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後見対策

障がいのある子のための相続

2021.03.07

ダウン症や自閉症など、何かしらの障がいのあるお子様をお持ちの方にとって、自分に万が一のことがあったとき、誰がどうやってその子を守ってくれるのか、は大きな心配事ではないでしょうか(このような心配事は、「親なき後問題」といわれています)。

障がい者へのサポート体制を構築することに注目が集まってはいるものの、親なき後問題への法整備はまだ追いついていないのが現状といえます。
親なき後に、障害のある子に財産を残すことは当然必要ですが、障害のある子がその子らしく生きていけるということも親にとっては重要なことです。
今回は、障がいのある子がその子らしく生きていけるための相続の方法について、ご紹介させて頂きます。
なお、本記事では法律上、判断能力がない(自分で)とみなされるような障がいのある子どもを対象としています。

1 親が元気なうちに準備をしましょう

親なき後問題とはいうものの、実際には、親が元気なうちに対策をする必要があります。
なぜなら、何も準備をしていないまま、障がいのある子どもが成人すると、法定後見人の関与なしには、親といえども、子供の財産の管理ができなくなってしまいます。

成年後見制度は、高齢化社会を支えるものとして、2000年の介護保険制度で始まったものですが、同じルールのまま、障がい者にも適用されています。
障がい者といっても、障がいを負った経緯や程度、子供の性格は様々です。しかし、成年後見制度の下では、そのような個々の背景は無視をされ、「判断能力のない者」として一律に扱われてしまう可能性があります。
また、成年後見制度では、「本人の財産を守る」ことは「本人の財産を減らさない」ことに主眼が置かれているとの声があります。

例えば、毎月一度、ストレートパーマをかけることを楽しみにしていた女の子が、法定後見人から、生活に必要のないパーマに毎月1万円もかけるのは無駄使いとして、その子の財産からパーマ代を支払うことを拒否されたというようなこともあるようです。
このようなことを避けるためには、障がいのある子がその子らしく生きていけるためには、子供のことをよく知っている親が元気なうちにその子のための相続を準備していく必要があるのです。

2 任意後見制度の利用

後見人には、上述した法定後見人以外に、任意後見人というものがあります。
任意後見人は「判断能力がない」とされる前にあらかじめ本人が後見人と契約を結ばなければ成立しません(これを「任意後見契約」といいます。)。

子どもが未成年である場合には、親権のある親が子供の代わりに任意後見契約を結ぶことも可能です。
任意後見契約を結んでおくことで、障がいのある子どものことを理解している身内に子どもの財産管理を任せることができます。
父親と母親がそれぞれ親権を使って任意後見人になるという方法もあるようですが(「親心後見」※一般社団法人日本相続知財センター本部と一般社団法人実家信託協会の登録商標)、父親と母親は互いに利益が衝突するものとされ、親権者に代わる者を特別代理人として選任する必要が出る場合があります。

ただし、任意後見人には、法定後見人のように本人のした契約への取消権がなく、詐欺まがいの契約を本人がしても取り消せない点には注意が必要です。
また、任意後見が開始される際には、後見監督人が就くため、任意後見人が自由に財産管理をすることができませんし、後見監督人に報酬を支払う必要もあります。
それでも、法定後見人への報酬よりは安いので、任意後見契約を考える価値はあります。

3 家族信託の利用

家族信託契約とは、ある目的に沿って、利益を受ける人(「受益者」といいます。)のために財産を持っている人(「委託者」といいます。)が、信頼できる人(「受託者」といいます。)に名義を変えて財産管理を信託する契約です。

家族信託契約では、本人の希望やそれを遂行するための権限を信託契約書の中に残しておけます。
その希望に反しない限り、受託者は、本人の希望に即した柔軟な財産管理・積極的な資産の有効活用ができます。
例えば、夫を委託者、妻を受託者、障がいのある子を受益者として、自分(夫)の財産を障害のある子どものために使って欲しいとの家族信託契約を締結することが考えられます。
障がいのある子どもに兄弟姉妹がいれば、兄弟姉妹を受託者とすることも考えられます。

また、兄弟姉妹を受託者とした家族信託契約では、最初の受益者を夫、夫が亡くなった後の受益者を妻、妻が亡くなった後は障がいのある子を受益者とすることで、財産の承継先を連続で指定できます。
柔軟な財産管理ができる家族信託契約ですが、比較的新しい契約なので、専門的な知識がなければ目的が達成できないことや税務申告の手間が増すというデメリットがあります。

4 まとめ

障がいのある子が自分らしく生きていけるように財産を残すためには、任意後見契約や家族信託契約のどちらか一方を利用するのではなく、組み合わせることも必要になります。

また、今回ご紹介できなかった方法として遺言書を利用する方法もあります。遺言書の場合は、遺留分という問題が発生します。障がいのある子に不動産を残したい場合には、遺留分を考えた現金を用意しなければならないこともあります。

ただお金を残すだけではなく、その子らしく生きていけるようための相続をするには、法律や税務の専門的な知識が必要です。
弊所の弁護士は、最先端の家族信託にも対応できる知識と経験があり、また、税理士法人や司法書士法人を併設しているので、相続に関わる税金や登記にも一度に対応が可能です。
障がいのある子のための相続を考えている方は、是非、弊所にご相談ください。

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