column

コラム

20代・30代で遺言書を作るときは書き方を工夫した方がよいですか?|「若いうちに遺言書」は必要なのか弁護士が解説

2026.08.21

遺言書というと高齢になってから準備するものという印象をお持ちの方も多いかもしれませんが、結婚や出産、住宅購入などライフステージの変化が多い年代ほど、実は検討の必要性が高まる場面もあります。
本記事では、若いうちに遺言書を作成する意味や、年齢に応じて書き方を工夫すべきポイント、さらに作成後の見直しの考え方について、弁護士の視点から解説します。

第1章 20代・30代で遺言書を作る意味とは?

1-1 遺言書の必要性は年齢だけでは決まらない

遺言書は、高齢になってから作成するものというイメージを持たれがちです。しかし、法律上は15歳以上であれば遺言書を作成できるため、20代・30代で作ることも可能です。
もっとも、若いうちから全員が遺言書を作る必要があるわけではありませんが、たとえば、自分に万が一のことがあった場合、法律に従って相続手続を進めるだけでは希望した結果にならない可能性があるときは、若いうちでも遺言書の作成を検討する意味があります。

1-2 若い世代でも遺言書の作成を検討した方がよいケース

20代・30代であっても、次のような場合には遺言書の必要性が高まることがあります。

  • 結婚して配偶者がいる
  • 子どもがいる、または妊娠している
  • 不動産を購入している
  • 事業を営んでいる
  • 特定の人に財産を確実に残したい

遺言書が無かった場合、相続手続においては相続人間の関係性や生活状況にかかわらず、法律で定められた割合に従って分配されることが基本です。
その結果として、ご自身としては特定の人に多く残したいという意向があったとしても、それが十分に実現されないこともあります。
また、独身の方の場合は、親や兄弟姉妹が法定相続人となることが多いですが、それ以外の友人やパートナーなどに自分の財産をあげたいと思っているのであれば、遺言書を作る意味が出てくるでしょう。
まずはご自身の家族構成や財産の内容、誰に財産を残したいかを考えてみて、自分の希望を実現するには遺言書があった方がいいかな?どうかな?というところで作成すべきかを判断してみると良いと思います。

第2章 若いうちに遺言書を作るときの書き方のポイント

2-1 現時点の情報に基づいて、できる限り具体的に財産を特定する

20代・30代の段階では、財産構成が比較的シンプルであることが多く、預貯金や生命保険などが中心となるケースが一般的です。
遺言書に記載をするときは、誰にどの財産を取得させるのかが明確に分かるように記載します。

「遺言者は、遺言者名義の○○銀行○○支店の普通預金を、妻○○に相続させる。」
「遺言者は、別紙財産目録記載の土地および建物を、妹○○に相続させる。」
財産目録を作成するときは、対象となる財産がこれだと特定できるようにしておく必要がありますので、「銀行預金」「自宅」などといった書き方は避け、以下のように具体的に細かく財産を指定することが必要です。

  • 「銀行預金を相続させる」ではなく「○○銀行○○支店 普通預金口座○○」まで特定
  • 「不動産を相続させる」ではなく「所在・地番・家屋番号」まで特定
  • 「車を相続させる」ではなく「車種・ナンバー」まで特定

若いうちに作る遺言書で特に意識したいのは、記載した口座を解約したり、不動産を売却したりするなど、財産の内容が変わったときに遺言書も見直すことです。
特に20代・30代は、この後に家族構成や財産状況が変わる可能性の高い年代ですので、一度で将来のすべてに対応できる遺言書を作るというのは難しいところがあります。
そのため、遺言書を作る今この時点において、自分に万が一のことがあったらどうするか?という視点で作成→自分のライフスタイルが変更になったらその都度書き直すというようなサイクルで内容をアップデートしていくことを目指してみてください。

2-2 ネット銀行や暗号資産などの存在が分かるようにする

デジタル資産とは、ネット銀行の預金、オンライン証券の金融商品、暗号資産など、主にインターネット上で管理されている財産や情報をいいます。
特に若い世代においては、店舗や紙の通帳を利用せず、スマートフォンやパソコンだけで金融取引をしている方も多いかと思いますが、このような財産は、本人以外の家族が存在に気付きにくく、相続手続から漏れたり、調査に時間がかかったりする可能性があります。
デジタル資産をお持ちの場合は、現時点で保有していると思われるものを遺言書にも具体的に記載しておきましょう。
ただし、暗証番号やログインパスワード、暗号資産のセキュリティキーなどを、遺言書に記載するのは、万が一遺言書の紛失等が起きた場合に不正利用されるリスクがありますので、第三者に知られてはならない認証情報は遺言書とは分けて管理するようにしてください。
相続手続に必要な最低限の情報(契約者番号、連絡先など)を家族にも伝えておきたいときは、遺言書とは別にエンディングノートなどに残しておくのもよいでしょう。

2-3 NISA口座がある場合の遺言書の書き方

最近であれば、NISA口座で資産運用をされている方も増えているかと思います。
NISAを利用して複数の投資信託や株式を保有している場合、すべてを同じ人に承継させるのであれば、各銘柄を一つずつ遺言書に列挙する必要はありません。
たとえば、証券会社名、支店名や取扱店、口座番号などを示したうえで、「相続開始時に当該口座に記録されている投資信託、株式、預り金その他一切の財産を○○に相続させる」と記載する方法が考えられます。
このように口座単位で指定すれば、作成後に商品の売却や買い替えをした場合にも対応しやすくなります。
一方、銘柄ごとに取得させる人を変えたい場合(例:Aという投資信託は配偶者に、Bという投資信託は親にそれぞれ分ける)には、それぞれの投資信託や株式を遺言書の中で個別に特定する必要があります。
また、「○○証券の口座内の財産を配偶者と親が2分の1ずつ取得する」といった割合による指定も考えられますが、現物のまま分けるのか、売却して代金を分けるのかなど、相続手続を実行しやすい内容にしておいた方がよいので、そこは遺言書を作るときに検討する必要があります。

