が誰になっているのか、共有者がいるのか、抵当権が設定されているのか、土地が複数筆に分かれているのかなどを把握できます。
特に注意が必要なのは不動産の名義です。本人が自分の不動産だと思い込んでいても、登記上で共有名義になっていたり、そもそも相続登記が未了のままになっていたりするケースは少なくありません。その場合、まずは名義変更から始めることになり、追加の手続きや費用が発生することになります。

第6章 家族信託の費用を確認する際に注意すべきこと

6-1 費用相場だけでは自分のケースに当てはめにくい

家族信託について調べると、「費用相場」「料金表」「信託財産の何%」といった情報が出てくることがあります。
しかし、家族信託は、信託する財産やその規模、家族構成、相続対策の目的などによって専門家が確認すべき事項も変わってくるため、費用も個別のケースごとに異なります。そのため、相場だけを見て実際の費用を判断するのは難しいといえます。
Webサイトなどで相場を見たり、専門家に費用を問い合せたりする際も、その費用にどこまでの業務が含まれているかまで含めて確認しましょう。

6-2 信託財産の評価額によって専門家報酬が変わることがある

家族信託の専門家報酬は、信託財産の評価額を一つの基準として設定されることがあります。
信託財産の規模が大きくなるほど、将来の相続や税務、不動産の管理・処分に与える影響も大きくなりやすいため、報酬額も高くなる傾向があります。
もっとも、専門家報酬は財産の評価額だけで決まるわけではありません。評価額が比較的小さい場合でも、相続人間の関係が複雑であったり、受託者にどこまで権限を与えるかの設計が難しかったりする場合には、費用が増えることがあります。

弁護士に費用を確認する際のポイント

弁護士に費用を確認する際は、信託したい財産の種類、評価額、不動産の有無、家族構成、誰を受託者にしたいか、本人の死亡後に財産を誰へ承継させたいかを整理したうえで見積りを依頼するのがポイントです。信託の対象となる財産の関連資料(参考:5-1の表)まで準備して相談すると、専門家側も必要な手続を想定しやすく、費用を判断しやすくなります。

6-3 費用の安さだけで判断すると将来の運用で困ることがある

家族信託は、契約を締結した後、長期間にわたって運用されることが多い制度です。
そのため、費用が安いことだけを理由に依頼先を選ぶと、将来、受託者がどのように財産を管理すればよいのか分からない、金融機関で手続が進まない、不動産売却時になって契約内容が不十分だったことが判明するといった問題が生じることがあります。
必要以上に高額な設計をする必要はありませんが、実際に運用できる内容になっているか、将来の相続や税務まで見据えた設計になっているかを十分に確認したうえで、依頼先を選びましょう。

6-4 【家族間の整理】家族信託の費用を誰が負担するかも確認しておく

家族信託は、親の認知症対策や財産管理のために子どもが主導して検討することも多いですが、費用を支払うのは本人なのか、子どもが立て替えるのかなどが曖昧なまま進むと、後から家族間で不満が出ることがあります。
一般的には、信託によって管理する財産が本人の財産であり、本人の生活費や介護費の支払いを目的としている場合には、本人の財産から費用を支払うことが多いですが、相談時点では子どもが一時的に立て替えるケースもあります。このような場合には、誰がいくら負担したのか、後で本人の財産から精算するのか、他の相続人との関係でどのように説明するのかを整理しておくことが大切です。

第7章 家族信託の費用は設計内容と依頼する専門家によって変わる

家族信託の費用は、信託する財産の内容、家族構成、不動産の有無、税務確認の必要性、信託後の運用方法によって変わり、それに応じて必要となる専門家も、弁護士、司法書士、税理士などさまざまです。どの専門家が適任なのかは個別の場合で異なり、複数の専門家が連携する場面も少なくありません。
私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)は、弁護士法人をはじめ、税理士法人、司法書士法人などの士業法人グループであり、家族信託の設計、信託登記、税務確認までワンストップで対応しています。ご自身のケースでどのくらい費用がかかるのか、そもそも家族信託を利用することが最適なのかを確認したい場合なども、お気軽にご相談ください。

Nexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)の「家族信託」サポートは、以下の記事から確認いただけます。

Nexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)の「家族信託」サポート

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監修者:後藤 祐太郎
弁護士後藤 祐太郎

弁護士法人Nexill&Partners

弁護士後藤 祐太郎

  • 2010年
    日本大学法学部 卒業
  • 2012年
    慶應義塾大学大学院法務研究科 修了
  • 2014年
    竹口・堀法律事務所 入所
  • 2016年
    現:弁護士法人Nexill&Partners 入所 那珂川オフィス支店長 就任

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