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コラム

遺言書があとから見つかったらどうする?遺産分割協議のやり直しや遺言執行者がいる場合の注意点について弁護士が解説

2026.04.28

相続手続を進めている途中や、すでに遺産分割が終わった後に、遺言書があとから見つかることがあります。このような場合、これまでの話し合いが無効になり、手続もやり直さなくてはならないのでしょうか。今回は、遺言書があとから出てきた場合の法的な扱いと、遺産分割協議の進行状況ごとの対応について、弁護士がわかりやすく解説します。

第1章 遺言書が出てきたら遺産分割協議はどうなる?原則と例外の整理

遺産分割の話し合いがまとまりかけた、あるいは既に終わったというタイミングで遺言書が発見されることがあります。まずは、法的に遺言書がどのような立ち位置にあるのか、その基本原則を整理しましょう。

1-1 民法上は遺産分割協議よりも遺言書の内容が優先される

民法上、相続においては被相続人の意思が尊重されるため、遺言書が存在する場合には、その内容が原則として優先されます。したがって、遺言書の存在を知らずに遺産分割協議を進めていた場合であっても、あとから遺言書が見つかれば、その内容が前提となる可能性があります。
もっとも、見つかった遺言書が直ちに優先され、遺産分割協議がすべて無効になるとも限りません。いずれにせよ、遺言の存在が判明した時点で、その内容との関係を整理する必要があります。

1-2 相続人と受遺者全員の合意があれば例外として遺言書の内容とは違う分け方も可能

遺言書がある場合でも、必ずその内容どおりに遺産を分けなければならないわけではありません。相続人と受遺者を含めた関係者全員が、遺言とは異なる分け方に合意している場合には、遺産分割協議によって相続手続を進めることも可能です。
ただし、相続人および受遺者のうち一人でも遺産分割協議書に合意しない場合にはこの方法は取れず、遺言の内容を通りに遺産分割を行い、相続手続を進める必要があります。

1-3 見つかった遺言書の種類(自筆証書・公正証書)による初動の違い

遺言書があとから出てきた際、まず確認すべきはその種類です。形式によって、その後の法的な手順が異なります。

公正証書遺言の場合

公証役場で作成されたもので、偽造の可能性が低く、もっとも確実な遺言書です。発見されたら、すぐにその内容に従った手続の検討に入ることができます。

自筆証書遺言の場合

故人が手書きした遺言書です。この場合、法務局の遺言書保管制度を利用していない限り、家庭裁判所での検認手続が必須となります。検認とは、遺言書の状態を確認し、偽造や変造を防止するための手続です。これを受けていない自筆証書遺言では、不動産の登記変更や銀行口座の払い戻しといった具体的な手続を進めることができないのが通常です。
なお、封印のある遺言書を家庭裁判所以外で勝手に開封することは法律で禁じられており、検認をせずに開封すると5万円以下の過料を科される可能性があります。手書きの遺言書を見つけた場合には、必ず家庭裁判所の検認を行うように注意してください。

第2章 遺言の中で遺言執行者が指定されている場合も相続人の合意があれば遺言通りに分けなくてよいのか?

2-1 遺言執行者=遺言書の内容通りに相続手続を行う役割

見つかった遺言書の中で遺言執行者が設定されていた場合は、その後の相続手続の進め方に注意が必要です。
遺言執行者とは、遺言の内容を具体的に実現するために必要な権限を与えられた人のことをいいます。相続人の一人が選ばれるケースもあれば、弁護士や司法書士などの専門家が指定されているケースもあります。
遺言執行者が選任されている場合には、不動産の名義変更や預貯金の解約といった具体的な相続手続は、原則として遺言執行者が行うこととなり、相続人はそれを妨げることができないとされています。

2-2 遺言執行者がいても任意での遺産分割協議を実行したい場合の対応

遺言書が存在し、かつ遺言執行者が就いている場合でも、相続人と受遺者の全員が遺言とは別の分け方をしたいという希望を持っているケースもあります。
その場合、最も現実的なのは、まず遺言執行者に事情を説明し、相続人および受遺者全員が遺言とは異なる遺産分割内容で相続手続を進めたいと考えていることを伝えたうえで、同意を得る方法です。関係者全員の意思が一致しており、遺言執行者もその処理に異論がないのであれば、その内容を改めて遺産分割協議書として書面化し、遺言執行者が手続を進めることが考えられます。
これに対し、遺言執行者が辞任するという方法もあります。ただし、遺言執行者の辞任は家庭裁判所で遺言執行者辞任許可の申立てが必要となります。辞任が許可され、遺言執行者が辞任した場合には、相続人および受遺者全員の合意があれば、通常の遺産分割協議として手続を進めることが可能になります。

第3章 遺言書が見つかったタイミングによる手続の影響は?(遺産分割協議中・協議完了後)

