column

コラム

相続税は基礎控除ギリギリなら申告した方がいい?申告が必要か迷う場合の確認ポイントを税理士が解説

2026.10.28

相続財産が基礎控除以下であれば、原則として相続税申告は必要ありません。しかし、自分では基礎控除以下だと思っていても、財産評価や生前贈与などの扱いを誤っていたり、相続税を軽減する特例を利用したりする場合には、申告が必要なケースがあります。そのまま申告せずにいると、後から税務署に指摘され、相続税に加えて無申告加算税や延滞税などの負担が生じることもあります。
この記事では、相続財産が基礎控除ギリギリの場合を中心に、相続税申告が必要か判断するときの確認ポイントを税理士が解説します。

第1章 相続財産が基礎控除以下なら原則として申告不要

1-1 特例を使わず基礎控除以下なら原則として申告は不要

特例を使わなくても相続税の課税価格の合計額が基礎控除額以下になる場合は、原則として相続税申告は不要です。
基礎控除額は、次の計算式で求めます。

相続税の基礎控除額の計算式

基礎控除額 = 3,000万円+600万円×法定相続人の数

たとえば、法定相続人が配偶者と子2人の合計3人であれば、基礎控除額は4,800万円です。相続税上の課税価格を正しく計算した結果が4,500万円であり、後述する特例を使わなくても4,800万円以下であれば、原則として申告は必要ありません。

1-2 基礎控除以下に見えても相続税申告が必要なケースがある

ただし、自分では基礎控除以下だと思っていても、実際には相続税申告が必要なケースがあります。
主に確認したいのは、次の2点です。

財産の評価や計上を誤り、実際には基礎控除を超えているケース

そもそも相続税上の財産額を正しく計算できておらず、自分では基礎控除以下だと思っていても、正しく計算すると基礎控除を超えることがあります。たとえば、不動産の評価額を誤っていたり、死亡保険金や生前贈与を計算に入れていなかったり、差し引けない費用まで債務や葬式費用として控除していたりするケースです。

この場合は、そもそも「基礎控除以下」という前提自体が間違っていることになります。詳しくは第2章で確認します。

特例を使った結果として基礎控除以下・相続税0円になるケース

小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減などを利用した結果として、課税価格の合計額が基礎控除以下になったり、納付税額が0円になったりすることがあります。ただし、これらの特例や税額軽減の適用を受け、最終的に相続税額が0円になる場合でも、相続税申告が必要です。

「最終的に相続税がかからない」ことと、「相続税申告をする必要がない」ことは別の問題だからです。申告が必要となる特例については第3章で詳しく説明します。

第2章 見落としやすい相続財産と評価方法

相続税申告の要否を正しく判断するには、財産の漏れだけでなく、評価方法や差し引く金額まで確認する必要があります。

2-1 不動産の評価を間違えると基礎控除を超えることがある

相続財産に土地や建物がある場合、その不動産の評価額は相続税のルールに従って計算する必要があります。土地は、原則として路線価方式または倍率方式で評価します。これに対し、家屋は原則として固定資産税評価額で評価します。
そのため、不動産会社の査定額や購入価格をそのまま相続税上の評価額として使えるわけではありません。また、土地については、固定資産税評価額をそのまま使うとは限りません。

特に、土地の形が複雑な場合や、賃貸不動産、借地権などが含まれる場合は評価方法がさらに複雑になります。基礎控除との差が小さく、不動産の評価額によって申告の要否が変わりそうな場合には、税理士に評価を確認してもらうことも検討するとよいでしょう。

※相続時の不動産評価について、評価方法や注意点をさらに詳しく知りたい方は、以下の記事で解説しています。
相続における不動産の評価額とは?遺産分割時の適正な算定方法と注意点を弁護士が解説

