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コラム

自分が急に亡くなったらペットはどうなる?残された愛犬・愛猫を守るおひとりさまのペット信託を弁護士が解説

2026.08.19

単身で犬や猫と暮らしていると、「自分が急に亡くなったら、この子はどうなるのだろう」と不安になることがあります。万一に備えるには、引き取ってくれる人を探すだけでなく、飼育費や医療費をどのように渡すかまで準備しておくことが大切です。本記事では、単身で愛犬や愛猫と暮らす方が知っておきたいペット信託の仕組みと、飼い主の死亡後に備えて決めておくべきことを弁護士が解説します。

※なお、『ペット信託』は法律上の制度名ではなく、ペットの飼育のために信託を利用する仕組みの通称です。

第1章 おひとりさまが万一に備えてペットのために準備すべきこと

1-1 家族や親族が当然に引き取ってくれるとは限らない

飼い主が亡くなった場合、法律上、ペットは相続財産として相続人に引き継がれます。ただし、誰が飼育するかまで自動的に決まるわけではなく、相続人の誰かが当然に引き取ってくれるとも限りません。ペット禁止の賃貸住宅に住んでいる、動物アレルギーがある、先住動物との相性に問題があるなど、引き取りたくても引き取れない場合もあります。
そのため、何の準備もしていなければ、相続人間で引取先が決まらず、ペットの生活が不安定になるおそれがあります。

1-2 引取先だけでなく、飼育費も準備する必要がある

ペットを引き取ってくれる人が決まっても、それだけで十分とは限りません。引取後には、ペットフードなどの日用品代が継続的にかかり、病気になった場合には、治療費や薬代など、まとまった費用が必要になる可能性もあります。
善意で引き受けてもらう場合でも、こうした費用まで相手に負担させるのは現実的ではありません。誰にペットを託すかと併せて、飼育に必要なお金をどのように準備し、引き取る人へ渡すかも決めておく必要があります。

1-3 死亡後だけでなく、長期入院や認知症になった場合にも備える

ペットの世話ができなくなるのは、亡くなった後だけではありません。長期入院や認知症の発症、施設への入居などにより、世話を続けられなくなることもあります。
本コラムで解説する「ペット信託」では、飼い主の死亡後だけでなく、長期入院や判断能力の低下などをきっかけに、ペットの引き渡しや飼育費の支払いを始める仕組みを設計することもできます。

第2章 ペット信託とは?遺言書のみで備える場合との違い

2-1 ペット信託は、信託の仕組みをペットの飼育に活用する方法

信託とは、財産を持つ人が、信頼できる人に財産を託し、決めた目的に沿って管理・支出してもらう仕組みのことをいいます。
一般的に信託には次の3つの立場が登場します。

委託者

財産の持ち主

受託者

委託者から財産の管理や支出を任される人

受益者

信託から利益を受ける権利(受益権)を持つ人

ペット信託では、飼い主(委託者)が準備した金銭を、飼い主自身が指定した受託者が管理し、飼い主の死亡や長期入院後に、ペットを飼育する人(受益者)へ飼育費などを支払う仕組みを設計できます。
ペット自身は受益者になれないため、ペットを飼育してくれる人を受益者とする設計がよく用いられます。

2-2 ペット信託と遺言書の違いとは

自分の財産を特定の相手に渡す方法として、相続対策でよく用いられるのが遺言書です。
ペットについても、飼育を引き受けてもらうことを負担として、その相手に財産を遺贈する「負担付遺贈」という方法があります。
ただし、遺贈は放棄することができます。生前に口頭で了承を得ていても、財産の受取りやペットの飼育を法的に確定させるものではありません。また、飼い主の死亡後、一度にまとまった金銭を受け取ることになるため、飼育者が飼育資金の管理も担うことになります。

これに対し、ペット信託では、受託者と信託契約を結び、飼育者とも別途契約を結ぶことで、飼い主が元気なうちに、それぞれの役割や条件について法的な合意を得ることができます。飼育費を毎月1回など分割して給付する仕組みも作れるため、飼育者がお金を一括して管理する負担を軽減することもできます。

第3章 具体例でわかるペット信託の仕組みとお金の流れ

ペット信託では、具体的にどのような仕組みを作るのでしょうか。ここでは、ひとり暮らしで猫を飼う方が、猫を友人に引き取ってもらい、姪に飼育資金の管理を頼むケースを例に、関係者の役割やお金の流れ、あらかじめ決めておくべき事項を解説します。

