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籍を入れない選択をした事実婚、内縁、同性パートナーにある方の終活|パートナーに遺産を残す方法と相続税2割加算の注意点を弁護士が解説

2026.07.31

※現行法制度上、法律上の婚姻は現状異性間でのみに認められており、「事実婚」、「内縁」という言葉は、婚姻の意思をもって共同生活し、社会的にも夫婦と認められているものをいう、と伝統的には理解されています。(本記事は、現行法制度を前提とするものですから、その是非は本記事においては一旦措きます。)もっとも、伝統的意味における「事実婚」、「内縁」と「同性パートナー」とは、本質的には何ら異なるものではありません。そのため、本記事では、伝統的意味における「事実婚」、「内縁」と「同性パートナー関係」を、「事実婚のパートナー」又は「パートナー関係」などと総称します。

婚姻届を出さずに事実婚のパートナーとして生活している場合、相続の問題で不安に感じる方も多いのではないでしょうか。事実婚のパートナーには、原則として法律上の相続権はありません。そのため、何も準備をしないまま相続が発生した場合、事実婚のパートナーは当然に遺産を受け取れるわけではありません。本記事では、籍を入れない選択をしたパートナー関係が、残されるパートナーの生活を守るために準備しておくべき相続対策について、弁護士が解説します。

第1章 事実婚・内縁のパートナーには原則として相続権がない

1-1 「夫婦同然」でも法律上の配偶者にはあたらない

事実婚・内縁関係として長年生活していても、婚姻届を提出していない場合、事実婚のパートナーは法律上の配偶者(法定相続人)にはあたりません。
法定相続人として扱われるのは、亡くなった時点で法律上の婚姻関係にある人(配偶者)です。住民票上同じ住所で生活していた、周囲から夫婦として見られていた、生活費を一緒に管理していたといった事情があっても、それだけで相続権が発生するわけではありません。

1-2 何も対策しなければ、遺産は子・親・兄弟姉妹などに承継される

相続人になれる人の範囲は、法律で決まっています。
法律上の配偶者がいる場合、その配偶者は常に相続人になります。これに加えて、子どもがいれば子ども、子どもがいなければ親などの直系尊属、子どもも親もいなければ兄弟姉妹や甥・姪が相続人になります。
事実婚のパートナーはこの法定相続人の範囲に含まれないため、遺言書などの準備がないまま相続が発生した場合、原則として、パートナーに預貯金や不動産などの財産が渡ることはありません。たとえば、自宅が亡くなった方の単独名義になっていた場合、その自宅不動産は相続人が承継することになるため、残されたパートナーがそのまま住み続けることは難しくなると考えられます。

1-3 特別縁故者制度は必ず適用されるとは限らない

特別縁故者制度とは、法律上の相続人が存在しない場合に、被相続人と特別な関係にあった人が、家庭裁判所の判断によって財産の分与を受けられることがある制度です。
事実婚のパートナーも、事情によっては特別縁故者として認められる可能性があります。しかし、亡くなった方に相続人が1人でもいる場合には、原則としてこの制度を利用することはできません。
また、相続人がいない場合でも、特別縁故者として財産分与を受けるには家庭裁判所での手続が必要です。手続を行ったからといって必ず認められるわけではなく、認められた場合でも希望どおりの財産を取得できるとは限りません。

このように、事実婚のパートナー関係の場合、残されるパートナーの生活を守るためには事前に対策を行っておくことが大切です。

第2章 事実婚のパートナーに財産を残す基本は遺言書による遺贈

2-1 遺言書を作成すれば、相続人ではないパートナーにも財産を残せる

事実婚のパートナーに財産を残す方法として、まず検討すべきなのが遺言書による遺贈です。
遺贈とは、遺言書によって、相続人ではない人に財産を渡す方法です。
たとえば、「自宅不動産を内縁の妻に遺贈する」「預貯金のうち〇〇万円をパートナーに遺贈する」といった内容を遺言書に残しておけば、パートナーがその財産を取得できる可能性があります。

2-2 遺言書の内容が不明確だと相続人との争いにつながりやすい

もっとも、遺言書はただ作成すればよいというものではありません。内容が不明確な遺言書を残してしまうと、相続人との間で争いになる可能性があります。
そのため、遺言書を作成する際には、誰に、どの財産を、どのように渡すのかを明確に記載しておくことが重要です。たとえば、不動産であれば登記簿上の表示を確認し、預貯金であれば金融機関名や支店名、口座の内容をできる限り特定しておく必要があります。
また、遺言書は手書きの自筆証書で作成することもできますが、方式不備によって無効になったり、紛失したりするリスクがあるため、公正証書遺言で作成することが望ましいといえます。

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2-3 遺言執行者を指定しておくと、相続後の手続きが進みやすい