第3章 遺言書の内容を見直すタイミングと書き直し方

3-1 見直すタイミング=家族や財産の状況が変わったとき

特に20代・30代は生活環境が変わりやすい世代でもあるため、遺言書を作成した後に大きなライフイベントがあったときには、現在の希望と遺言書の内容が合っているかを確認しましょう。

① 結婚または離婚したとき

例えば、20代で独身時代に作成した遺言書で「兄弟姉妹に全財産を相続させる」と記載していたケースを考えます。その後、ご自身が結婚した場合、配偶者は法定相続人となるため、遺言内容が現実の家族構成と大きくずれることになります。また離婚した場合も同様で、離婚した場合も同様です。遺言書に元配偶者についての記載が残っていると、現在の本人の意思と内容が合わなくなっている可能性があります。
結婚や離婚をしたときには、遺言書をそのままにせず、一度内容を確認しましょう。

② 子どもが生まれたとき

お子さんが生まれた場合も、遺言書を見直す重要なタイミングです。
独身のときや夫婦だけで生活していたときに作った遺言書があるときは、自分や配偶者に万が一のことがあっても、子どもの生活が保障されるか?というところの見直しが必要です。
また、第2子以降が生まれた場合にも、それまでの遺言書が現在の家族構成に合っているかを確認した方がよいでしょう。子どもの誕生や家族の増加に合わせて、誰にどの財産を残すのかを改めて整理することが大切です。

③ 住宅を購入したとき

20代から30代にかけては、住宅を購入する方も増えてくるでしょう。
例えば、もともとの遺言では「預貯金を配偶者へ」としていた場合でも、その後に自宅を購入すると、預貯金が中心だった財産構成に不動産が加わることになります。
不動産は、預貯金のように金額で簡単に分けることが難しい財産です。特に自宅については、誰が住み続けるのか、誰に取得してもらいたいのか、住宅ローンの残高や他の財産とのバランスをどう考えるのかを整理する必要があります。
反対に、遺言書に記載した不動産を売却したり、別の住宅へ買い替えたりした場合にも、遺言書の内容と実際の財産状況が合わなくなります。住宅の購入だけでなく、売却や買い替えの際にも内容を確認しましょう。

④ 転職・起業などで収入構造が変わったとき

会社員として働いていたときに遺言書を作成し、その後に会社を設立したり、個人事業を始めたりした場合には、財産の内容が大きく変わることがあります。
事業資産は評価や分割が複雑になることがあるほか、特に株式や持分が絡む場合は、「誰に引き継がせるか」を明確にしておかないと、事業継続自体に影響が出ることもあります。
転職や起業などをきっかけに保有する財産の種類や金額が大きく変わったときには、以前の遺言書が現在の状況に合っているかを確認することが重要です。

3-2 遺言書を書き直すときの注意点(撤回・新旧の関係)

遺言書を複数回書き換えるような場合は、変更部分が限定的であっても、既に作成した遺言書を撤回の上で、内容のすべてを新しく書き直す方が分かりやすいでしょう。
新しく書き直した場合は、古い遺言書はシュレッダーにかける等で破棄をしておくと混乱せず安心です。

なお、後から新しい遺言書を作成した場合、前の遺言書と内容が抵触する部分については、原則として新しい遺言書が優先されます。
たとえば、最初の遺言書に「全財産を配偶者に相続させる」と記載し、その後に作成した遺言書で「自宅については子どもに相続させる」と変更した場合を考えます。
この場合、自宅については後から作成した遺言書の内容が優先されますが、それ以外の財産については、以前の遺言書の内容が残ります。

第4章 まとめ

20代・30代で遺言書を作成することは、必ずしも「特別な事情がある人だけのもの」とは限りません。ライフステージの変化が多い年代であるからこそ、その時点ごとの意思を整理し、将来の変化を見据えた形で備えておくことに一定の意義があります。
もっとも、若いうちの遺言書は一度作って終わりではなく、家族構成や財産状況の変化に応じて見直していく前提で設計することが重要になります。内容の不備や解釈の曖昧さがあると、かえって相続時のトラブルにつながる可能性もあるため、慎重な検討が求められます。遺言書の内容や作成方法に不安がある場合には、法的観点からの整理を含めて専門家に相談することで、より確実な形で将来の備えを整えることができます。専門的な対応が必要な場合は、私たちNexill&Partnersグループへお気軽にご相談ください。

 

当サイトのコラムの著作権は法人に帰属します。 記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。

 

Nexill&Partners Group(弁護士法人Nexill&Partners)

福岡を中心に、全国からご相談をお受けしております。 弁護士だけでなく社労士・税理士・司法書士・行政書士と多士業が在籍。 遺産相続、企業支援(企業法務・労務・税務)に特化した総合法律事務所です。 博多駅徒歩7分。初回相談無料、お気軽にお問い合わせください。 当グループでは博多マルイ5Fの「相続LOUNGE福岡オフィス」を運営しております。こちらもぜひご活用ください。

監修者:池本 稔洋
弁護士池本 稔洋

弁護士法人Nexill&Partners

弁護士池本 稔洋

  • 2017年3月
    兵庫県立星陵高等学校 卒業
  • 2021年3月
    神戸大学法学部 法律学科 卒業
  • 2023年3月
    神戸大学法科大学院 修了
  • 2025年4月
    弁護士法人Nexill&Partners 入所

お電話050-5799-4483

無料相談

公式LINE