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コラム

自分の死後に遺産を寄付するには?生前にしておく準備と寄付までの段取りを弁護士が解説

2026.10.23

自分が亡くなった後、財産の全部または一部を寄付したいと考えた場合、どんな準備が必要なのでしょう。希望どおりの寄付を実現するには、寄付先を決めて遺言を書くことだけでは足りません。財産や相続人、寄付先の受入条件を確認したうえで、遺言書の内容を整え、死後に手続を行う遺言執行者まで指定しておくことが大切です。
本記事では、遺産を寄付する方法と、生前に進めておきたい具体的な段取りを弁護士が解説します。

第1章 遺言によって遺産の全部または一部を寄付できる

遺言による寄付は「遺贈寄付」と呼ばれる

自分が亡くなった後、その遺産をNPO法人や公益法人、大学、自治体などへ寄付する旨を、遺言で定めることができます。遺言によって財産を無償で他人や法人へ譲ることを「遺贈」といい、そのうち社会貢献を目的として行うものは一般に「遺贈寄付」と呼ばれます。

寄付するのは全財産である必要はありません。たとえば、預貯金のうち一定額を寄付し、その他の財産は家族に相続させるなど、一部の財産だけを寄付することもできます。

また、遺贈の対象は現金や預貯金に限りません。不動産や株式などを遺贈することも法律上は可能です。ただし、実際にその財産を受け取ってもらえるかどうかは寄付先によって異なるため、生前の確認が必要です。

第2章 遺産の寄付を決める前に確認しておくこと

2-1 自分の財産と相続人を確認する

遺産の寄付を具体的に決める前に、自分の財産の内容と、相続人について整理しておきましょう。預貯金、不動産、株式などの財産だけでなく、住宅ローンや借入金などの債務がある場合には、それらも含めて把握することが大切です。

あわせて、誰が自分の相続人になるのかも確認します。
配偶者や子どもがいなくても、父母などの直系尊属がいる場合は原則として相続人になります。直系尊属がいない場合には兄弟姉妹が相続人となり、兄弟姉妹がすでに亡くなっていれば、その子である甥・姪が相続人になることもあります。
「自分には相続人がいない」と思っていても、実際には法律上の相続人が存在することがあります。第4章で確認する遺留分の問題を検討するためにも、相続関係を把握しておくことは重要です。

2-2 寄付先が決まっていない場合は、財産を何に役立てたいかから考える

すでに具体的な寄付先が決まっている場合には、その団体を前提に次の確認へ進みます。
一方、遺産を社会のために役立てたいという希望はあるものの、寄付先までは決まっていない場合には、まず自分の財産を何のために使ってほしいのかを整理してみると、寄付先を選びやすくなります。
たとえば、病気の研究、子どもの教育、福祉、地域貢献など、自分が支援したい分野を決めたうえで、その分野で活動している団体を比較し、候補となる団体を探します。

寄付先を探す際には、内閣府の「NPO法人ポータルサイト」などの公的なデータベースを利用する方法もあります。活動分野や地域などから法人を検索し、どのような活動を行っているのか、事業報告などを確認できます。
内閣府「NPO法人ポータルサイト」

候補となる団体が見つかったら、実際に遺贈を受け付けているか、自分が寄付したい財産を受け取ってもらえるかを確認します。この点は次項で解説します。

2-3 寄付先が遺贈を受け入れているか、どの財産を受け取れるかを確認する

寄付したい団体が決まっていても、その団体が遺贈寄付を受け入れているとは限りません。また、受け入れている場合でも、対象となる財産に制限があり、現金や預貯金は受け取れても、不動産や株式などの現物は受け付けていないことがあります。

そのため、遺言書を作成する前に、①遺贈寄付を受け付けているか、②自分が寄付したい財産を受け取ってもらえるかを、寄付先に確認しておく必要があります。

不動産をそのまま寄付できない場合は「清算型遺贈」を検討する

不動産は、取得後に管理費や固定資産税などの負担が生じるほか、物件によっては売却が難しいこともあります。そのため、不動産を現物のまま受け付けていないケースも少なくありません。
生前に売却して現金化するのも一つの方法ですが、自分が住んでいる自宅など、亡くなるまで所有しておきたい不動産では、生前に処分することが難しい場合もあります。

そのような場合には、本人の死亡後に遺言執行者などが不動産を売却し、売却に必要な費用等を差し引いた残額を寄付先へ遺贈する方法があります。このように、死後に財産を換価したうえで、その代金を遺贈する方法は、実務上「清算型遺贈」と呼ばれます。

2-4 遺産の一定割合を寄付したい場合は包括遺贈を検討する

寄付する財産は、「500万円を寄付する」といったように特定の金額を指定するだけでなく、「死亡時に残っている遺産の30%」というように、遺産の一定割合を指定することもできます。このような遺贈を「包括遺贈」といいます。

包括遺贈は、今後の生活や資産の増減によって死亡時の財産額が変わる可能性があり、特定の金額や財産を指定するよりも、「最終的に残った遺産のうち一定割合を社会のために使ってほしい」と考えている場合に検討しやすい方法です。

