| 年齡 | 60代 |
|---|---|
| ご相談者様の状況 | 被相続人の息子・娘 |
| 遺産の種類 | 不動産・現金・預貯金 |
| ご相談分野 | 遺留分侵害額請求 |
| 担当弁護士 | 池本 稔洋 |
| 解決までの期間 | 約5ヵ月 |
ご相談時のご状況
相談者は両親の相続人として、自身と疎遠の兄の2名のみでした。父は生前に公正証書遺言を作成し、全財産を相談者に相続させる内容で、相談者は遺言執行者にも指定されていました。一方、母には遺言がなく、財産もほとんどありませんでした。両親は2022年に自宅を売却し、その売却代金を用いて施設に入居し、月々の利用料を支払っていました。相談者は父から生前に少しずつ現金を受け取り、看取りや死後の手続きもすべて自ら行っていました。
しかし、父の死後、疎遠の兄が代理人弁護士を立てて遺留分侵害額請求を行うとの通知が届き、相談者は突然の請求に大きな不安を抱えました。これまで父の遺志を尊重してきた相談者としては、遺言通りに手続きを進めたい一方で、法的な紛争に発展する可能性に直面し、迅速かつ適切な対応が求められる状況でした。
解決に向けた当事務所のアドバイス・対応
当事務所は相談者の代理人として受任通知を送付し、まず遺言の効力や法的状況を整理しました。父の公正証書遺言に基づき、全遺産は相談者が相続すること、遺言執行者として相談者が手続きを進めることが法的に定められており、遺産分割協議の対象にはならないことを明確にしました。
次に、兄からの遺留分請求について詳細を確認しました。被相続人の遺産は主に預貯金であり、合計約2,000万円が存在するに過ぎませんでした。一方、兄は生前に父から借入金返済の原資として、反復かつ多額の金銭贈与を受けており、その総額は数億円に上ります。これらの生前贈与は特別受益として評価されるため、法的には遺留分侵害額請求権が成立する余地はありません。こうした事実を整理し、兄の請求に対する法的根拠を文書で明示しました。
さらに、紛争を早期に終わらせ、精神的・時間的負担を最小化する観点から、交渉による解決案も検討しました。具体的には、相談者の法的立場を維持したうえで、解決金を提示することで円満に事案を終結させる提案を行いました。これにより、法的紛争に発展するリスクを軽減し、相談者の負担を抑える対応をとることができました。
解決にあたってのポイント
本件では、遺留分請求が行われた側としての対応が重要となりました。ポイントは以下の通りです。まず、公正証書遺言の効力を確認し、遺産分割協議の対象ではないことを明確にすることで、法的根拠に基づく立場を整理しました。次に、兄が生前に受けた多額の贈与を特別受益として考慮することで、遺留分請求権が成立しないことを示しました。また、受任通知や文書による説明で代理人への伝達を明確化し、後の紛争防止にも配慮しました。さらに、解決金の提示など、交渉による柔軟な解決策を検討することで、迅速かつ円満な解決を実現しました。
この事例は、公正証書遺言がある相続で遺留分請求を受けた場合でも、法的立場を整理し、特別受益の考慮や交渉を組み合わせることで、紛争を最小限に抑え、円滑に相続手続きを進められることを示しています。