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コラム

夫婦が同時に死亡した場合、誰が相続する?死亡の順番が分からない場合の相続人を弁護士が解説

2026.10.16

交通事故や災害などで夫婦がともに亡くなった場合、夫と妻それぞれの財産を誰が相続するのでしょうか。どちらが先に亡くなったか分からない場合には、法律上、同時に死亡したものと推定され、夫婦は互いを相続しません。そのため、夫と妻それぞれについて相続人を確認する必要があります。
本記事では、夫婦が同時に死亡した場合の相続について、家族構成別の相続人と、死亡の順番が分かる場合との違いを弁護士が解説します。

※本記事では、原則として遺言がなく、法定相続によって相続人を決める場合を前提に解説します。

第1章 夫婦が同時に死亡した場合、夫婦間では相続しない

夫婦のどちらが先に死亡したのかによって、相続人や財産の行き先が変わることがあります。死亡の順番が分からない場合には、「同時死亡の推定」というルールに従って相続関係を考えます。

1-1 死亡の順番が分からない場合は同時に死亡したと推定され、夫婦は互いに相続しない

民法では、事故や災害などで複数の人が死亡し、誰が先に亡くなったのか明らかでない場合には、同時に死亡したものと推定するルールがあります。これを「同時死亡の推定」といいます。
つまり、「まったく同じ時刻に死亡したことが確認された場合」だけが同時死亡になるわけではありません。

たとえば、夫婦が同じ交通事故に遭い、発見されたときには二人とも死亡しており、どちらが先に亡くなったのか確認できない場合には、同時死亡と推定されることがあります。
一方、夫が事故現場で死亡し、妻は救急搬送された後に病院で死亡したことが分かっている場合など、死亡の先後が明らかなケースでは同時死亡の推定は適用されません。

1-2 同時死亡の場合、夫は妻を、妻は夫を相続しない

通常、被相続人の配偶者は法定相続人になりますが、夫婦が同時に死亡したと推定される場合には、夫は妻を、妻は夫を相続しません。つまり、

① 夫の財産を妻が相続する
↓
② その妻が死亡し、妻の相続人が財産を相続する

という二段階の相続にはなりません。
そのため、夫の財産については夫の相続人、妻の財産については妻の相続人をそれぞれ確認する必要があります。

第2章 夫婦が同時に死亡した場合、誰が相続する?家族構成別に解説

法定相続では、配偶者以外の相続人について、第1順位が子、第2順位が父母や祖父母などの直系尊属、第3順位が兄弟姉妹です。
夫婦が同時に死亡した場合には、夫婦は互いを相続しないため、この順位に従って夫と妻それぞれの相続人を確認します。

おおまかには、以下のように考えます。

家族構成 夫の財産 妻の財産
夫婦に共通の子がいる 子が相続 子が相続
夫に前婚の子がいて、その子と妻が養子縁組をしていない
(※夫と妻が逆の場合も同様)
夫の前婚の子が相続 その子は相続しないため、妻自身の法定相続人を確認する
子がおらず親などがいる 夫の直系尊属が相続 妻の直系尊属が相続
子も直系尊属もいない 夫の兄弟姉妹などが相続 妻の兄弟姉妹などが相続

具体的に見ていきましょう。

2-1 夫婦に子どもがいる場合は子どもが夫と妻それぞれの財産を相続する

たとえば、夫婦と長男・長女の4人家族で、夫婦が同じ事故で死亡し、どちらが先に亡くなったのか分からず、同時死亡と推定されたとします。
この場合、夫婦は互いの相続人にならず、夫と妻それぞれの財産について、長男と長女がそれぞれ相続人になります。
つまり、