2-2 生命保険や生前贈与を見落とすと申告が必要になることがある

死亡保険金や一定の生前贈与を加えることで申告が必要になることもあります。

死亡保険金|非課税限度額を超える部分は相続税の計算に加える

被相続人が保険料を負担していた死亡保険金を相続人が受け取った場合は、一定額を超える部分が相続税の課税対象になります。

相続人が受け取る死亡保険金の非課税限度額は、「500万円×法定相続人の数」です。
たとえば、法定相続人が妻と子2人の場合、非課税限度額は1,500万円なので、死亡保険金2,000万円を相続人が受け取ると500万円が相続税の課税対象となります。
預貯金と不動産の相続財産が4,400万円だったとしても、この500万円を加えると4,900万円となり、基礎控除額を上回るため、相続税の申告が必要です。

※死亡保険金が相続財産や相続税の計算でどのように扱われるかについては、以下の記事もあわせてご覧ください。
相続に関する法律と税金④生命保険の受取金はどう扱われる?

生前贈与|過去に受けた贈与も相続税の計算に加えることがある

被相続人から生前に贈与を受けた財産についても、一定のものは相続税の課税価格に加える必要があります。
たとえば、2026年に父が亡くなり、相続によって父の財産を取得した子が、2025年に父から現金300万円の贈与を受けていたとします。2026年12月31日までに開始する相続では、原則として相続開始前3年以内に暦年課税(年間110万円を超える部分に贈与税がかかる方式)で贈与された財産が加算対象となるため、この300万円も相続税の計算に加えることになります。

このケースで、死亡時の相続財産が4,600万円、基礎控除が4,800万円だったとしても、加算対象となる生前贈与300万円があれば、相続税の計算上は4,900万円となり、相続税の申告が必要です。

※なお、生前贈与の加算対象期間は制度改正により段階的に延長されます。2027年以降に開始する相続では対象期間が変わるため、何年前の贈与まで確認する必要があるかは相続開始日によって判断します。

生前贈与の加算対象期間や制度改正について詳しく知りたい方は、以下の記事で解説しています。
相続税法改正で課税期間が『7年』に拡大!? 生前贈与についての注意点を専門家が解説

相続時精算課税|生前にもらった財産を相続税の計算に加える制度

相続時精算課税とは、一定の父母や祖父母から子や孫などへの贈与について、贈与時の税負担を抑え、その代わりに贈与者が亡くなったときに贈与財産を相続税の計算へ反映させる制度です。
相続時精算課税を利用して生前贈与を受けていた場合には、一定の贈与財産を相続税の計算に加える必要があり、その結果、基礎控除を超えることがあります。
過去に父母や祖父母からまとまった贈与を受け、相続時精算課税を選択している場合には、死亡時の財産だけで申告不要と判断しないようにしましょう。

2-3 差し引けない費用まで控除すると申告不要と誤判断する

相続税では、被相続人が死亡した時点で存在し、確実と認められる借入金や未払金などの債務を、一定の範囲で遺産総額から差し引くことができます。

また、一定の葬式費用も控除できます。ただし、相続に関連して支払った費用がすべて控除できるわけではありません。
たとえば、香典返しの費用や墓石・墓地の購入費用、初七日などの法要にかかった費用は、相続税上の葬式費用には含まれません。

たとえば、相続財産が5,000万円あり、相続に伴って支払った費用を合計300万円として全額差し引き、「4,700万円だから基礎控除4,800万円以下」と計算していたとしても、その300万円の中に控除できない費用が含まれていれば、結論が変わる可能性があります。

第3章 相続税の特例を使う場合は税額が0円でも申告が必要

3-1 小規模宅地等の特例で基礎控除以下になっても申告は必要

「小規模宅地等の特例」とは、被相続人の居住や事業などに使われていた一定の宅地等について、要件を満たす場合に相続税評価額を減額できる制度です。
たとえば、被相続人が居住していた宅地が一定の要件を満たす特定居住用宅地等であれば、330平方メートルまでの部分について評価額を80%減額できます。

この特例によって、特例適用前には基礎控除を超えていた財産が、特例適用後には基礎控除以下になることがあります。
たとえば、

基礎控除額

4,800万円

特例適用前の課税価格

5,500万円

小規模宅地等の特例適用後

4,500万円
となるケースです。

しかし、小規模宅地等の特例の適用を受けるためには、相続税申告書に特例を適用する旨を記載し、計算の明細書や一定の必要書類を添付して申告する必要があります。
つまり、特例を使って初めて基礎控除以下になるのであれば、「基礎控除以下だから申告不要」ではなく、「申告をして特例を適用することで相続税負担を減らす」という順序になります。