ただし、包括遺贈を受け付けていない団体もあります。
包括遺贈を受ける包括受遺者は、民法上、相続人と同一の権利義務を有するため、財産だけでなく、遺産に含まれる借入金などの債務も承継する可能性があるためです。包括遺贈を希望する場合には、寄付先が受け入れているかを事前に確認しておく必要があります。

第3章 希望する寄付を実現するために遺言書と遺言執行者を準備する

寄付先や寄付する財産、寄付の方法が決まったら、その内容を遺言書に落とし込み、実際に自分が亡くなった後に寄付を実行できる体制を整えます。
特に遺贈寄付では、本人が亡くなった後に財産の引渡しや売却などの手続が必要になります。そのため、遺言書の内容だけでなく、誰がその内容を実行するのかまで生前に決めておくことが重要です。

3-1 寄付先・寄付する財産・寄付方法を遺言書に具体的に記載する

遺言書には、「財産を寄付したい」という希望だけではなく、誰に、何を、どのような方法で遺贈するのかを具体的に記載します。

寄付先を正式名称で特定する

まず、寄付先については正式な法人名や所在地などを確認し、遺言書でどの団体に遺贈するのかを明確にします。似た名称の団体が存在する場合や、普段使われている団体名と正式な法人名が異なる場合もあるため、必要に応じて、法人番号なども記載しておくとよいでしょう。

寄付する財産と寄付方法を具体的に定める

次に、何を寄付するのかを具体的に定めます。
たとえば、「○○銀行の預金のうち500万円を遺贈する」と特定の財産や金額を指定する方法のほか、2-4で解説したように、「死亡時に残っている遺産の30%を遺贈する」という包括遺贈にする方法もあります。
また、清算型遺贈を利用する場合には、対象となる不動産を換価し、その代金を寄付先へ遺贈することが分かるように定めておく必要があります。

寄付しない財産の承継先も決める

遺産の一部だけを寄付する場合には、寄付しない財産を誰に承継させるのかについても遺言書で定めておきます。たとえば、預貯金の一部を団体へ寄付する場合には、残った預貯金や不動産、株式などを誰に相続させるのかもあわせて決めておく必要があります。
遺贈寄付だけを切り離して考えるのではなく、寄付しない財産も含めて遺産全体の承継方法を整理し、その内容を遺言書に反映しておくことが大切です。

遺言書を作成する具体的な手順や、ご自身で作成する場合と弁護士に依頼する場合の違いについては、以下のコラムで詳しく解説しています。

遺言書を作成する流れとは?ご自身で進める場合・弁護士に依頼する場合をパターン別に解説

3-2 遺言執行者を指定し、死後に寄付を実行できる体制を整える

遺産の寄付を実現するには、遺言書を作成するだけでなく、その内容を実際に実行する人も決めておくことが大切です。遺言の内容に沿って必要な手続を行う人を「遺言執行者」といいます。

遺贈寄付では、本人が亡くなった後に寄付先へ連絡し、対象となる財産を確認したうえで、預貯金の払戻しや財産の引渡しなどを進める必要があります。清算型遺贈によって不動産を売却し、その代金を寄付する場合には、不動産の売却手続まで行わなければなりません。

そのため、誰がこれらの手続を行うのかを生前に決め、遺言書で遺言執行者を指定しておくとよいでしょう。特に相続人がいない場合には、死後の手続を任せられる人をあらかじめ決めておくことが重要です。弁護士などの専門家を遺言執行者に指定し、生前に作成した遺言の内容に沿って寄付までの手続を進めてもらうこともできます。

遺言執行者を弁護士に依頼した場合の具体的な対応内容や、専門家へ任せるメリットについては、以下のコラムで詳しく解説しています。

遺言執行を弁護士に依頼するメリットと費用の目安とは?専門家が解説する遺言執行の実務ポイント

第4章 遺産を寄付する前に遺留分と税金を確認する

遺言による遺贈寄付の内容を決める際には、相続人の遺留分と、寄付する財産にかかる税金も確認しておく必要があります。
特に、相続人がいるにもかかわらず遺産の大部分を寄付する場合や、不動産・株式などを法人へ寄付する場合には、想定していなかった問題が生じる可能性もあります。

4-1 相続人がいる場合は遺留分を確認して寄付する財産の範囲を決める

相続人がいても、遺言によって遺産の全部または一部を寄付することはできます。
ただし、一定の相続人には最低限の取り分として「遺留分」が認められています。そのため、遺産の大部分を寄付する場合には、誰が遺留分を持っているのかを確認したうえで寄付する財産の範囲を決めることが大切です。

兄弟姉妹や甥・姪には遺留分はない

第2章で解説したとおり、配偶者や子どもがいない場合には兄弟姉妹やその子である甥・姪が相続人になることがあります。民法上、兄弟姉妹や甥・姪には遺留分はありません。そのため、兄弟姉妹や甥・姪だけが相続人となる場合には、遺留分を理由に、相続人に財産を残しておく必要はありません。

