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ペット信託にデメリットはある?自分の死後に愛犬・愛猫を守るための準備を弁護士が解説

2026.08.10

自分が愛犬や愛猫より先に亡くなった場合、家族や親族がペットを当然に引き取ってくれるとは限りません。ペットを守るには、引取先を決めておくことに加え、飼育費や医療費の残し方まで準備する必要があります。
本記事では、遺言書や飼育に関する契約、終生飼養施設、ペット信託を比較し、ペット信託のメリットとデメリットを弁護士が解説します。

第1章 自分の死後に愛犬・愛猫を守るために準備できる方法

飼い主が亡くなった後、ペットは原則として相続財産の一部として相続人に引き継がれます。ただし、誰が実際に飼育するかまで自動的に決まるわけではありません。
民法上、ペットは物として扱われるため、ペット自身に財産を相続させることもできません。そこで、自分がいなくなった後の愛犬・愛猫について考えるには、

①誰に引き取ってもらうか
②飼育費や医療費をどう残すか
③そのお金を誰が管理するか

これらを一体として考える必要があります。

1-1 家族や友人へ生前に引取りをお願いする

家族や友人に「自分に何かあったときは、この子をお願いしたい」と伝えておくのが最も身近な方法です。ただし、生前に口頭で了承を得ていても、将来、必ず引き取ってもらえるとは限りません。引取予定者が転居したり、病気になったり、家族の介護が必要になったりして、ペットを飼えなくなる場合もあります。
また、引取りには同意していても、その後のフード代や通院費まで負担できるとは限りません。

1-2 遺言書で引取先と渡す財産を定める

遺言書に、ペットの飼育を引き受けることを条件として、特定の人へ財産を渡す「負担付遺贈(ふたんつきいぞう)」を定める方法もあります。遺言によって財産を受け取る人に対し、一定の義務(負担)を課す遺贈で、たとえば友人へ預金を遺贈し、その負担として愛犬を終生飼育してもらう、といった使い方です。

この方法を用いると、誰にペットと財産を託したいかという自分の意思を明確に示すことができます。しかし、負担付遺贈を受ける側には、遺贈を放棄することもできます。
また、受遺者は、遺贈の目的の価額を超えない限度で遺言に定められた負担を履行する責任を負いますが、財産をペットのためにどのように管理するか、飼育状況を誰が継続的に確認するかまで自動的に決まるわけではありません。

1-3 引取予定者と飼育に関する負担付死因贈与契約を結ぶ

そのため、生前に引取予定者と話し合い、ペットの飼育を負担とする「負担付死因贈与契約」を結ぶ方法も考えられます。負担付死因贈与とは、贈与する人の死亡によって効力が生じる贈与で、遺言とは異なり、相手との合意によって成立する契約です。契約では、飼い主の死亡後にペットを引き取る時期や飼育費、医療方針などを定めます。
相手の了承を得たうえで条件を決められる点は利点ですが、契約後に相手の生活状況が変わり、飼育ができなくなる可能性は残ります。そのため、引取予定者が対応できなくなった場合の後任者や、飼育資金の管理方法も併せて検討しておく必要があります。

1-4 終生飼養施設や事業者へ依頼する

身近に引取先がいない場合には、犬や猫を生涯にわたって預かる終生飼養施設などへ依頼する方法があります。契約時には、飼育環境、通院や治療の方針、報告方法に加え、施設を運営できなくなった場合の引継先や返金条件まで確認しましょう。
費用や広告の説明だけで判断せず、契約書と実際の飼育環境を確認することが重要です。

1-5 ペット信託で飼育資金を管理する

ペット信託とは、財産を第三者へ託し、決めた目的に沿って管理・支出してもらう信託の仕組みを、ペットの飼育に活用する方法の通称です。
信託では、財産を託す人を「委託者」、託された財産を管理・支出する人を「受託者」、信託から利益を受ける権利を持つ人を「受益者」といいます。ペット自身は受益者になれないため、一例として、愛犬や愛猫の世話を引き受ける飼育者を受益者とする設計が考えられます。

たとえば、飼い主であるあなたが委託者となり、愛猫は友人に引き取ってもらい、飼育資金は姪に管理してもらうようなケースです。この場合、姪が受託者として飼育資金を管理し、受益者である友人に毎月の飼育費を支払います。友人は、その飼育費を使って愛猫の世話をします。
このように、ペット信託では、実際にペットを飼育する人と、飼育資金を管理する人を分けることができます。

第2章 ペット信託を利用するメリット

2-1 飼育費を一括ではなく継続的に支払える

遺言や負担付死因贈与によって飼育者へまとまった金銭を直接渡す設計とした場合、飼育者がその資金を自ら管理することになります。信頼できる相手であっても、受け取る側からすると飼育費と自分の生活費を分けて管理しなければならず、長期間にわたる金銭管理が負担になることもあります。
ペット信託では、日常の飼育費は毎月定額で支払い、通院費など突発的な費用は領収書に基づいて精算するなど、費用に応じた支払方法を決められます。

