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コラム

相続した不動産に抵当権がついていた場合|家の解体や処分を進めるにはどのような手続きが必要か弁護士が解説

2026.06.23

相続した実家などの不動産を処分、あるいは建物を解体しようとした際、登記簿に抵当権が残っていることが分かるケースがあります。抵当権が設定されたままの不動産は、原則としてそのまま解体したり売却したりすることが困難ですが、手続をどのように進めればよいのでしょうか。住宅ローンが残っている場合と、先祖の古い抵当権が残っている場合に分けて、解体や処分を進めるための手続きを弁護士が解説します。

第1章 なぜ抵当権がついた不動産は解体・処分できないのか

1-1 抵当権は不動産を担保にするための権利

抵当権とは、住宅ローンなどの借入れを担保するために、土地や建物に設定される権利です。
たとえば、親が住宅ローンを組んで実家を購入した場合、金融機関は、返済が滞ったときに備えて、その土地や建物に抵当権を設定するのが通常です。返済ができなくなった場合、金融機関はその不動産を競売にかけ、売却代金から優先的に回収することができます。

重要なのは、不動産の所有権が誰に移転しようとも、抵当権は当然には消えないという点です。そのため、相続によって実家の所有権が子に移ったとしても、設定されている抵当権が自動的に消えることはありません。

1-2 無断で解体・売却すると金融機関とのトラブルになる可能性がある

抵当権が設定されている建物を、金融機関など債権者に無断で解体することは、法的に大きな問題を引き起こします。
特に、住宅ローンが残っている場合、ローン契約や抵当権設定契約において担保物の価値を減少させる行為が禁止されていることが一般的です。
無断で建物を解体すれば、契約違反として期限の利益を喪失し、残債務の一括返済を求められる可能性があります。売却に関しても、買い手は通常、他人の抵当権がついたままの不動産を好まないため、実務上、抵当権の抹消は売買の前提といえます。

第2章 まずは登記簿で抵当権の内容を確認する

相続不動産に抵当権がついていることが分かった場合、最初に行うべきは、その抵当権がどのような性質のものであるかを正確に把握することです。状況によって、その後に取るべき法的手続きが変わるためです。

2-1 登記簿の「権利部(乙区)」を確認する

不動産の詳細な情報を確認するには、まず、法務局で「登記事項証明書(いわゆる登記簿謄本)」を取得する必要があります。
不動産の登記簿は主に、「表題部」「権利部(甲区)」「権利部(乙区)」に分かれており、抵当権に関する情報は「権利部(乙区)」に記載されています。

乙区を確認する際は、少なくとも次の項目を確認しましょう。

  • 抵当権が設定された日付
  • 債権額(いくら借りたか)
  • 債務者(誰が借りたか)
  • 抵当権者(誰が貸したか、金融機関名や個人名)
  • 抵当権が土地についているのか、建物についているのか

これらの記載内容を確認することで、次の2つのパターンのどちらに近いかを把握しやすくなります。

2-2 パターン1:平成・令和に設定された住宅ローンの抵当権

抵当権の設定日が平成・令和で、抵当権者が現在も存在する銀行や信用金庫、保証会社などであれば、一般的な住宅ローンや事業資金の借入れに伴う抵当権である可能性が高いです。
この場合は、債権者が明確であるため、残債の有無を確認して清算手続きを進めることになります。

2-3 パターン2:明治・大正・昭和初期に設定された先祖の抵当権(休眠抵当権)

一方で、登記簿に明治・大正・昭和初期の日付が記載され、債権額も「金百円」など現在の感覚とは大きく異なる記載がされている場合があります。抵当権者に、すでに解散した組合や、見知らぬ個人の名前が記載されていることもあるでしょう。このように長期間放置されている古い抵当権は、実務上「休眠抵当権」と呼ばれます。
しかし、どれほど古い抵当権であっても、登記簿から抹消しない限り、土地や建物の解体・売却の支障になることがあります。

第3章 【パターン1】住宅ローンなど現代の抵当権が残っている場合の手続き

平成や令和に設定された一般的な住宅ローンの抵当権であった場合、まずローン残高の有無を確認し、残債がある場合には清算したうえで、抵当権を抹消する必要があります。

3-1 不動産の名義を被相続人から相続人へ変更する(相続登記)

不動産を売却したり、抵当権抹消手続きを進めたりするには、前提として、現在の所有者が誰であるかを登記上明らかにする必要があります。
そのため、被相続人名義のままになっている場合は、遺言書や遺産分割協議の内容に基づき、相続登記を行います。
相続人間で誰が不動産を取得するか決まっていない場合は、先に遺産分割協議を行う必要があります。売却して代金を分ける予定であっても、誰の名義で売却手続きを進めるのかを整理しておくことが重要です。

