相続放棄をすると、被相続人の財産を相続しなくてよくなりますが、相続放棄後も財産管理の義務が残ることをご存じでしょうか。例えば、ご両親のどちらかが亡くなった際、多額の借金が残っている場合や、家や車、賃貸物件内の残置物などを適切に管理しなければ、損害賠償やトラブルに発展するリスクがあります。また、相続放棄をする前に、被相続人の財産を処分したり預金を引き出したりすると、相続を承認したとみなされるケースもあるため、注意が必要です。本記事では、相続放棄の基礎知識や注意点、管理義務への対応について詳しく解説します。
もくじ
1.相続放棄に関する基礎知識
相続放棄とは
相続が発生すると、相続人は被相続人(亡くなられた方)の財産をすべて引き継ぐことになります。
しかし、この財産には、現金や不動産などの「プラスの財産」だけでなく、借金やローンなどの「マイナスの財産」も含まれます。
相続放棄とは、これらのプラス・マイナスを問わず、すべての財産を相続しないという意思を表明することを指します。
相続放棄は、法的に当初から相続人とならなかったものとみなされるため、遺産分割協議書や相続手続きの書類への押印等が不要となります。
相続放棄を行うことで、被相続人の借金やローンなどの債務を引き継がずに済むことになります。
さらに、相続放棄をすると、法律上は最初から相続人ではなかったとみなされるため、遺産分割の話し合いに関与する必要がなくなります。
これにより、親族間でのトラブルから逃れることができます。
ただし、相続放棄をすると、被相続人の財産全てを放棄することになるため、預貯金や不動産などのプラスの財産も相続できなくなります。
また、相続放棄は、一度家庭裁判所で認められると撤回することができませんので、後になって新たな財産が見つかった場合でも、取り戻すことはできません。
そのため、相続放棄を決断する際には、すべての財産状況を把握した上で慎重に判断する必要があります。
相続放棄が認められるケース
相続放棄は、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月以内にする必要があり、「自己のために相続の開始があったことを知った時」とは、基本的に被相続人が亡くなったことを知った時を指します。
そのため、親が離婚して母親側に引き取られ、父親と長年交流がない状態が続いていた中で、何年もの時間が経ってから父親が亡くなったことをお子さんが知ったとしても、それから3か月以内に相続放棄をすれば問題ないことになります。
ただ、亡くなってから長期間が経っている場合には、裁判所からそれまで知る機会がなかったのか、なぜ今知ったのかという点を当然疑問視されますので、その点をしっかりフォローする必要はあります。
そのほか、遺産がほとんどなく負債もないと思っていたため相続放棄をしていなかった場合に、債権者から借金の請求が来て初めて親に負債があると分かったケースでも相続放棄が認められる場合が多々あります。
なお、祖父が亡くなってすぐに父親が亡くなったといったケースにおいて、祖父に負債があるため祖父の相続はしたくないが、父親には資産があるため父親の分だけ相続したいというご相談も偶に受けることがあります。
この場合、父親が祖父に関して「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月以内に亡くなっている場合には、父親が亡くなってから3ケ月以内は祖父の分だけ相続放棄をすることが出来ます。
また、祖父の死から大分時間が経ってから父親が亡くなった場合でも、上記のとおり祖父に負債があることを父親が知らなかったというケースの場合には、祖父の分だけ相続放棄が認められるケースがありますが、この場合本当にそうだったのか裁判所から厳しく審査されるため、相続に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。
現在、殆どの裁判所において、弁護士が代理人として相続放棄申述をした場合には、相続放棄の要件さえ満たしていれば、弁護士がしっかり相続放棄の法的な意味を相続人に説明して理解しているという弁護士への信頼を前提に、相続人本人に対する相続放棄意思確認の照会書を送付せずに、そのまま相続放棄が認められる運用となっております。
相続放棄のための手続き
相続放棄をするには、相続人が単に「放棄します」と表明するだけでは足りません。
法律上、家庭裁判所に対して「相続放棄の申述」を行うことが求められます。
相続放棄の申立ては、被相続人が亡くなられた最後の住所地を管轄する家庭裁判所で手続きを行います。