3-1 猫を託す相手と、お金の管理を託す相手を役割で分ける

想定状況

あなたは一人暮らしで猫を飼っており、自分に何かあった場合には、猫の性格や生活習慣をよく知る友人に引き取ってもらいたいと考えています。友人も飼育には同意していますが、多額の資金を一括で預かり、何年も管理することには不安があります。
一方、あなたの姪は住宅事情から猫を飼えませんが、お金の管理と友人への送金は引き受けられます。そこで、猫の飼育は友人に、お金の管理は姪に任せる信託を検討します。

3-2 あなたが委託者、姪が受託者、友人が飼育者兼受益者になる

この例では、飼い主であるあなたが信託の「委託者」です。
猫のために使う預金などを信託財産として準備し、支払方法や飼育に関する希望を決めます。

姪は「受託者」として、あなたの信託財産を管理します。
受託者は単に預金を預かるのではなく、信託の目的に従って飼育費を送金し、支出や残高を記録する役割を負います。

友人は猫を実際に飼う飼育者です。
本記事の例では、信託財産から飼育費や報酬を受ける飼育者兼「受益者」とします。

3-3 飼い主に万一のことがあった後のお金の流れ

あなたが亡くなった場合には、遺言書や飼育に関する契約の定めに従って、友人が猫を引き取ります。姪は受託者として信託財産を管理し、そこから友人へ毎月の飼育費と報酬を支払います。

ペット信託では、費用の種類に応じて支払方法を分けることができます。
たとえば、フードや猫砂など日常的にかかる費用は毎月定額で支払い、病気による治療費や薬代は、飼育者である友人がいったん立て替えた後、領収書を確認して実費を支払う方法です。
手術など高額な支出については、事前に姪の承認を得るルールにするのもいいでしょう。

このように、費用の金額や支払方法などを生前にあなたが決めておけば、姪から友人へ、あらかじめ定めたルールに沿って飼育費が支払われます。

3-4 開始時期・後任者・残った財産まで決めておく

ペット信託では、少なくとも次のような事項を決めておきます。

  • 死亡のほか、入院や施設入居など、どのような状態になったら友人が猫を引き取るか
  • 日常的な飼育費、医療費、友人への報酬などをどのような方法で支払うか
  • 友人や姪が役割を続けられなくなった場合の後任者をどうするか
  • 飼育状況と支出内容の報告方法をどうするか
  • 猫が亡くなった後、残った信託財産を誰に渡すか

これらを曖昧にしたままでは、受託者や受益者が判断に迷い、飼育費の支払いが滞ったり、後任者への引継ぎが進まなかったりするおそれがあります。そのため、誰がどの場面で判断するのか、役割を交代する際の手続、残った財産の帰属先まで、信託契約で具体的に定めておくことが大切です。

第4章 ペット信託の飼育者・受託者はどう選ぶ?飼育費と別に報酬も検討する

ペット信託を実際に機能させるには、飼育者(受益者)と受託者を決めるだけでなく、それぞれが長期間役割を続けられるかを確認する必要があります。また、善意だけに頼ると負担が大きくなるため、飼育費とは別に報酬を支払う設計も重要です。本章では、両者の選び方と報酬の決め方を解説します。

4-1 飼育者には、ペットを長期間飼える生活環境があるか確認する

飼育者は、「動物が好き」「長い付き合いがある」という理由だけで決めるのではなく、ペットを飼える住宅か、同居家族が賛成しているか、ペットの高齢期の介護まで対応できるかなどを確認すべきです。
ただし、飼い主の希望を細かく定めると飼育の負担が大きくなりすぎて、引き受けてくれる人が見つかりにくくなります。
希望は、①必ず守ってほしい条件 ②できる限り続けてほしい習慣 ③飼育者や獣医師の判断に任せる事項 に分けて整理するのが現実的です。

4-2 飼育費とは別に、飼育者・受託者への報酬を検討する

ペット信託では、ペットに直接かかる飼育費とは別に、飼育者(受益者)と受託者への報酬を検討する必要があります。
飼育者は日常的な世話だけでなく、ペットがいることで旅行や外出が制限されること、病気になった場合の対応や、ペットが高齢期になった際の介護まで、生活上の負担を負うことを忘れてはなりません。「友人だから無償で引き受けてくれるだろう」と考えず、毎月の飼育費とは別に報酬を設定した方が、正式に依頼しやすくなります。