3-1 遺産分割協議中に遺言書が見つかった場合は一旦話し合いを止める

まだ遺産分割協議書を作成していない段階であれば、まずは一度話し合いを中断し、遺言の内容を確認し、誰がどの財産を取得する権利を持っているのか、指定相続分を把握し直します。
その状態で、このまま遺言書通りに財産を分ける方向でよいのか、遺言内容とは違う分け方で全員合意できるならその方向でいくのかを改めて協議する必要があります。
協議の結果、遺言書に記載された分け方で遺産分割をすることになったら、その後の相続手続も遺言書を使用して進めることになります。

3-2 遺産分割協議が完了した後に遺言書が見つかった場合の法的な扱い

既に遺産分割協議書を作成し、押印まで済ませている場合でも、遺言の存在を知らなかったことを理由に協議の無効や取り消しが問題となる可能性があります。実務上は、改めて相続人全員で集まり、既成の合意内容を維持するか、遺言に従って白紙撤回してやり直すかを話し合うことになります。

3-3 相続手続(不動産登記や預貯金の払戻しなど)まで終わっている場合の対応

既に不動産の名義変更や預貯金の払戻しなどの相続手続まで終わっている場合で、遺言書の内容にて遺産分割をやり直す場合には、登記内容の修正(更正登記など)や既に払い戻しがされた金銭について相続人間での返還や精算などの手続が必要です。
また、これらの修正に伴い、相続税申告内容の修正や追加の税負担が生じる可能性もありますので、そちらも併せて対応を行うように注意が必要です。

3-4 第三者に遺産が売却・譲渡されていた場合の権利関係

相続人が取得した不動産を既に第三者に売却している場合には、さらに状況が複雑になります。
原則として、遺言の存在を知らずに取引を行った第三者との関係では、その取引の効力が維持されると考えられています。そのため、当該不動産を第三者から取り戻すことは困難となるのが一般的です。
このような場合には、遺言によって本来その財産を取得するはずであった相続人が、売却した相続人に対して、代金相当額の支払いを求めるなど、相続人間での金銭的な調整によって解決を図ることになります。
もっとも、個別の事情によっては対応が異なる場合もあるため、具体的な対応方針については弁護士と相談の上で進められるのが望ましいでしょう。

第4章 【FAQ】遺言執行者に関するよくある疑問

Q1. 相続人全員が合意していれば、遺言執行者に連絡しなくてもいいですか?

A1. 罰則はないですが、後から問題になる可能性があります。

相続が発生したことを遺言執行者に連絡しないこと自体について、直ちに刑罰が科されるような規定はありません。ただし、問題がないという意味ではありません。連絡をせずに手続を進めた場合、後から遺言執行者が相続が発生したことを知った場合、遺言どおりに手続をやり直すよう求められ、不動産登記や預貯金の払戻しについて修正や精算が必要になる可能性があります。

Q2. 遺言執行者がいるのに無視して進めた場合、後からバレることはありますか?

A2. 後から発覚するケースは珍しくありません。

相続手続の段階では問題なく進んだとしても、その後の不動産売却や二次相続、税務調査などの場面で過去の手続が確認され、遺言執行者の存在が問題になることがあります。また、後になって一部の相続人の考えが変わり、遺言の内容を前提とした分割を行うために、
遺言執行者に相続が発生していたことを連絡することで問題が顕在化するケースもあります。

第5章 まとめ|遺言書があとから見つかった場合の適切な判断と進め方

遺言書があとから見つかった場合でも、相続人および受遺者の全員が合意していれば、遺産分割協議の内容で相続を進められる可能性はあります。しかし、実際には、遺言書の存在をきっかけに相続人の考え方が変わるケースも少なくありません。また、遺言執行者が指定されている場合にはさらに状況が複雑になることもあり、円満に終わるはずだった相続が、遺言書の発覚を機に紛争に発展してしまうこともあります。
こうしたトラブルを避けるためには、早い段階で法的な観点から状況を整理し、適切な対応を判断することが重要です。そのための手段として、弁護士を含めた専門家が関与し、手続の進め方や合意内容を適切に設計することも有効な選択肢の一つといえます。
私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)グループでは、弁護士・税理士・司法書士・行政書士が連携し、遺言書発見後の対応や手続の整理を一体でサポートしています。相続手続の進め方に不安がある場合には、お気軽にご相談ください。

 

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監修者:池本 稔洋
弁護士池本 稔洋

弁護士法人Nexill&Partners

弁護士池本 稔洋

  • 2017年3月
    兵庫県立星陵高等学校 卒業
  • 2021年3月
    神戸大学法学部 法律学科 卒業
  • 2023年3月
    神戸大学法科大学院 修了
  • 2025年4月
    弁護士法人Nexill&Partners 入所

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