※小規模宅地等の特例を含め、土地を相続した場合の相続税上の注意点については、以下の記事も参考になります。
遺産分割で土地や不動産土地や建物を分けるには?|相続税申告時の注意点も含めて専門家が解説

3-2 配偶者の税額軽減で相続税が0円でも申告は必要

相続税には「配偶者の税額軽減」があり、配偶者が実際に取得した正味の遺産額について、1億6,000万円または配偶者の法定相続分相当額のいずれか多い金額まで、配偶者には相続税がかからない仕組みになっています。
ただし、配偶者の税額軽減によって納付する相続税が0円になる場合も、税額軽減を受けるためには申告が必要です。

第4章 【FAQ】基礎控除以下の相続税申告で判断に迷いやすい疑問

Q1. 相続税申告が不要でも、税務署から「相続についてのお尋ね」が届くことはありますか?

A1. 申告不要でも「お尋ね」が届くことはあります

税務署は、相続税の申告が必要か確認するため、相続人に「相続についてのお尋ね」を送ることがあります。基礎控除以下で申告不要だと考えていても届く可能性はあります。「お尋ね」が届いた場合は、相続財産を改めて整理し、申告が本当に不要か確認したうえで回答することが大切です。

Q2. 相続税申告をしなかった後に新しい財産が見つかったらどうすればいいですか?

A2. 財産を加えて申告要否をもう一度判定します

申告不要と判断した後に預貯金や有価証券、不動産などが新たに見つかった場合は、その財産を加えて相続税の課税価格を計算し直します。再計算しても基礎控除以下であれば、原則として申告は不要です。一方、基礎控除を超える場合は、申告期限を過ぎていても期限後申告と納税が必要です。

Q3. 故意ではなく、基礎控除以下だと思い込んで申告しなかった場合も追加の税金はかかりますか?

A3. 故意でなくても追加負担が生じることがあります

単純な勘違いや計算ミスで申告しなかった場合でも、実際には申告が必要だったのであれば、本来の相続税に加えて延滞税や無申告加算税が生じることがあります。無申告の理由が故意か故意でなかったかだけで決まるわけではありません。

Q4. 相続放棄をした人がいる場合、相続税の基礎控除額は少なくなりますか?

A4. 相続放棄があっても基礎控除の人数は原則変わりません

相続税の基礎控除額を計算するときは、相続放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとして法定相続人の数を数えます。たとえば、本来の法定相続人が配偶者と子2人で、子1人が相続放棄しても、基礎控除額の計算上は3人として扱います。

※相続放棄をした場合の基礎控除や生命保険の扱いについては、以下の記事で詳しく解説しています。
相続放棄をした場合の相続税はどうなる?基礎控除や生命保険の注意点を弁護士が解説

Q5. 海外にある預金や不動産も相続財産に含めて基礎控除と比較していいですか?

A5. 相続人などの状況によって国外財産も課税対象になります

海外の預金や不動産を相続税の計算に含めるかは、被相続人や相続人の住所、国籍などによって異なります。日本国内に住所がある相続人など、一定の相続人については国内財産だけでなく国外財産も相続税の対象になります。一方、国内財産だけが課税対象となるケースもあるため、海外財産がある場合は一律に判断できません。

※海外財産に日本の相続税がかかる範囲については、以下の記事で詳しく解説しています。
被相続人の海外資産に日本の相続税はかかる?相続人の居住地や国籍による課税範囲など国際相続について弁護士がわかりやすく解説

Q6. 相続税を申告しなくても、税務署は相続財産を把握できるのですか?

