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リバースモーゲージの相続時一括返済にどう対応する?子から親への貸付で実家を残す場合の注意点を弁護士が解説

2026.07.27

両親のうち一方が亡くなり、実家について利用していたリバースモーゲージの残債について、一括返済を求められることがあります。残された親が実家に住み続けるために、子が資金を用意して銀行へ返済する方法も考えられますが、そのお金の性質を曖昧にすると、贈与や相続時の精算をめぐって問題になる可能性があります。本記事では、子から残された親への貸付として整理する場合の注意点を弁護士が解説します。

第1章 リバースモーゲージは相続時に一括返済が問題になりやすい

1-1 死亡時に元金の返済が必要になることがある

リバースモーゲージとは、自宅不動産を担保にして金融機関から融資を受ける仕組みです。一般的な住宅ローンとは異なり、生前は利息のみを支払い、元金については契約者が亡くなった後に一括返済する形が取られます。
親が実家に住み続けながら生活資金を確保できる点では便利な制度ですが、相続の場面では注意が必要です。両親のうち一方が亡くなった場合、残された親がそのまま実家に住み続けたいと考えていても、金融機関から残債の一括返済を求められるためです。

1-2 相続人が返済できなければ、実家売却を迫られることがある

相続人が残債を一括返済できない場合、担保となっている実家を売却し、その売却代金で返済することになります。
もちろん、実家を売却して返済すること自体が常に悪いわけではありません。
しかし、残された親が実家に住み続けたい場合や、相続人としても実家をすぐに売却したくない場合には、銀行への一括返済にどう対応するかを早めに整理する必要があります。

ここでは、相続発生時に検討できる対応策の一つとして、子が資金を用意してリバースモーゲージの残債を返済し、その資金を残された親への貸付として整理する方法を考えます。

第2章 子から残された親への貸付でリバースモーゲージを返済する方法

2-1 子が親に貸し付け、その資金で銀行へ返済する

残された親にリバースモーゲージの残債を一括返済する資力がない場合、子が残された親にお金を貸し、その資金で銀行へ一括返済する方法が考えられます。
この場合の基本的な流れは、まず親子間で金銭消費貸借契約を締結し、子が親に返済資金を貸し付けます。そのうえで、親がその貸付金を使って銀行にリバースモーゲージの残債を返済し、必要に応じて担保権の抹消手続を進めるというものです。
その後、親は子に対して、契約で定めた条件に従って返済していきます。

ここで重要なのは、子が出したお金の性質を明確にすることです。
子が親のためにお金を出した場合でも、それが「贈与」なのか、「貸付」なのかが曖昧なままだと、後から税務上・相続上の問題が生じる可能性があるためです。

亡くなった親だけが契約者・債務者だった場合は整理が変わる

なお、亡くなった親だけがリバースモーゲージの契約者・債務者であり、残された親が連帯債務者や共同契約者になっていない場合には、銀行への残債は、基本的に亡くなった親の相続債務として整理することになります。
この場合、子が残された親に貸し付けるというよりも、相続人が相続債務をどのように返済するのか、実家を誰が取得するのか、残された親の居住をどのように確保するのかを検討する必要があります。そのため、まずは金融機関との契約内容を確認し、残された親がどのような立場で返済対応を求められているのかを確認することが重要です。

2-2 子が銀行に直接支払う場合は、貸付であることをより明確にする

実務上は、子が親の口座にいったん入金するのではなく、子の口座から銀行へ直接振り込む方法をとることもあります。
ただし、この方法をとる場合、外形上は、子が親の借金を肩代わりしたように見えやすくなります。そのため、子が残された親に貸し付け、その貸付金を銀行への返済に充てたという関係を、契約書や振込記録で客観的に残しておくことがより重要になります。

たとえば、金銭消費貸借契約書の中で、貸付金の使途をリバースモーゲージ残債の返済資金と明記し、銀行への振込日、振込額、振込先が分かる資料を保存しておくことが考えられます。