2-2 死亡だけでなく長期入院や認知症にも備えられる

ペットの世話ができなくなるのは、亡くなった後だけではありません。生前であっても、長期入院したり、認知症になったり、介護施設に入居したりすることによって、自宅へ戻れなくなることもあります。
遺言書は死亡後にしか効力を生じないため、生前に世話ができなくなった場面には対応できませんが、ペット信託と飼育者との契約を組み合わせることで、入院が一定期間続いた場合や施設への入居が決まった場合などを条件として、愛犬・愛猫を飼育者へ引き渡し、飼育費の支払いを始める設計も考えられます。

第3章 ペット信託のデメリットと利用前に確認すべきこと

ペット信託には、飼育資金を長期間管理できる利点がありますが、契約を作ればすべての不安がなくなるわけではありません。

3-1 ペット信託の設計には手間と費用がかかる

ペット信託は、飼育費の支払方法や支払いを始める時期などを細かく決められる一方、設計する際の検討事項が多くなります。
たとえば、信託財産を管理する受託者を誰にするか、飼育費の支払いを飼い主の死亡時から始めるのか、長期入院などによって世話ができなくなった段階から始めるのかを決める必要があります。
飼育者への支払いについても、毎月定額とするのか、ペットの年齢や健康状態に応じて金額を見直すのか、医療費や薬代などの臨時の支出をどのように精算するのかなどを検討しなければなりません。
さらに、ペット信託を実際に機能させるには、受託者との信託契約に加え、飼育者との契約や遺言書の作成が必要になることもあります。
このように、ペット信託は準備段階で考えるべき事項が多く、契約の設計や書類作成を専門家に依頼する場合には、その分の費用もかかります。

3-2 飼育者と受託者の双方を自分で確保する必要がある

ペット信託を利用するには、ペットを引き取って世話をする飼育者と、信託財産を管理する受託者の双方を、飼い主自身が探さなければなりません。
飼育者には、日々の世話から高齢になったペットの介護まで、長期間にわたる負担がかかります。また、受託者にも、毎月の送金や領収書の確認、飼育者との連絡などの事務が生じます。家族や友人であっても無償で引き受けてもらえるとは限りません。
そのため、飼育費とは別に、飼育者と受託者へ報酬を設けることも検討されます。
ペット信託を検討する際は、役割と負担を説明したうえで実際に引き受けてくれる人がいるかを確認することが重要です。

3-3 信託だけで飼育の質まで完全に管理できるわけではない

ペット信託によって飼育資金の管理方法を定めても、実際に愛犬や愛猫の世話をするのは飼育者です。そのため、信託を作っただけで、食事や通院、日々の接し方まで飼い主の希望どおりに行われることが保証されるわけではありません。
飼育者との契約において、受託者が飼育者から定期的に写真や通院記録の報告を受けることや、必要に応じて受託者や別の人がペットの様子を確認することを定める方法は考えられますが、日常の飼育状況を常に把握することには限界があります。また、報告や飼育条件を細かく定めすぎると、飼育者の負担が重くなり、引き受けてもらいにくくなる可能性もあります。

ペット信託をうまく運用するには、契約内容だけに頼るのではなく、まず、安心してペットを任せられる飼育者を選び、そのうえで、お互いが無理なく続けられる範囲で飼育状況を確認する方法を決めておくことが重要です。

まとめ ペット信託を検討する場合は、実行できる体制まで含めて設計する

ペット信託は、遺言書や負担付死因贈与によって飼育者へ資金を一括で渡す方法とは異なり、受託者が飼育資金を管理し、必要な時期に必要な金額を支払う仕組みを作ることができます。そのため、飼育費を長期にわたって計画的に管理しやすく、飼育者に多額の資金の管理まで任せずに済む点も特長です。ただし、ペット信託は一般的な遺言書の作成よりも設計が複雑であり、取り扱っている専門家や信託会社はまだ多くありません。
私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)グループでは、弁護士や税理士などが連携し、飼い主の希望やペットの状況に応じた設計を検討します。身近に受託者を任せられる人がいない場合には、ペット信託を取り扱う信託会社との連携も視野に入れ、実行可能な方法を検討します。愛犬や愛猫が安心して暮らせる仕組みを整えたい方はご相談ください。

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監修者:後藤 祐太郎
弁護士後藤 祐太郎

弁護士法人Nexill&Partners

弁護士後藤 祐太郎

  • 2010年
    日本大学法学部 卒業
  • 2012年
    慶應義塾大学大学院法務研究科 修了
  • 2014年
    竹口・堀法律事務所 入所
  • 2016年
    現:弁護士法人Nexill&Partners 入所 那珂川オフィス支店長 就任

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