一方、配偶者や子、父母など遺留分を持つ相続人がいる場合には、その存在を前提に寄付する財産の範囲を検討する必要があります。

遺留分を侵害すると寄付先が金銭の支払いを請求される可能性がある

配偶者や子など遺留分を有する相続人がいる場合でも、遺言に財産の全部を団体などへ遺贈する旨を定めることはできます。
ただし、本人の死亡後、遺留分を侵害された相続人から、遺贈を受けた寄付先に対して、侵害された遺留分に相当する金銭の支払いを求められる可能性があります。これを「遺留分侵害額請求」といいます。

遺留分侵害額請求が行われると、寄付先は相続人からの請求に対応し、場合によっては金銭を支払う必要が生じます。その結果、役立ててほしいと考えて財産を寄付したにもかかわらず、相続人と寄付先との間で紛争が生じたり、寄付先に想定していなかった負担をかけたりすることになりかねません。

そのため、遺留分を持つ相続人がいる場合には、あらかじめ想定される遺留分の金額を試算し、相続人に一定の財産を残したうえで残りを寄付するなど、遺留分を侵害しないよう配慮した内容の遺言にしておくことを検討するとよいでしょう。

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4-2 不動産や株式などを寄付する場合は税務上の取扱いを確認する

不動産や株式などを寄付する場合には、財産の値上がり益に対する税金が問題になることがあります。
たとえば、値上がりした不動産や株式を法人へ現物のまま遺贈すると、実際には売却していなくても、時価で譲渡したものとみなされて所得税が発生することがあります。いわゆる「みなし譲渡課税」です。

そのため、生前に売却しても問題のない株式などであれば、本人が売却し、必要な申告・納税を済ませたうえで、残った現金を遺贈する方法も考えられます。

現物のまま遺贈する場合は、死亡後の納税方法まで準備しておく

自分が住んでいる自宅など、亡くなるまで保有しておきたい財産については、生前に現金化することが難しい場合もあります。
このような不動産を法人へ現物のまま遺贈してみなし譲渡課税が生じると、本人の死亡後に、相続人や包括受遺者などが準確定申告を行い、被相続人の納税義務を承継することがあります。

つまり、自宅そのものは寄付先へ渡る一方で、相続人などに税金の負担が残る場合があります。そのため、現物のまま寄付する場合には、あらかじめ税額を試算し、納税に充てられる預貯金なども残しておくことを検討しましょう。

死亡後に売却して寄付する場合は、税金や費用を差し引いた残額を遺贈するよう定める

自宅そのものを寄付するのではなく、2-3で解説した清算型遺贈を利用し、死亡後に不動産を売却して現金を寄付することもできます。
この場合には、遺言書で、遺言執行者が対象となる不動産を売却し、仲介手数料などの換価に必要な費用を差し引いた残額を寄付先へ遺贈するよう定めておきます。

清算型遺贈にしても税金がかからなくなるわけではありません。死亡後の売却によって譲渡所得税が生じる可能性があるため、売却に伴う税金や費用も踏まえて、最終的にどの程度の金額を寄付できるのかを確認しておくことが大切です。

国や一定の公益法人などへの寄付では非課税になる場合がある

国や地方公共団体へ財産を寄付する場合には、譲渡所得は課税されません。また、公益を目的とする一定の法人への寄付についても、所定の要件を満たして国税庁長官の承認を受けることで、譲渡所得が非課税になる場合があります。

参考:国税庁「国等に対して財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税」

第5章 遺贈寄付の遺言書を作成するときに確認しておきたい実務上のポイント

遺贈寄付の遺言書は自分で作成できますし、遺言執行者も必ず専門家にする必要はありません。ただし、本人が亡くなった後は遺言書の内容に基づいて手続が進められるため、希望する寄付を実現できる内容になっているか、法律上有効な方式で作成されているかを生前に確認しておくことは重要です。

実務上、遺贈寄付で特に間違いやすいのが次のような点です。

  • 遺言書の方式に不備があり、遺言そのものが無効になる
  • 寄付先の正式名称などが不正確で、遺贈先を特定できない
  • 清算型遺贈を予定しているのに、清算方法が定められていない
  • 遺留分への配慮がなく、死亡後に相続人から寄付先へ遺留分侵害額請求が行われる
  • 遺言執行者に不動産売却や寄付先との調整などの負担が集中し、手続が円滑に進まない

こうした問題の中には、遺言書を作成する段階で内容を確認しておけば避けられるものもあります。

私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)グループでは、弁護士・税理士・司法書士などが連携し、遺言書の作成から税務上の検討、不動産の手続、遺言執行まで一体的に対応しています。遺産の寄付を検討している方は、遺言書を作成する前の段階からお気軽にご相談ください。

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監修者:後藤 祐太郎
弁護士後藤 祐太郎

弁護士法人Nexill&Partners

弁護士後藤 祐太郎

  • 2010年
    日本大学法学部 卒業
  • 2012年
    慶應義塾大学大学院法務研究科 修了
  • 2014年
    竹口・堀法律事務所 入所
  • 2016年
    現:弁護士法人Nexill&Partners 入所 那珂川オフィス支店長 就任

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