3-2 団体信用生命保険(団信)の加入有無を確認する

住宅ローンの場合、住宅ローンの債務者であった被相続人が団体信用生命保険、いわゆる団信に加入していることがあります。団信とは、住宅ローンの債務者が死亡した場合などに、保険金によって住宅ローン残高が弁済される仕組みです。

3-2-1 団信が適用されればローンが完済される

団信が適用される場合、保険会社から金融機関に保険金が支払われ、住宅ローンは完済されます。その後、金融機関から抵当権抹消登記に必要な書類が交付されるため、それを使って抵当権抹消登記を行います。これにより登記簿上も抵当権が残っていない状態にすることができます。

3-2-2 登記簿上の抵当権者に連絡して団信の有無を確認する

ただし、団信の適用は自動的には行われないことが多いため、相続人が抵当権者に連絡して進めるのが通常です。
まずは登記事項証明書の権利部(乙区)に記載されている抵当権者を確認し、その金融機関や保証会社等に連絡して、団信の加入有無、団信が適用される場合の手続き、抵当権抹消に必要な書類等を確認します。

3-3 住宅ローンが残る場合は返済方法を決める

団信に加入していなかった場合や、何らかの理由で団信が適用されない場合には、相続放棄等をしない限り、住宅ローン債務も相続人に承継されます。
この状態で不動産を処分するには、以下の方法を検討します。

3-3-1 手元資金で完済して抵当権を抹消する

相続した現預金や、別途受け取った生命保険金などでローンを完済できる場合は、金融機関に残債を一括返済し、抵当権抹消書類を受け取ります。完済すれば、金融機関から解除証書や弁済証書といった抹消用書類が発行され、速やかに抵当権を消すことができます。

3-3-2 不動産の売却代金で完済する

手元資金での完済が難しい場合は、不動産を売りに出し、その買主から支払われる売却代金をもってローンを完済し、その場で抵当権を抹消する方法もあります。ただし、売却代金よりもローン残高の方が多い場合は、通常の売却が難しいため、金融機関の承諾を得たうえで任意売却を検討することになります。

3-4 ローンが残ったまま解体する場合は金融機関の承諾を得る

売却ではなく、先に建物を解体したい場合は、金融機関への事前相談が必要です。
その場合、金融機関に対して、解体によって建物の担保価値は失われるものの、土地が引き続き担保として残ること、また解体後も引き続きローンを遅滞なく返済していく意思や計画があることを説明する必要があります。場合によっては、他の資産を担保に入れたり、保証人を追加したりすることを求められるケースもあります。

第4章 【パターン2】先祖の古い抵当権(休眠抵当権)だった場合の手続き

明治・大正・昭和初期の古い抵当権が残っている場合、現在の金融機関に連絡して抹消書類をもらう、という通常の方法は使えないことが多いです。
そのため、登記簿の内容や抵当権者の状況に応じて、抹消ルートを検討する必要があります。

4-1 休眠抵当権を放置すると売却・融資・処分の支障になる

古い抵当権は、実体としてはすでに意味を失っていることも少なくありません。
しかし、不動産登記上は、抹消登記をしない限り抵当権が残り続けます。
そのため、不動産会社が売却活動を進めにくくなったり、買主側の金融機関が融資を断ったりすることがあり、事実上、処分が難しくなることが多いといえます。

4-2 供託による簡易な抹消手続きが使える場合がある

休眠抵当権のうち、一定の要件を満たすものについては、供託を利用して、所有者側だけで抹消登記を申請できる場合があります。

4-2-1 供託を利用できるかは事前調査が必要

供託による抹消を利用するためには一定の要件を満たす必要があり、代表的なものとして、以下が挙げられます。

  • 登記簿上の抵当権者、またはその相続人の所在が分からないこと
  • 被担保債権の弁済期(返済期日)から20年以上が経過していること
  • 債権の元本、利息、および弁済期以後の遅延損害金の全額に相当する金銭を、法務局の供託所に供託すること
4-2-2 古い「100円」は現在価値に換算しない

債権の元本・利息・遅延損害金の全額を供託する、と聞くと相当額の支払いを想像するかもしれませんが、この手続きにおける供託金額の計算は、物価変動の補正を行わず、登記簿に記載されている当時の額面のまま計算します。
例えば、明治時代に設定された債権額が「100円」であった場合、当時の年利や遅延損害金を加算しても、供託額は比較的少額で済むこともあります。供託による抹消を利用できる可能性がある場合は、登記簿上の債権額を基礎に、利息や損害金を含めた供託額を確認してみましょう。