最後の住所地が分からないときは、被相続人の本籍が分かれば本籍から住所を調べることができますので、役所へご相談されると良いでしょう。
相続放棄手続きの流れ
①必要書類の収集
相続放棄の申述に必要な書類は、相続放棄申述書・被相続人の住民票の除票または戸籍の附票・死亡の記載のある戸籍・申述人の戸籍謄本・収入印紙などです。
ご自身、配偶者、父母、祖父母、子等の戸籍については、本籍地が遠方にある方でも、最寄りの市区町村の窓口でまとめて請求することが可能です。
ただし、戸籍を郵送で取得したい場合や、親族が複雑に絡む場合は、関係書類を正確にそろえるのに時間がかかりますので、早めの準備が重要です。
②家庭裁判所への申述
書類が揃ったら、家庭裁判所に対して相続放棄の申述を行います。
申述が受理されると、裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が届きます。
この通知書は、後々のトラブルを避けるためにも重要な証明書となるので、大切に保管しておきましょう。
③審理と最終決定
家庭裁判所は提出された申述内容を確認し、場合によっては補足書類の提出を求めることや面談を行うこともあります。
例えば、相続放棄を選んだ理由や、財産の把握状況について尋ねられることがあるため、正確に回答できるよう準備しておくと安心です。
申述が認められれば、正式に相続放棄が成立します。
なお、相続放棄の申述は、相続の開始を知ったときから3か月以内に行う必要があります。
この期間を過ぎてしまうと、原則として相続を放棄することができなくなりますので、早めの準備が重要です。
また、場合によっては家庭裁判所に期間延長の申し出が可能な場合もあるため、もし間に合わない場合は速やかに専門家にご相談ください。
2.相続放棄を行うことのメリット・デメリット
メリットの例
①被相続人の負債から解放される
相続放棄の最大のメリットは、被相続人の全ての負債から解放されることです。通常被相続人に負債がある場合は、各相続人が法定相続分に従って相続することになります。
しかし、相続放棄を行うと被相続人の全ての義務を放棄することができるので、被相続人の負債の返済義務を負う必要がありません。
②相続に関するトラブルに関わらなくてよい
相続放棄を行うと、申述人は初めから相続人とならなかったものとみなされるので、相続に関するトラブルに巻き込まれる心配がありません。
相続人間で揉めごとが起き、遺産分割協議や調停での話し合いに発展したとしても、一切関与する必要がなくなります。
ただ、地方裁判所の支部であったりすると、稀に代理人が就いていても相続人本人に相続放棄意思の照会書へ回答を求めることがあったり、内容からして念のため相続人本人に「相続放棄意思の照会書へ回答してもらう必要がある」と裁判所が判断した場合には、回答が必要な場合もありますので、その点はご留意ください。
デメリットの例
①プラスの相続財産も放棄しなければならない
相続放棄を行うと、被相続人の一切の相続財産を放棄することになるため、プラスの相続財産も全て手放さなければなりません。
被相続人の所有する土地や建物に住んでいた場合や、被相続人が所有していた物品等に思い入れがあり手放したくない事情があったとしても、全てを放棄しなければなりません。
②相続放棄は撤回することができない
相続放棄は一度受理されたら原則撤回することができません。もし相続放棄を行った後に、被相続人にプラスの財産があることが分かった場合でも撤回は認められません。
例外的に相続放棄の撤回が認められるのは、相続放棄の申述が詐欺又は脅迫によるものであった場合や、未成年者が法定代理人の同意なしに相続放棄申述をした場合等とされています。
③相続順位が変動する
相続放棄を行うと、相続順位が変動し次の順位の相続人に相続権が移ります。被相続人と疎遠で債務の存在を知らない親族に相続権が移り、思わぬ相続トラブルを引き起こしてしまう可能性もあります。
相続放棄を考えるときは、次の順位の相続人まで含めて全ての法定相続人を調べてから検討するようにしましょう。
3.相続放棄をすることと矛盾する行為
相続放棄は、法的に当初から相続人とならなかったものとみなされることになります。そのため、「相続放棄をすることと矛盾する行為」をすると相続放棄が認められなかったり、仮にその行為を裁判所に報告しないで相続放棄が認められたとしても、後から亡くなった方の債権者から相続放棄は無効であるとして、借金の返済を求められる可能性があります。
