touki column

相続登記コラム

相続登記に関する法改正について

2022.01.07

よくあるご相談

例えば、以下のようなご相談をよくお受けします。

先月母が86歳で亡くなり、姉と弟と3人で母の遺産について話合いをしています。

母は10年前に父を亡くして以降、1人で生活してきました。
昔からとても働き者でしっかりしており、自分の財産は全て自分で管理していましたので、私達子どもは母の財産には一切関わっていませんでした。

今回の母の死に際して、私達は、母の財産として何が残っているか全く分かりませんでした。
そこで母の財産を調査したところ、実はかなり昔(数十年前)に亡くなった母の父、つまり祖父の名義の土地が残っていることが判明したのです。

この土地も、母の遺産を分ける際の話合いの中で一緒に話し合わなければならないのですか。
またこのままの祖父の名義の登記のまま放置しておいたら駄目なのでしょうか。

問題の背景

そもそも、上記のご相談のように、先祖の登記をそのままの状態で放置しているご家庭は少なくありません。
これはなぜでしょうか。

まずは、相続と、それ以外の場合(売買等)とで、登記名義を変更する必要性に差があることが挙げられます。

例えば、土地の売買の場合ですと、他人との間で売買が行われることが多いため、殆どの場合で登記の移転が行われます。
これは登記を移さないとせっかくお金を払って他人から土地を買ったのに、土地の名義が自分に移ったことを買主が証明できないからです。

他方、土地を相続した場合、相続というのは親族間で起こりますが、仲が悪い訳でない親族の間では別にわざわざ費用を払ってまで登記を移す必要はなく、そのまま土地の名義人の子の誰かがそこに住み続けても誰も文句は言わないため、これまで支障はありませんでした。

 

しかし、都市部への人口移動により、特に地方では土地の所有意識が薄まり、土地を利用したいというニーズも低下しました。
それにより、地方の土地を売却したいと考える人が多くなってきました。

先程ご説明したように、売買に際しては、買主に登記を移転するのが通常ですので、売買契約の時点で売主に登記がないといけません。
売ろうとした時に、売主に登記がなく、売主の先代又はそれより前の先祖が登記を有しているというのでは、売ろうにも売れません。
このような事例が多くなってきたのです。

登記を移すには、その時点での登記名義人の全相続人が参加した上で「遺産分割協議」を行う必要があるのですが、数代前の登記のままになっているとなると相続人が何十人という事態も珍しくなく、全員と連絡を取るだけでも大変です。
最終的には費用や時間が掛かりすぎるということで断念される方も少なくありませんでした。

また現在空き家が問題となってますが、空き家があるという連絡を住民から受けた際に、行政が登記を確認するとかなり昔の時代の登記のままになっており、亡くなっているかどうかさえ分からないため、まずは戸籍を調査して死亡の有無を確認するところから行政がしなければなりませんでした。

しかも、その結果亡くなっていることが分かったとしても、その相続人の方と連絡をしようと試みても連絡が取れず、空き家のまま何ら対策が打てない、という事例もかなり増えてきており、行政の負担も大きくなっています。

そこで令和3年4月、上記の問題を解消するために、不動産登記に関する法律など、いくつかの法律が改正されました。

相続登記に関する法改正について

登記法改正の概要

今回の改正にはいくつかの内容がありますが、今回は代表的なものを取り上げます。

まず、①不動産を取得した相続人に対し、その取得を知った日から3年以内に、相続登記の申請をすることが義務付けられました。
また、正当な理由がなく期間内の申請が漏れた場合には、過料の罰則もあります。

次に、②法務局の登記官が、住基ネット等から登記名義人の死亡の有無を確認し、登記官の職権で(相続人の申請が無くても)、死亡した事実を登記上に表示できるようになりました。
これにより、登記を見れば、その名義人が亡くなっているのかどうかが分かるようになります。

更に、③相続開始(亡くなられた時点)から10年が経過した場合には、遺産分割協議がまだ行われていないでも、法定相続分で登記ができるように制度が新設さえました。
これにより、遺産分割協議が行われなかったとしても、10年が経過すればひとまず下の世代への登記が行われることになりました。

その他にも、空き家問題や土地の所有者不明の問題を解消すべく、様々な改正が行われました。
法改正の概要は以上の通りですが、原則として今後約2年以内、相続登記の申請義務化に関する点は約3年以内と定められています(具体的な改正内容によって例外はあります。)。

まとめ

今回は、相続登記に関する最新の法改正についてご説明致しました。
今回の内容は改正の主な内容になりますので、まずは本記事をきっかけに今回の法改正の内容を知って頂いた上、是非その他の改正にも興味を持って頂ければと考えています。

 

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記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。

 

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