夫の財産

→長男・長女が相続

妻の財産

→長男・長女が相続

という二つの相続が発生します。
子どもが2人であれば、法定相続分は原則として夫の遺産について長男・長女が各2分の1、妻の遺産についても同様に2分の1ずつです。

2-2 前の結婚で生まれた子がいる場合は夫と妻で相続人が異なる場合がある

再婚している夫婦では、夫と妻で相続人が異なることがあります。
たとえば、夫には前妻との間に長男がいるものの、現在の妻との間には子どもがおらず、妻と長男は養子縁組をしていなかったとします。

夫婦が同時に死亡した場合、夫の相続人には前妻との子である長男が含まれます。
一方、妻がその長男と養子縁組をしていない場合、長男は妻の法定相続人にはなりません。
反対に、妻と長男が養子縁組をしていれば、長男は法律上、妻の子でもあるため、妻の相続人にもなります。

このように再婚家庭では、「夫婦の子ども」とひとまとめにせず、それぞれについて法律上の親子関係を確認する必要があります。

※相続手続を進める中で前妻との子の存在が判明し、遺産分割協議が必要になった解決事例については、こちらをご覧ください。
知らされていなかった前妻の子と向き合った相続協議の解決例

2-3 子どもがおらず親や祖父母がいる場合はそれぞれの直系尊属が相続する

夫婦に子どもがいない場合には、それぞれの父母などの直系尊属が相続人になります。
父母がすでに亡くなっていて祖父母が存命の場合には、祖父母が相続人となることもあります。
ただし、父母と祖父母の双方が存命の場合には、亡くなった本人に近い世代である父母が優先されます。

2-4 子どもも直系尊属もいない場合はそれぞれの兄弟姉妹が相続する

子どもがおらず、父母や祖父母などの直系尊属もすでに亡くなっている場合には、兄弟姉妹が法定相続人になります。

たとえば、夫には兄、妻には妹がいて、夫婦に子どもがおらず、双方の父母・祖父母もすでに亡くなっている場合を考えてみます。
夫婦が同時に死亡した場合には、夫の財産は夫の兄、妻の財産は妻の妹がそれぞれ相続することになります。
また、相続人となるはずだった兄弟姉妹がすでに死亡している場合には、その子である甥・姪が代わって相続人になることがあります。

子どものいない夫婦では、兄弟姉妹や甥・姪まで戸籍をたどる必要がある場合もあり、相続人の調査が複雑になりやすい点に注意が必要です。

※相続人を確定するためにどこまで戸籍を調べる必要があるのかについては、以下のコラムで解説しています。
相続人調査はどこまでやるべき?戸籍収集の範囲・手順と調査を行うメリットを弁護士が解説

第3章 夫婦のどちらが先に死亡したか分かる場合は相続結果が変わる

同じ事故や災害で亡くなったとしても、一方が他方より後まで生存していたことが明らかである場合には通常の相続として考えます。

3-1 一方が先に死亡したことが分かれば、生存していた配偶者も相続人になる

たとえば、夫婦が交通事故に遭い、夫は事故現場で死亡したものの、妻は救急搬送され、その後病院で死亡したことが明らかだったとします。
この場合、夫が死亡した時点では妻は生存しているため、妻は夫の相続人になります。

つまり、夫の相続人は次のようになります。

  • 夫婦に子どもがいれば、妻と子
  • 子どもがおらず夫の父母がいれば、妻と夫の父母
  • 子どもも直系尊属もいなければ、妻と夫の兄弟姉妹

その後妻が死亡すると、妻が夫から相続した財産は妻の遺産となり、妻の相続人に承継されることになります。

3-2 死亡の順番によって最終的に財産を取得する親族が変わることがある

夫婦に子どもがおらず、双方の父母や祖父母もすでに死亡しており、夫には兄、妻には妹がいるケースで考えてみます。
夫が先に死亡し、その時点で妻が生存していた場合、夫の相続人は妻と夫の兄です。法定相続分は妻が4分の3、夫の兄が4分の1となります。

その後に妻が死亡すると、妻が夫から相続した財産は妻の遺産として妻の相続人に引き継がれます。今回のケースでは妻の相続人は妹となるため、法定相続分で考えると、結果として、夫の遺産の4分の3に相当する部分を妻の妹が承継することになります。

このように、死亡時刻のわずかな違いで最終的に財産を取得する人が大きく変わってくるため、夫側・妻側の親族で利害が異なる場合には、相続上の争点となることがあります。

3-3 相続手続の途中で死亡の順番が確認できた場合はどうなる?