相続放棄をする際にいただくよくある質問
この「相続放棄をすることと矛盾する行為」について、よく相談を受ける内容は以下のようなものがあります。
② 亡くなった方と同居していた場合にそのまま住み続けてよいのか、賃貸借契約者の名義変更をして良いのか
③ ②の場合に水道光熱費の名義変更をして良いのか
④ 亡くなった方が1人で賃貸物件に居住していた場合に残置物や賃貸借契約の処理はどうしたらよいのか
⑤ 亡くなった方名義の車はどうしたら良いのか、そのまま使用し続けても良いのか、相続人以外が使用するなら良いのか
⑥ 相続放棄をしたら家の管理をする必要はないということで良いのか
これらの質問について分かりやすく解説していきます。
①亡くなった方の携帯電話の解約や名義変更をしてもいいのか
まず、①について、携帯電話は機種代金を割賦契約していることが多くその残債が残っていることが多いですし、携帯電話自体にも価値があるため、たとえ名義だけ亡くなった方にしていただけの名義借りの場合であっても名義変更は避けるべきといえます。
また、解約についても、契約者が死亡して相続人も相続放棄をした場合法律上当然に契約は終了することになりますし、解約という行為自体亡くなった方の契約者たる地位を引き継ぐことを前提とする行為のため、避けることが望ましいといえます。
最善の方法としては、相続放棄が完了すると、相続放棄受理通知書が裁判所から送られてきますので、その写しを携帯電話会社に送付することであります。
たとえ相続放棄が完了することでその支払い義務がなくなるとしても、相続放棄手続き中もそのまま携帯料金が発生し続けることが気になるのであれば、相続放棄手続き中であることをちゃんと伝えたうえで、亡くなったことを伝えるべきといえます。
そして、前述のとおり名義だけ亡くなった方にしていただけの名義借りの場合の時には、引き続き同じ携帯番号を使用し続けたいというお気持ちは重々わかりますが、リスク回避のためには、名義変更をすることなく、新たに自分の名義で新規に携帯電話契約を締結すべきであるといえるでしょう。
②亡くなった方の名義で契約している賃貸物件に住んでもいいのか
まず、賃貸借契約が亡くなった方名義である以上、契約者が亡くなった後もそこに居住する権利(いわゆる賃借権)があるのは亡くなった方の賃借権を引き継いだ者であり、すなわち亡くなった方を相続した者ということになります。
そうしますと、亡くなった方の相続放棄をした以上、そのまま住み続けることはまさしく「相続放棄をすることと矛盾する行為」にあたり、避けるべきといえます。
そのため、出来るだけ早く転居先を見つけて引っ越すか、或いは、賃貸人に事情を説明して亡くなった方の賃借権を承継する形ではなく、新たに賃貸借契約を締結して住み続けることとなります。
ここで留意すべき点としては、賃貸人次第では、滞納家賃がある場合にはそれを支払うことを条件とされたり、一度明け渡して原状回復をしたうえで再度新規契約をすることを条件とされることがあります。
その場合の滞納家賃や原状回復費用について、亡くなった方の通帳から自動引き落としかつ残高があれば別ですが、相続放棄をした又は手続き中の相続人が亡くなった方の通帳から引き出して支払うことは相続放棄と矛盾する行為です。
支払う場合には、相続人自身の財産から支払う必要があります。
この相続人自身の財産から支払うことは、亡くなった方の負債を代わりに払うことになります。
一見「相続放棄をすることと矛盾する行為」に当たると思われる方もいますが、亡くなった方の財産は何ら処分しておらず、あくまで支払い義務のないものを自らの財産で支払っただけと評価されます。
よって相続放棄に支障はありませんので、ご安心ください。
なお、仮に賃貸借契約の新規契約を拒否された場合、転居先が見つかるまでの間そのまま住み続けると、賃貸人との間でトラブルが発生する可能性があります。
滞納家賃があったり、賃貸人が気難しい性格であったり、亡くなった方と賃貸人との特別な関係性から賃借していた等といった、賃貸借契約の新規契約が拒否される可能性がある場合には、事前に転居先の目途をある程度立ててから、賃貸人に対して賃貸借契約の新規契約を提案することが望ましいと思われます。
③ 亡くなった方の名義で契約している賃貸物件の水道光熱費の名義変更をして良いのか
問題なく住み続けていくことができますが、水道光熱費の契約はどうしたら良いのか等と悩まれる方が多くおられ、よく相談を受ける内容でもあります。