一方、受託者にも、毎月の飼育費の送金に加えて、飼育者からの領収書の確認、飼育者との連絡などの手間がかかります。親族に頼む場合でも無償を当然とせず、負担に見合う報酬を検討した方がよいでしょう。
信託財産から報酬を支払う場合には、信託契約にその旨を定め、月額・年額などの金額や算定方法を明確にしておくことが大切です。

4-3 家族や知人に頼めない場合は、法人や飼育施設も候補になる

身近に受託者を頼める人がいない場合には、信託会社などの法人が財産管理を引き受けるサービスの利用も検討できます。ただし、すべての事業者が個人のペット信託を扱っているわけではありません。取扱いの有無や最低財産額、報酬などを個別に確認する必要があります。

飼育については、終生飼養に対応する施設や事業者を候補にする方法もあります。
その場合は、飼育環境や通院体制、報告方法、また事業を継続できなくなった場合の引継先や返金条件なども確認しましょう。

第5章 【FAQ】ペット信託でよくある疑問

Q1. ペットが複数いる場合は、一つの信託でまとめて備えられますか?

A1. 一つの信託で備える設計も可能です

複数の犬や猫について、一つのペット信託で飼育資金を管理する仕組みも考えられます。ただし、それぞれの年齢や健康状態によって毎月の飼育費が異なる場合には、ペットごとに支払方法を整理しておく必要があります。
また、一匹が先に亡くなった場合に、そのペットのために見込んでいた資金をほかのペットへ使えるのか、それぞれを別の飼育者へ託す場合に費用をどう分けるのかも定めます。ペットを一緒に飼い続けてほしい場合は、その希望も契約に明記しておきましょう。

Q2. ペット信託をすると税金はかかりますか?

A2. 信託の設計によって課税関係が異なります

ペット信託を設定しただけで、必ず税金がかかるわけではありません。ただし、信託する財産の金額や、受益者が権利を取得する時期、ペットが亡くなった後の残った財産を誰が受け取るかによって、贈与税や相続税がかかる場合があります。
また、受益者や受託者が飼育や財産管理の対価として報酬を受け取る場合には、所得税の対象になることがあります。
税金がかかるかは信託の設計や財産額によって異なるため、契約を作成する際に税理士へ確認しておくと安心です。

Q3. 飼い主の死亡や認知症は、受託者や受益者にどう伝わりますか?

A3. 通知する人と確認方法を事前に決めます

信託契約を締結しただけでは、飼い主の死亡や判断能力の低下が受託者や受益者へ自動的に伝わるわけではありません。死亡時には親族や遺言執行者、認知症など生前の異変時には見守りを頼む人など、状況に応じて連絡を担う人を決め、受託者・受益者の連絡先を共有しておく必要があります。
認知症については、医師の診断や任意後見監督人の選任など、客観的に確認できる基準を契約で定めておく方法が考えられます。

まとめ 残されたペットを守るには、元気なうちに実行できる仕組みを整える

ペット信託は、ただ飼育費を残すだけの制度ではありません。誰にペットを託すのか、誰がお金を管理するのか、どのような方法で飼育費や報酬を支払うのかまで決めることで、飼い主に万一のことがあった後も、ペットの生活を支える仕組みを作るものです。
ペット信託を検討し始める段階で、契約内容をすべて決める必要はありません。まずは、ペットを託したい人や財産管理を頼めそうな人、現在かかっている飼育費、今後も続けてほしい生活習慣などを整理するところから始めるとよいでしょう。
そのうえで、遺言書のみで備えるのか、ペット信託を利用するのかを検討します。

ペット信託の設計には、信託契約そのものに加えて、遺言書や相続、税金に関する検討も必要です。Nexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)グループでは、弁護士や税理士などが連携し、飼い主の方のご希望や家族関係、財産状況に応じた方法を検討できます。ペット信託を具体的に考える際の相談先として、ご検討ください。

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監修者:松﨑 洋二
弁護士松﨑 洋二

弁護士法人Nexill&Partners

弁護士松﨑 洋二

  • 2015年3月
    私立九州学院高等学校 卒業
  • 2015年4月
    福岡大学法学部 法律学科 入学
  • 2018年3月
    福岡大学法学部 法律学科 早期卒業
  • 2018年4月
    福岡大学法科大学院 入学
  • 2021年3月
    福岡大学法科大学院 修了
  • 2025年4月
    弁護士法人Nexill&Partners 入所

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