遺言書を作成するだけでなく、遺言執行者を指定しておくことも検討されます。
遺言執行者とは、遺言書の内容を実現するために必要な手続きを行う人で、これを指定しておけば不動産の名義変更や預貯金の払戻し、株式の移管などを進めやすくなります。
また、相続人とパートナーの関係が良好でない場合も、弁護士などの第三者を遺言執行者に指定しておくことで、感情的な対立を避けながら遺言内容を実現しやすくなるといえます。

第3章 遺言書とあわせて検討したい事実婚の終活対策

3-1 生命保険は、当面の生活資金を残す手段になる

事実婚のパートナーに当面の生活資金を残す方法として、生命保険を活用することがあります。
死亡保険金は一般的には受取人固有の財産として扱われ、遺産分割協議を経ずに受け取れるためです。
ただし、保険会社によっては、事実婚のパートナーを死亡保険金の受取人に指定する際に、同居期間や住民票の記載など一定の確認が必要になることがあります。
また、相続税についても考慮が必要です。事実婚のパートナーが死亡保険金を受け取る場合、生命保険金の非課税枠は適用されません。
そのため、生命保険を使う場合は、受取額と税負担をあわせて確認する必要があります。

3-2 生前贈与は早めに財産を移せるが、遺贈も受ける場合は相続税に注意する

生前贈与は、生きている間に預貯金や不動産の持分などをパートナーに渡しておく方法です。暦年課税による生前贈与では、年間110万円以下の贈与であれば、通常、贈与税はかかりません。相続発生を待たずに財産を移せるため、残されるパートナーの生活基盤を早めに整えられる点にメリットがあるといえます。

もっとも、生前贈与を受けたパートナーが、贈与者の死亡時に遺言による遺贈も受ける場合には注意が必要です。相続税では、相続や遺贈によって財産を取得した人が、亡くなる前の一定期間内に被相続人から贈与を受けていた場合、その贈与財産の価額が相続税の計算上加算されます。
この加算は、贈与税がかかっていたかどうかにかかわらず問題になります。
そのため、年間110万円以下の贈与で贈与税がかかっていなかった場合でも、将来そのパートナーが遺贈を受けるときには、相続税の計算に影響する可能性があります。

3-3 死因贈与契約は、死亡後に財産を渡すことを合意しておく方法

死因贈与契約は、「自分が亡くなったら、この財産をパートナーに贈与する」と生前に契約しておく方法です。
遺言書が本人の一方的な意思表示であるのに対し、死因贈与契約は、財産を渡す人と受け取る人の合意によって成立する契約です。そのため、パートナーと合意した内容を契約書として残しておける点に特徴があります。
ただし、死因贈与契約によって取得した財産は、相続税の課税対象になります。

第4章 相続税2割加算と税負担を見落とさない

4-1 事実婚のパートナーは、原則として相続税2割加算の対象になる

事実婚のパートナーに財産を残す場合、必ず確認しておきたいのが相続税です。
相続税には、相続や遺贈によって財産を取得した人が、亡くなった方の配偶者や一親等の血族などではない場合に、その人の相続税額に対して、相続税額の2割に相当する金額を加算する制度があります。
事実婚のパートナーは法律上の配偶者ではなく、通常は一親等の血族にもあたりません。そのため、遺言書などによって財産を取得した場合、原則としてこの相続税2割加算の対象になります。

4-2 生命保険を使う場合も、非課税枠を使えない可能性が高い

生命保険は、事実婚のパートナーに生活資金を残す手段として有効です。しかし、税務上は注意が必要です。
相続税の課税対象となる死亡保険金には、「500万円×法定相続人の数」という非課税限度額があります。ただし、この非課税枠を使えるのは、死亡保険金の受取人が相続人である場合です。
事実婚のパートナーは法定相続人ではないため、死亡保険金を受け取れるようにしていても、この非課税枠は適用されません。
そのため、生命保険を検討する際には、単純な受取額だけでなく、相続税がどのくらいかかるかを確認して設計することが重要です。

4-3 不動産を遺贈する場合は納税資金もセットで準備する

事実婚のパートナーに自宅を遺贈する場合、特に注意したいのが納税資金です。
不動産を取得した場合も、相続税は原則として金銭で納めなければなりません。
そのため、自宅を遺贈してパートナーの住まいを確保しても、遺贈された自宅にかかる相続税の納税資金がなければ、結果的にその自宅を売却して相続税を払わざるを得なくなる可能性があります。
自宅など高額な財産を遺贈する場合は、預貯金や生命保険などもあわせて残すなど、税金を支払った後も生活を維持できる設計にしておくことが重要です。

第5章 【FAQ】事実婚のパートナーに財産を残す場合によくある質問

Q1. 遺言書を書いた後に事実婚を解消した場合、遺言は自動的に無効になりますか?