A6. 税務署には相続に関するさまざまな情報が集まります

市区町村から税務署には死亡に関する情報や固定資産に関する一定の情報が通知されます。また、一定額以上の死亡保険金や死亡退職金などについては、支払者から税務署へ支払調書が提出されます。そのため、「申告しなければ財産を把握されない」と考えるのは適切ではありません。

Q7. 相続税申告が不要な場合でも、税務署に「申告不要」と知らせる手続は必要ですか?

A7. 原則として申告不要を届け出る必要はありません

税務署へ「申告不要届」のような書類を提出する制度はありません。ただし、税務署から「相続についてのお尋ね」が届いた場合には、申告不要であることを改めて確認したうえで、適切に回答しておくとよいでしょう。

第5章 申告要否に迷う場合の判断ポイント

5-1 基礎控除との差が小さいほど自己判断は避ける

基礎控除額との差が小さい場合は、相続財産の評価や計上方法が少し変わるだけでも、申告が必要かどうかという結論が変わります。
特に、次のような場合は、申告不要と自己判断する前に慎重に確認した方がよいでしょう。

申告要否を慎重に確認したいケース
  • 土地や賃貸不動産など、相続税上の評価が必要な財産がある
  • 死亡保険金や死亡退職金を受け取っている
  • 被相続人から生前贈与を受けている、または相続時精算課税を利用している
  • 債務や葬式費用を差し引いて基礎控除以下になっている
  • 小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を使う予定がある

これらに当てはまる場合は、単純に「手元で計算した財産額が基礎控除以下だった」というだけでは、申告不要と判断できないことがあります。

5-2 申告が必要か分からない段階でも税理士に相談できる

相続財産が基礎控除ギリギリの場合は、申告書を作り始める前の段階で税理士に申告要否を確認することができます。
相談することで、不動産などの相続税評価、生命保険や生前贈与の取扱い、控除できる債務や葬式費用、利用できる特例と必要な申告手続を整理できます。そのうえで、本当に基礎控除以下で申告不要なのか、申告したうえで特例を利用すべきなのかを判断できます。
特に、基礎控除との差が小さい場合や、不動産・生前贈与・特例が関係する場合には、申告期限直前まで待つのではなく、財産の把握と評価を行う段階で確認する方が適切です。

私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)グループでは、弁護士・税理士・司法書士などが連携し、相続に関する相談に対応しています。「相続税がかかるか分からない」「自分で計算すると基礎控除以下だが、このまま申告しなくてよいか判断できない」という段階でも構いません。自己計算だけで申告不要と決めるのではなく、判断に迷う事情がある場合には、申告期限を迎える前に一度ご相談ください。

初回相談無料

初回相談は無料。相続の専門チームによるご相談の詳細はこちらから。

相続税の計算方法

法定相続人の数え方や基礎控除額の計算については、「相続税の計算方法」の記事で詳しく解説しています。

 

当サイトのコラムの著作権は法人に帰属します。 記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。

 

Nexill&Partners Group(弁護士法人Nexill&Partners)

福岡を中心に、全国からご相談をお受けしております。 弁護士だけでなく社労士・税理士・司法書士・行政書士と多士業が在籍。 遺産相続、企業支援(企業法務・労務・税務)に特化した総合法律事務所です。 博多駅徒歩7分。初回相談無料、お気軽にお問い合わせください。 当グループでは博多マルイ5Fの「相続LOUNGE福岡オフィス」を運営しております。こちらもぜひご活用ください。

監修者:菰田 泰隆
代表弁護士・税理士・社会保険労務士・行政書士菰田 泰隆

弁護士法人Nexill&Partners

代表弁護士・税理士・社会保険労務士・行政書士菰田 泰隆

  • 2002年
    修猷館高等学校 卒業
  • 2007年
    九州大学法学部 卒業
  • 2010年
    早稲田大学大学院法務研究科 修了
  • 2012年
    弁護士登録
  • 2013年
    菰田法律事務所(現:弁護士法人Nexill&Partners) 開業
  • 2016年
    社労士登録・開業(現:社会保険労務士法人Nexill&Partners)
  • 2016年
    税理士登録・開業(現:税理士法人Nexill&Partners)

お電話050-5799-4483

無料相談

公式LINE