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コラム

遺産を寄付すると相続税はどうなる?相続人が確認したい非課税特例・申告手続きを弁護士・税理士が解説

2026.10.20

家族が亡くなり、遺産の全部または一部を寄付することになった場合、その財産に相続税はかかるのでしょうか。相続税の取扱いは、寄付先が遺言によって直接財産を取得するのか、相続人がいったん財産を取得した後に寄付するのかによって異なります。
本記事では、遺産を寄付する場合の相続税上の扱いや非課税特例の適用条件について弁護士・税理士が解説します。

第1章 遺産を寄付するときの相続税は「誰が財産を取得して寄付するか」で変わる

遺産を寄付する場合の相続税を考えるときは、まず「寄付する財産を誰が取得するのか」を確認します。大きく分けると、遺言によって寄付先へ直接財産を遺贈する場合と、相続人がいったん財産を取得した後に寄付する場合があります。この違いによって、相続税の考え方も変わります。

1-1 遺言で寄付先へ直接遺贈する場合

たとえば、父の遺言書に「預金1,000万円を○○公益財団法人へ遺贈する」と記載されていたとします。
この場合は、遺言によって寄付先が直接その財産を取得することになるため、その1,000万円は相続人の課税価格には算入されません。

1-2 相続人が財産を相続した後に寄付する場合

一方、相続人が財産を取得した後、故人の希望などを踏まえて公益法人等へ寄付するケースもあります。この場合には、相続人がいったん財産を相続することになるため、原則としてその財産も相続税の計算対象になります。

ただし、相続や遺贈によって取得した財産を、相続税の申告期限までに、国や地方公共団体、一定の公益法人、認定NPO法人などへ寄付した場合には、一定の要件を満たすことで、その財産を相続税の課税対象としない特例があります。

第2章 相続した遺産を寄付すると相続税が非課税になる場合がある

2-1 一定の寄付は相続税の課税対象から外すことができる

相続した財産を一定の公益法人等へ寄付した場合には、租税特別措置法上の特例により、寄付した財産を相続税の課税価格に含めずに計算できます。

たとえば、法定相続人が3人で、相続税の課税価格に算入される財産が5,000万円あり、そのうち500万円を、この特例の対象となる法人へ寄付したとします。後述する非課税特例の要件を満たす場合には、この寄付した500万円を相続税の課税価格に算入せずに計算できます。
つまり、課税価格の合計額は4,500万円(5,000万円-500万円)となります。

法定相続人が3人の場合、相続税の基礎控除額は、
3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円 です。
そのため、この例では課税価格の合計額4,500万円が基礎控除額4,800万円を下回り、相続税は発生しません。

相続税の基礎控除の計算の仕方と”法定相続人”の数え方で気を付けるべきポイント

非課税特例を利用するには相続税の申告が必要

ただし、この非課税特例は、寄付をしただけで当然に適用されるものではありません。2-2で解説する非課税特例の要件を満たしたうえで、特例の適用を受けるための相続税申告が必要です。

2-2 非課税特例を使うための3つの要件

2-1の例では、寄付額を課税価格から外すことで、課税価格の合計額が基礎控除額を下回り、相続税が発生しない結果となりました。ただし、相続した財産を寄付すれば、必ずこのような取扱いを受けられるわけではありません。

寄付した財産を相続税の計算対象から外すには、主に次のような非課税特例の要件を満たす必要があります。

1. 寄付する財産が、相続や遺贈によって取得した財産であること
2. 相続税の申告期限までに寄付すること
3. 国、地方公共団体、独立行政法人、公益社団法人・公益財団法人、一定の学校法人、社会福祉法人など、法律で定められた寄付先へ寄付すること
寄付後2年以内の法人資格や財産の使途にも注意が必要

ただし、非課税特例は寄付した時点で要件を満たしていれば必ず確定するわけではありません。寄付先の公益法人が寄付を受けた日から2年以内に特例の対象となる法人に該当しなくなった場合や、寄付された財産をその公益を目的とする事業に使用しない場合などには、特例が適用されなくなる可能性があります。
認定NPO法人についても、寄付後の一定期間について所定の要件が設けられています。

そのため、寄付先を選ぶ際には、現在の法人資格だけでなく、寄付した財産がどのように使用される予定かについても確認しておくことが大切です。

2-3 寄付先がNPO法人なら何でも非課税になるわけではない

寄付先がNPO法人や公益的な活動を行う団体だからといって、すべて相続税の非課税特例を利用できるわけではありません。

NPO法人への寄付でこの特例を利用するには、寄付先が所轄庁の認定を受けた「認定NPO法人」であり、その法人が行う特定非営利活動に係る事業に関連する寄付であることなどの要件があります。特例の対象となる「特定の公益法人」についても、公益社団法人・公益財団法人、一定の学校法人、社会福祉法人など、対象となる法人が法律上定められています。

寄付先が対象法人かは公的な情報で確認する

寄付先が特例の対象となるかは、寄付先への確認だけで判断せず、公的な情報からも確認しておきましょう。公益社団法人・公益財団法人については国・都道府県公式の「公益法人information」、認定NPO法人については内閣府の「NPO法人ポータルサイト」で検索できます。
公的なサイトだけで判断できない場合には、寄付先を所管する行政庁へ問い合わせたり、税務署や税理士に確認したりしたうえで、寄付を実行するとよいでしょう。