相続手続を進める中で、一方が他方の死亡後も生存していたことが明らかになった場合には、同時死亡としてではなく、実際の死亡順序を前提に相続人を改めて確認する必要があります。

死亡順序が判明した場合は相続人を確定し直す

たとえば、同時死亡として夫と妻のそれぞれの相続人が各々で遺産分割協議を進めていたところ、後から夫の方が妻より先に死亡していたことが確認されたとします。
この場合、夫が死亡した時点で妻は生存していたため、妻も夫の相続人になります。もっとも、その妻はその後死亡したため、妻本人が夫の遺産分割協議に参加することはできません。

しかし、妻が夫の相続について有していた相続分や遺産分割上の地位は妻の相続人に承継され、妻の相続人が夫の遺産分割協議に参加することになります。
このように、相続人が遺産分割を終える前に死亡し、その相続人の地位をさらに次の相続人が引き継ぐことを「数次相続」といいます。

すでに同時死亡を前提として遺産分割協議を進めていた場合でも、そのまま手続きを続けるのではなく、相続人を確定し直し、誰がどの遺産分割協議に参加する必要があるのかを整理し直さなければなりません。

すでに遺産分割協議書への署名や相続登記などを済ませている場合には、死亡順序の判明によって既に行った手続にどのような影響が生じるか、個別に確認する必要があります。

死亡の先後は確認できる資料をふまえて判断する

死亡の先後を確認する際には、まず死亡診断書や死体検案書の記載を確認します。必要に応じて、医療機関の診療記録や救急活動・事故に関する記録などが判断材料になることもありますが、これらは遺族が当然にすべて取得できるものではありません。

また、死亡診断書などに異なる死亡時刻が記載されていたとしても、その時刻だけで必ず死亡の先後が確定するわけではありません。確認できる資料をふまえても、一方が他方の死亡後まで生存していたことが明らかにならない場合には、同時死亡の推定を前提に相続関係を考えることになります。

まとめ|同時死亡による相続で判断が難しくなりやすいポイント

夫婦の同時死亡が関わる相続では特に次のような場合に判断が難しくなりやすいです。

  • 夫婦のどちらが先に死亡したのか判断しづらい
  • 再婚や前婚の子、兄弟姉妹などが関係し、夫と妻で相続人が異なる
  • 後から死亡の順番が判明し、夫側・妻側の相続人間で利害が対立する
  • すでに遺産分割や相続登記を進めていたところ、死亡順序の判明によって手続の見直しが必要になる

特に、死亡の先後によって数次相続となる場合は、最終的な取得額が大きく変わることもあります。当事者間だけでは協議が難しくなることもあるため、必要に応じて弁護士を介して進めることをおすすめします。

Nexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)グループでは、弁護士・税理士・司法書士などが連携し、相続人の調査や遺産分割、相続登記、相続税の手続まで一体的にサポートしています。夫婦の同時死亡が関わる相続で、誰が相続人になるのか、どのように手続きを進めればよいのか判断が難しい場合には、お気軽にご相談ください。

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監修者:池本 稔洋
弁護士池本 稔洋

弁護士法人Nexill&Partners

弁護士池本 稔洋

  • 2017年3月
    兵庫県立星陵高等学校 卒業
  • 2021年3月
    神戸大学法学部 法律学科 卒業
  • 2023年3月
    神戸大学法科大学院 修了
  • 2025年4月
    弁護士法人Nexill&Partners 入所

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