これまで解説した内容を踏まえますと、水道光熱費の契約者たる地位が亡くなった方である以上、水道光熱費の契約者名義について相続放棄をしたあるいは相続放棄手続き中の相続人名義に変更することは、「相続放棄をすることと矛盾する行為」といえそうです。もっとも、実務上は水道光熱費の契約に財産上の価値があるとはいえないため、名義変更をしてもそれが「相続放棄をすることと矛盾する行為」として問題になることはないと考えられています。
賃貸借契約との違いでいいますと、賃貸借契約は通常契約時に敷金を入れていることが多く、それを引き継ぐこと自体が財産的価値のあるものをまさしく相続することになりますし、敷金を入れていないとしても、賃借権という権利は強く保護されており、それ自体に財産上の権利があるという評価もできますので、水道光熱費の契約とは全く異なるものといえるでしょう。
そうしますと、相続放棄が完了する前に水道光熱費の契約者名義を相続人に変更しても良いのではないかと思われますが、財産的価値がないとはいえ水道光熱費の契約者たる地位を引き継ぐという側面があることは否定できないため、相続放棄が完了するまでは名義変更を控えておくのがより無難であると思われます。
相続放棄が完了するまでの間、水道光熱料金が未納となることでライフラインが止められる心配もありますし、その間自ら使用することにより発生した水道光熱費用でもありますので、振込用紙等で相続人の自己固有の財産からその費用を支払っておくことが望ましいといえます。
少なくとも相続放棄をした相続人において被相続人が亡くなって以降自ら使用していた水道光熱費用分は相続放棄をしても自らの債務ですので、支払い義務を免れることはできません。
④亡くなった方が1人で賃貸物件に居住していた場合に残置物や賃貸借契約の処理はどうしたらよいのか
亡くなった方名義で契約している賃貸物件に同居していた場合と異なり、基本的に相続放棄をする相続人がその物件に居住するということは想定されないかと思われます。
このような場合に問題となる典型例が、孤独死して遺体が放置したまま腐敗して特殊清掃が必要となり多額の費用を請求されたり、そのような場合でなくとも滞納家賃や原状回復費用の請求があったり(亡くなった当時滞納家賃がなくとも亡くなった後も家賃は発生し続けるため滞納家賃が発生し続けることはよく起こります)、賃貸物件にある亡くなった方の遺品を引き取るように求められたり等の様々な対応を求められることです。
こういった場合では、相続放棄をする以上は連帯保証人となっていない限り、亡くなった方の賃貸借契約を巡る一切の債務について支払い義務がないため、相続放棄をするため一切関知しないと賃貸人に伝えることになります。
賃貸人から解約届を提出するように求められるケースがよくありますが、賃貸借契約を解約できるのは亡くなった方から賃貸借契約者たる地位を相続した者だけであり、相続放棄を検討している段階では応じるべきではないといえます。
④:ケース(1)賃借人とのトラブルに発展しそうな場合
賃貸人が不動産業者である場合や賃貸管理会社が間に入っている場合には、相続放棄中のため一切関知できないと伝えればそれ以上色々と要求されることは少ないですが、特に個人の賃貸人から借りていて賃貸管理会社が間に入っていない場合には、何度も電話がきたり相続人の家まで来たり等、トラブルが発生する可能性がより高まります。
このような場合は、相続放棄を弁護士に依頼するとともに、その弁護士に賃貸人又はその管理会社との間に入ってもらうのが一番安心かと思われます。
④:ケース(2)賃貸物件内の残置物の処理を求められた場合
賃貸物件内に残された遺品や残置物について、「相続放棄をすれば一切関係ないので放置してよい」と考える方もいるかもしれません。しかし、法律上、相続放棄をしても亡くなった方の財産を管理する義務が残ります。
そのため、残置物をそのまま放置した場合、賃貸人が新しい入居者を迎えるために遺品を別の場所に移動し管理した場合には、その費用を請求される可能性があります。
さらに、賃貸人に迷惑をかけることにもなるため、価値のないものは廃棄し、価値のあるものは自宅に持ち帰るなどして適切に管理する必要があります。
過去の事例では、価値のない物品しかない場合に、賃貸人から「廃棄費用は負担するので処分について同意書が欲しい」と求められたケースがあります。このような場合、賃貸人側は相続人が全員相続放棄をしていても、遺品を勝手に処分する権限がなく、後から責任を追及されるリスクを考えて処分をためらうのが一般的です。