リバースモーゲージは金融機関ごとに返済ルールが異なる

リバースモーゲージは金融機関ごとに商品内容や返済ルールが異なります。
まずは、繰上返済ができるか、手数料がかかるか、返済後に担保権を抹消できるかなどを、金融機関へ確認したうえで進めることが大切です。

第3章 親子間貸付が贈与と判断されないための注意点

3-1 契約書を作るだけでは足りない

親子間でお金を貸し借りする場合、金銭消費貸借契約書を作成することは重要です。しかし、契約書を作れば必ず貸付として認められるわけではありません。
親族間のお金のやり取りは、第三者間の取引に比べて、実際には返済を予定していないにもかかわらず、形式だけ貸付としているケースもあります。そのため、税務上は、返済能力や返済状況などから見て、本当に金銭の貸借といえるかが問題になりやすいのです。
たとえば、契約書はあるものの、返済期限が決まっていない、利息の定めがない、実際の返済が一度も行われていないという場合には、実質的に贈与ではないかと疑われる可能性があります。
したがって、親子間貸付では、契約書・返済条件・返済実績をセットで整えることが重要になります。

3-2 返済期限・利息・返済方法を明確にする

親子間貸付で注意したいのが、「ある時払い」「余裕ができたら返す」「実家が売れたら返す」といった曖昧な定めです。
もちろん、親に十分な収入がない場合、すぐに元本返済を求めることが現実的でないこともあります。その場合には、残された親が実家に住み続けている間は利息のみを返済し、将来、施設入所や住み替えなどで実家を売却したときに元本を一括返済する設計も考えられます。

しかし、その場合でも、返済期限や返済方法を何も決めないままにしてはいけません。少なくとも、利息の有無や利率、元本を一括返済するタイミングを契約書に明記する必要があります。
また、無利息で貸し付けた場合、利息相当額の利益が贈与と見られる可能性がある点にも注意が必要です。金額や親の返済能力によっても判断は変わるため、利率をどう設定するかについては、税理士とも相談しながら検討することが望ましいでしょう。

3-3 返済実績を口座振込で残す

親子間貸付を贈与と見られないようにするためには、契約書だけでなく、実際に返済している事実を残すことが大切です。
当面は利息のみの返済とする場合でも、毎月または一定期間ごとに、親の口座から子の口座へ振り込む形にしておくと、返済実績を客観的に残しやすくなります。現金手渡しでは、後から返済の有無や金額を証明しにくくなるため、できる限り口座振込で管理することをおすすめします。

また、通帳の摘要欄やメモで、何の返済であるかを分かるようにしておくと、後日、税務署や他の相続人に説明する際にも役立ちます。
親子だからといって、口約束だけで済ませてしまうと、相続発生後に他の相続人から「本当に貸付だったのか」と争われる可能性もあります。将来のトラブルを防ぐためにも、記録を残す意識が重要です。

第4章 残された親が住み続けた後に売却・精算する場合の契約設計

4-1 売却代金が貸付元本を下回るリスクがある

売却時一括返済とする場合には、売却代金だけで子への貸付金を全額返済できるとは限りません。売却までの間に不動産価格が下落したり、建物の老朽化によって売却価格が想定より低くなったりする可能性があるためです。
また、売却時には仲介手数料や登記費用、残置物処分費用、修繕費用などがかかることもあり、実際に返済に回せる金額が売却価格より少なくなることも考えられます。

そのため、売却時一括返済を前提にする場合には、現在の不動産価格だけで判断するのではなく、将来の価格下落や売却費用も見込んだうえで、貸付金額や返済時期を現実的に設計しておくことが重要です。