第3章 相続財産を寄付するときに間違いやすい相続税のポイント

3-1 相続した財産を売却し、その代金を寄付すると非課税特例を使えない

相続財産の寄付を検討するとき、相続した財産を換価して寄付する場合には注意が必要です。
たとえば、相続した土地を公益法人へそのまま寄付した場合には、その他の要件も満たせば非課税特例の対象となります。
一方、その土地を相続人が売却し、売却代金を公益法人へ寄付した場合には、土地そのものを寄付したことにはならず、非課税特例の対象にはなりません。これは株式についても同様です。
そのため、不動産や株式などを相続し、その売却代金での寄付を予定している場合には、売却前に税務上の扱いを確認しておく必要があります。

3-2 申告期限を過ぎてから寄付しても特例は使えない

もう一つ重要なのが期限です。
この非課税特例を利用するには、相続税の申告期限までに寄付を完了している必要があります。相続税の申告期限は、原則として被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。

寄付を予定している場合は相続税の申告期限から逆算して進める

相続財産を寄付する予定がある場合には、相続税の申告期限から逆算して手続を進めましょう。相続税申告までの基本的な流れは、次のとおりです。

①遺言・相続財産・相続人を確認する
②寄付先を決め、非課税特例の対象となるか、寄付する財産を受け入れてもらえるか確認する
③必要に応じて遺産分割協議を行い、寄付する財産を取得する相続人を確定する
④相続した財産を寄付し、寄付先から相続税申告に必要な証明書等を受け取る
⑤非課税特例を反映して、相続税の申告期限までに申告する

非課税特例を利用する場合、寄付する財産をいったん相続人が取得する必要があります。複数の相続人がいる場合には、遺産分割協議などによって寄付する財産を誰が取得するのかを決め、その相続人が寄付先の法人等へその財産を寄付するという流れになります。

寄付先から相続税申告に必要な証明書を受け取る

相続税申告の際には、寄付を受けたことや寄付した財産の内容などを証明する書類の添付が必要です。寄付を実行する際に、申告に必要な書類を発行してもらえるかも確認しておきましょう。

第4章 【FAQ】遺産を寄付する場面でよくある疑問

Q1. 遺言書に寄付するよう書かれていたら必ず寄付しないといけませんか?

A1. 遺贈として有効なら原則として実行する必要があります

遺言書に「○○法人へ500万円を遺贈する」など、法的に遺贈と解される内容が有効に記載されていれば、相続人の判断だけで取りやめることは原則できません。一方、「寄付してほしい」など希望を示しただけの記載は、法的義務を生じさせる遺贈かどうかを判断する必要があります。

Q2. 寄付先が遺産の受け取りを断った場合はどうなりますか?

A2. その財産は相続人に帰属し、相続税の対象になります

遺言で指定された寄付先が遺贈を放棄した場合、放棄された場合の定めが遺言になければ、その財産は原則として相続人に帰属します。相続人が別の寄付先を探す義務はなく、相続人が取得する場合は相続税の課税価格に含めて計算します。

Q3. 遺言で寄付先が直接財産を受け取る場合でも、相続人は相続税申告が必要ですか?

A3. 直接遺贈の場合、それだけの理由で相続人に申告義務はありません

遺言によって寄付先が財産を直接取得する場合、寄付する財産があることだけを理由に、相続人に相続税の申告義務は生じません。ただし、相続人が取得するその他の財産について相続税の申告が必要かどうかは別途判断する必要があります。

Q4. 相続財産を寄付すると、相続税だけでなく所得税も安くなりますか?

A4. 要件を満たせば所得税の寄附金控除も受けられます

一定の寄付先への寄付は、相続税の非課税特例とは別に、所得税の寄附金控除の対象になる場合があります。ただし、対象となる寄付先や控除額の計算には別の要件があります。また、不動産や株式を現物で寄付すると、みなし譲渡課税が問題となることもあるため、相続税だけで判断しないことが重要です。

第5章 遺産を寄付する場合は、財産を動かす前に相続税の扱いを確認する

遺産の寄付では、「寄付すれば相続税はかからない」と考えて手続を進めた結果、予定していた非課税特例を利用できなくなることがあります。
たとえば、次のようなケースです。

遺産の寄付で起こりやすい相続税上のトラブル

  • 相続した不動産や株式を先に売却してしまった
  • 寄付した後で、寄付先が特例の対象となる法人ではないことが分かった
  • 遺産分割や寄付先との調整に時間がかかり、申告期限までに寄付を完了できなかった
  • 申告に必要な証明書を準備できず、特例の適用に支障が生じた

非課税特例には、寄付する財産・寄付先・寄付を完了させる期限・申告手続のそれぞれに要件があり、財産を動かした後や期限を過ぎた後では、やり直しができない場合もあり、想定していなかった相続税が発生する可能性があります。

私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)グループでは、弁護士と税理士が連携し、遺言や遺産分割の確認から、寄付に伴う相続税の検討、相続税申告まで一体的に対応しています。遺産の寄付を検討している方は、財産を動かす前の段階でお気軽にご相談ください。

Nexill&Partnersの解決事例

相続財産の調査から、相続税申告・相続登記までワンストップで相続手続きを対応した事例

遺言書の解釈を巡る相続トラブルを、弁護士間交渉により円満に解決した事例

 

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監修者:池本 稔洋
弁護士池本 稔洋

弁護士法人Nexill&Partners

弁護士池本 稔洋

  • 2017年3月
    兵庫県立星陵高等学校 卒業
  • 2021年3月
    神戸大学法学部 法律学科 卒業
  • 2023年3月
    神戸大学法科大学院 修了
  • 2025年4月
    弁護士法人Nexill&Partners 入所

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