相続放棄をしている以上、相続人には処分の権限がないため、賃貸人が処分を行っても異議を述べない旨の書面を提出して解決したケースもありますので、まずは相続放棄に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。
⑤亡くなった方名義の車はどうしたら良いのか、そのまま使用し続けても良いのか、相続人以外が使用するなら良いのか
こちらも先ほどの残置物の取り扱いと同じく、相続放棄をした相続人は、放棄後も亡くなった方の財産を管理する義務を負います。このため、亡くなった方名義の車についても管理し続ける必要があります。
しかし、ここで注意すべき点は、車を管理することはできても、使用することはできないということです。
亡くなった方名義の車をそのまま使用する行為は、利益を享受する形になり、「相続放棄をすることと矛盾する行為」とみなされます。また、第三者に車を使用させることもできません。仮に、第三者が車を使用していることを知りながら黙認した場合、その黙認自体が「相続放棄と矛盾する行為」と判断される可能性があります。
ただ、使用できない車の管理を続けるために、駐車場料金を支払い続けることや、駐車スペースを確保し続けることに対して不安を感じる方も多いでしょう。この点については、亡くなった方の他の財産の取り扱いと同様に、残された車が無価値であれば処分しても問題ありません。無価値かどうかの判断基準として、業者の見積もりを取るのが一番無難な方法ではありますが、高級車でない限り、概ね10年落ちの車で10万キロ以上の走行距離があれば無価値と判断してもよいのではないかと思われます。
また、もう一つの選択肢として、まだ相続放棄をしていない相続人がいる場合にはその相続人に通知して管理義務を引き継がせることができます。
なお、自分以外の相続人が全員すでに相続放棄をしている場合は、管理義務を引き継ぐ相手がいないため、裁判所に対して相続財産管理人という相続財産の管理人の選任を求めることができます。
ただし、この手続きには1万円程度の実費に加え、弁護士費用として20万~30万円、さらに亡くなった方の財産や相続財産管理人の業務内容に応じて裁判所に予納金として20万~100万円を納めなければならないため、車の管理義務を逃れるためだけに行うのは現実的には非常にハードルが高いといえます。
⑥相続放棄をしたら家の管理をする必要はないということで良いのか
相続放棄をした場合でも、亡くなった方の財産を管理する義務は相続人に残ります。
そのため、亡くなった方名義の家についても適切に管理を続ける必要があります。
老朽化した家の瓦が飛んで怪我をさせてしまった、草木の繫茂や病害虫の発生で近隣住民に損害を与えてしまったなど、管理が不十分だったことによる損害の責任は相続人にありますので、このことを知らずに対応を放置してしまうと、近隣住民からのクレームが訴訟にまで発展してしまうこともあります。
⑤でご説明した車の管理と異なり、家の管理義務というのは責任が大きく負担も大きいことから、相続人が全員相続放棄をした場合は、費用を掛けてでも裁判所に対して相続人財産管理人の選任を申立て、管理人に管理義務を引き継がせることも現実味を帯びてくることになります。
ただ、相続財産管理人の選任をするには、他に相続人がいない状態(相続人全員が相続放棄をしている状態)になっている必要があるので、広範囲にわたって相続放棄をする必要があることに加え、相続財産管理人選任申立にかかる費用を誰がどう負担するのかという問題もでてくるので、早めに弁護士に相談のうえで適切な対応を行いましょう。
4.まとめ
相続放棄は、被相続人の負債を引き継がないための有効な手段ですが、放棄後も財産管理の義務が残ることを知らない方も多いです。例えば、亡くなった方名義の家の管理が不十分で近隣住民に迷惑をかけてしまった場合、責任を問われることがあります。また、車や賃貸物件内の残置物など、手続きが必要な財産がある場合には、どのように対応すべきか迷う場面も少なくありません。
相続放棄をした後の財産管理には、専門的な知識や判断が必要です。「この場合どうすればいいのだろう」「自分の判断で進めていいのか不安」という方は、一度専門家に相談することで、リスクを避けながら最適な方法を見つけることができます。
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記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
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