4-2 売却時期や死亡時の処理を曖昧にしない

返済期限を「実家を売却したら返す」とするだけでは、契約内容として十分とはいえません。いつ売却するのか、売却しない場合はどうするのか、残された親が亡くなった場合に貸付金をどのように扱うのかが曖昧になるためです。
たとえば、親が施設に入所して実家に戻る見込みがなくなった場合や、一定期間が経過した場合など、どのような場面で売却や元本返済を検討するのかを契約書上で整理しておくことで、貸付契約としての客観性を高めることができます。

また、残された親が亡くなった時点で貸付金が残っている場合、その貸付金は残された親の債務として、二次相続の場面で問題になります。相続税の計算上、被相続人の借入金などは債務控除の対象となり得ますが、親子間貸付について債務として説明する場面でも契約書や返済実績などの資料が重要になります。

第5章 家族信託を組み合わせると、将来の売却・管理に備えやすい

5-1 親の判断能力低下後も不動産管理を進めやすくなる

リバースモーゲージを完済し解約した後も、実家の管理問題は残ります。親が元気なうちはよくても、将来、認知症などで判断能力が低下すると、売却や修繕・管理などの手続が難しくなるためです。
このような場合、残された親に判断能力があるうちであれば、家族信託を検討できることがあります。
家族信託とは、親の財産を信頼できる家族に託し、あらかじめ定めた目的に従って管理・処分してもらう仕組みです。
たとえば、残された親を委託者兼受益者、子を受託者として、実家を信託財産に入れることで、残された親が住み続ける間は居住を確保し、将来施設に入所した場合などには、受託者である子が実家の売却を進められる設計が考えられます。

5-2 親子間貸付と家族信託は、遺言書との整合性も踏まえて設計する

家族信託を利用する場合には、親子間貸付や遺言書との整合性も確認しておく必要があります。
たとえば、信託契約では残された親の死亡後に実家を子へ帰属させる内容になっている一方で、遺言書では別の相続人に実家を相続させる内容になっていると、二次相続の場面で財産の承継方法をめぐって混乱が生じる可能性があります。また、子が親に貸し付けた金額を売却代金から返済する予定であっても、そのことが遺言書や信託契約に反映されていなければ、他の相続人から不公平だと主張されることも考えられます。
そのため、家族信託を組む場合には、実家の管理や売却だけでなく、残された親が亡くなった後に誰が財産を取得するのか、子への貸付金をどのように精算するのかまで含めて、遺言書と矛盾しない形で設計することが重要です。

まとめ リバースモーゲージの整理は、親の生活と次の相続まで見据えて整理する

リバースモーゲージを利用していた実家について、一方の親が亡くなった場合、銀行への一括返済と残された親の生活をどのように両立させるかが問題になります。子が資金を用意して銀行へ返済する方法も考えられますが、そのお金の性質を曖昧にしたまま進めると、贈与なのか貸付なのか、将来どのように精算するのかをめぐって問題になる可能性があります。
特に、残された親が実家に住み続けるために子が資金を出す場合には、金銭消費貸借契約書を作成し、返済条件や返済実績を客観的に残しておくことが重要です。また、残された親が将来施設に入所した場合や亡くなった場合に備えて、実家の売却、貸付金の精算、遺言書や家族信託との整合性まで整理しておく必要があります。
私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)グループでは、弁護士・税理士・司法書士などが連携し、リバースモーゲージを利用している不動産の相続対策、親子間の金銭消費貸借契約、贈与税・相続税の確認、家族信託や遺言書の作成まで一体的にサポートしています。残された親の住まいや実家の扱いに不安がある方は、早めに一度ご相談ください。

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監修者:松﨑 洋二
弁護士松﨑 洋二

弁護士法人Nexill&Partners

弁護士松﨑 洋二

  • 2015年3月
    私立九州学院高等学校 卒業
  • 2015年4月
    福岡大学法学部 法律学科 入学
  • 2018年3月
    福岡大学法学部 法律学科 早期卒業
  • 2018年4月
    福岡大学法科大学院 入学
  • 2021年3月
    福岡大学法科大学院 修了
  • 2025年4月
    弁護士法人Nexill&Partners 入所

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