A1. 自動的には無効になりません。

遺言書を作成した後に事実婚関係を解消したとしても、それだけで過去に作成した遺言書が当然に無効になるわけではありません。
そのため、事実婚のパートナーに財産を遺贈する内容の遺言書を作成した後、関係が解消された場合には、遺言書を見直す必要があります。見直しをしないまま亡くなると、すでに関係が終了している相手に財産が渡ってしまう可能性があります。
もっとも、遺言書の中で「死亡時に事実婚関係が継続している場合に限り遺贈する」といった条件を明確に定めている場合には、結論が変わることがあります。
事実婚関係は、法律婚のように離婚届によって明確に記録されるとは限りません。そのため、関係の変化があった場合には、新しい遺言書を作成する、または既存の遺言書を撤回するなど、早めに内容を整理しておくことが大切です。

Q2. 事実婚のパートナーが先に亡くなった場合に備えて、予備的な受取人を決めておくべきですか?

A2. 決めておくと安心です。

事実婚のパートナーに財産を遺贈する内容の遺言書を作成していても、そのパートナーが遺言者より先に亡くなった場合、原則として、そのパートナーに対する遺贈は効力を生じません。
この場合、遺言書で別の定めをしていなければ、本来パートナーが受け取る予定だった財産は、相続人に帰属することになります。そのため、「パートナーが先に亡くなった場合には、その子に遺贈する」「特定の親族に遺贈する」「特定の団体に寄付する」など、予備的な受取人を定めておくことが考えられます。
特に、法定相続人との関係が薄い場合や、自分の財産を最終的に誰に承継させたいかについて明確な希望がある場合には、予備的な受取人を決めておくことが重要です。
遺言書では、「第1順位として事実婚のパートナーに遺贈し、その者が遺言者より先に死亡していた場合には、〇〇に遺贈する」といった形で、具体的に記載しておくとよいでしょう。

Q3. 自宅を遺贈したい場合、住宅ローンや共有名義があるときはどうすればよいですか?

A3. 権利関係を先に確認しましょう。

事実婚のパートナーに自宅を遺贈したい場合には、まず不動産の名義、住宅ローンの有無、抵当権の有無、共有持分の有無を確認する必要があります。
住宅ローンが残っている不動産を遺贈する場合、パートナーが自宅を取得できたとしても、抵当権が残っていれば、ローンの返済状況によっては不動産が競売にかけられるリスクがあります。団体信用生命保険によってローンが完済されるのか、ローン債務を誰が負担するのか、金融機関との関係で問題がないかを事前に確認しておくことが重要です。
また、自宅が共有名義になっている場合には、自分が遺贈できるのは原則として自分の共有持分に限られます。パートナーに自宅全体を残したいと考えていても、他の共有者の持分まで当然に移すことはできません。
そのため、自宅を遺贈する場合には、遺言書に不動産の表示や共有持分を正確に記載するとともに、ローン返済、固定資産税、管理費・修繕費、相続税の納税資金まで含めて設計しておく必要があります。不動産を残すだけでなく、パートナーが実際に住み続けられる状態を作ることが大切です。

第6章 事実婚の終活は、渡す財産と税金を一体で設計することが重要

事実婚のパートナーには原則として法律上の相続権がありません。そのため、パートナーに財産を残したい場合は、遺言書による遺贈を中心に、生命保険や生前贈与、死因贈与契約などを組み合わせて準備しておく必要があります。もっとも、財産を渡す方法だけを整えても十分ではありません。事実婚のパートナーが遺贈を受ける場合、原則として相続税の2割加算の対象になり、法律上の配偶者に認められる税額軽減も使えません。また、生命保険金を活用する場合でも、生命保険金の非課税枠が適用されないため、財産の内容によっては相続税が高額になりやすいといえます。
そのため、事実婚の終活では、「どの財産を渡すか」だけでなく、「税金を支払った後もパートナーが生活を維持できるか」まで見据えた設計が非常に重要です。
私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)グループでは、遺言書の作成から、遺言執行者の指定、相続税を踏まえた財産設計まで、弁護士・税理士などが連携してサポートしています。大切なパートナーに財産を残したい方は、早い段階で一度ご相談ください。

初回無料。相続の専門チームによるご相談の詳細はこちらから。

監修者:菰田 泰隆
代表弁護士・税理士・社会保険労務士・行政書士菰田 泰隆

弁護士法人Nexill&Partners

代表弁護士・税理士・社会保険労務士・行政書士菰田 泰隆

  • 2002年
    修猷館高等学校 卒業
  • 2007年
    九州大学法学部 卒業
  • 2010年
    早稲田大学大学院法務研究科 修了
  • 2012年
    弁護士登録
  • 2013年
    菰田法律事務所(現:弁護士法人Nexill&Partners) 開業
  • 2016年
    社労士登録・開業(現:社会保険労務士法人Nexill&Partners)
  • 2016年
    税理士登録・開業(現:税理士法人Nexill&Partners)

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