4-3 抵当権者の相続人と共同で抹消する方法

供託による抹消が使えない場合は、原則どおり、抵当権者またはその相続人の協力を得て、抵当権の抹消を行う方法を検討します。

4-3-1 戸籍をたどって相続人を調査する

抵当権者が個人の場合、その人がすでに亡くなっていれば、相続人を調査する必要があります。明治・大正・昭和の戸籍、除籍、改製原戸籍をたどり、現在の相続人を特定していく作業になります。長期間放置された抵当権では、相続が何代にもわたって発生しており、関係者が多数に増えていることもあります。

4-3-2 抵当権者側の相続人全員から承諾と押印を得る際の注意点

戸籍をたどり抵当権者の相続人が判明したとしても、全員が協力してくれるとは限りません。突然、見知らぬ人から不動産の抵当権抹消に協力してほしいと連絡を受けるため、不信感を持たれることもあります。印鑑証明書や実印の押印を求める場合もあるため、説明の仕方を誤ると警戒されたり、協力の見返りとして金銭を求められたりすることもあり得ます。実務上は時間と労力がかかりやすい方法といえます。

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4-4 協力が得られない場合は裁判で抹消を求める

供託による抹消が使えず、抵当権者側の協力も得られない場合には、抵当権抹消登記請求訴訟が検討されます。

消滅時効の完成・援用などを主張して抹消を求める方法

具体的には、現在の所有者である相続人が原告となり、抵当権者(またはその相続人)を被告として「抵当権抹消登記請求訴訟」を起こします。裁判では、借入から相当な期間が経過しており、被担保債権について消滅時効が完成し時効を援用できること、あるいは過去に完済済みであることを法的に主張・立証します。
被告が裁判に出席しない、あるいは反論がない場合でも、原告側で必要な主張立証を行い、それが認められれば、勝訴判決を得ることができます。この確定判決書を法務局に持参すれば、相手方の協力を得ることなく、相続人が単独で抵当権を抹消することが可能になります。

第5章 先祖の抵当権抹消や不動産の処分を専門家に依頼すべき理由

ここまで確認した通り、相続した不動産に付いている抵当権を消去し、解体や処分を進めるための方法は法的に確立されています。しかし、これらを専門家なしに進めるのは簡単ではありません。

5-1 明治・大正時代の手書きの古い戸籍を解読し、追跡する難しさ

休眠抵当権では、古い戸籍や閉鎖登記簿を確認する必要があります。
明治・大正時代の戸籍は、手書きの文字や旧字体が使われており、正確に読み解くのは容易ではありません。読み間違いや相続人の見落としがあると、抹消登記や裁判の手続きに支障が出る可能性があります。

5-2 金融機関・法務局・裁判所との対応が必要になる

住宅ローンが残っている場合は、金融機関との協議が必要です。解体の承諾、任意売却、残債務の返済方法などを整理しなければなりません。
一方、休眠抵当権の場合は、法務局への登記申請、供託所での供託、裁判所での訴訟などが必要になることがあります。それぞれ必要書類や判断基準が異なるため、最初の段階で手続きの見通しを立てることが大切です。

5-3 解体・売却・登記・税金まで見据えて進める必要がある

抵当権を抹消することで終わるわけではありません。
多くの場合、その先に、実家の解体や土地の売却、譲渡所得税や相続税の検討があります。抵当権だけを見て手続きを進めると、売却時期や税務申告、相続人間の分配で別の問題が生じることがあります。
そのため、相続した不動産を最終的にどうしたいのかを整理したうえで、弁護士や司法書士、税理士、不動産業者が連携して進めることが重要になります。

第6章 まとめ

相続した不動産に抵当権が残っている場合、内容によって法務局や裁判所、金融機関を巻き込んだ複雑な手続きが必要となり、想定以上の時間と労力がかかることがお分かりいただけたかと思います。
もし、どこから手をつければよいか、あるいは誰に相談すべきか迷われた際は、私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)グループへお気軽にお声がけください。
当グループは、弁護士法人、司法書士法人、税理士法人などが一つのグループとして連携し、相続に関するあらゆる課題をワンストップで解決できる体制を整えております。実家の処分や古い抵当権の問題でお悩みの際は、どうぞ私たちにご相談ください。

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監修者:後藤 祐太郎
弁護士後藤 祐太郎

弁護士法人Nexill&Partners

弁護士後藤 祐太郎

  • 2010年
    日本大学法学部 卒業
  • 2012年
    慶應義塾大学大学院法務研究科 修了
  • 2014年
    竹口・堀法律事務所 入所
  • 2016年
    現:弁護士法人Nexill&Partners 入所 那珂川オフィス支店長 就任

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