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家族信託

家族信託の契約書は自分で作れる!?~危ない信託契約書~

2021.04.01

「家族信託」というものを書店やテレビで見かける、という方は多いのではないでしょうか?

「家族信託」は、民事信託という制度を利用した相続の手法であり、民法ではできない相続を実現できるものとして注目を浴びています。
相続の方法の一つと聞くと、遺言書作成のキットのように、家族信託のひな形があって自分で作成できるのではないか、と考える方もいるのではないでしょうか?

結論から言いますと、家族信託の契約書にはひな形はなく、信託法の知識がない方が自分で作成することは不可能です。
これは、法律事務所のホームページだから不可能だと言っているわけではありません。
そもそも「家族信託」は最先端の相続の手法であり、法律家でも精通している者は少ないのです。

以下では、書籍やインターネット等で公開されている危ない信託契約書を例に自分で「家族信託」の契約書を作成する難しさをご説明させて頂きます。

1.なぜ「家族信託」の契約書のひな形がないといえるのか?

「家族信託」の信託契約書のひな形がないと聞くと、書籍やインターネット等で公開されているじゃないか、と思われる方もいるのではないでしょうか。
確かに書籍やインターネット等で「家族信託」の信託契約書は公開されています。

しかし、そのような信託契約書は、ある事例を想定した場合の回答例の一つに過ぎません。
家族信託の最大のメリットは、民法ではできない相続を実現することにあります。

したがって、「家族信託」の契約内容は、被相続人である親の保有資産の規模・内容、家族構成と家族の年齢・健康状態・居住地、財産を託す親の想い・財産を託される子側の想いによって当然のように変わってくるのです。

書籍やインターネット等で公開された回答例に、あなたの情報を当てはめても信託契約書はできないのです。
残念ながら、回答例に当てはめて信託契約書が作成できると勘違いしている法律家もいるようです。

「家族信託」の契約書を作成する前には、家族の間でしっかりと財産を託す親の想いや希望と、それを踏まえたこの希望・覚悟をすり合わせる必要があります。
そういった意味で「家族信託」の契約書のひな形はないといえるのです。

2.危ない信託契約書たち

では、どのような危ない信託契約書があるのか、ご紹介させて頂きます。

(1)条文数の多い信託契約書

信託契約書の中には、条文数が40以上あるものがあります。

条文数が多ければ、より具体的・詳細に家族の想いを実現できるよい契約書のように思えるかもしれません。
しかし、よく考えてみてください。
普段、法律の条文に触れていない一般の親子が、特に高齢になった親が40条にわたる契約書を読むことも理解することも、かなりハードルの高い作業です。
携帯電話を契約するときなどにあの分厚い約款を読んで、理解することを想像していただければわかりやすいのではないでしょうか。

このような条数の多い信託契約書は、家族の想いを遂げるためというよりも、信託法改正前に主流であった商事信託の契約書を参考に作られていることが多いのです。
商事信託では、金融庁の監督下にある信託銀行・信託会社が顧客とのトラブルを起こさないように事細かに規定が盛り込まれています。
家族の信頼関係を基礎とする「家族信託」では、不要な条項が多いにもかかわらず、そのままで作成された危ない信託契約書です。

(2)必要のない信託関係人のいる契約書

書籍やインターネットでは、「信託監督人」や「受益者代理人」が記載された信託契約書がひな形として公開されているケースが多くあります。
しかし、「信託監督人」は未成年者や障がい者が受益者(信託された財産から経済的利益を受ける人のことです。)の場合に、受託者(信託された財産を実際に管理する人のことです。)を監視する際に必要となる人です。

「受益者代理人」は、受益者が判断能力の低下や喪失をした場合に、受益者に代わって権利を行使する際に必要な人です。
なお、受益者代理人を置く場合、受益者自身がその権限を一切行使できませんので注意が必要です。
必要のない信託関係人を定めてしまうと、権利関係が複雑になってしまうため、家族の想いを汲むことはできません。

(3)受託者の権限が不十分な契約書

「家族信託」をする上では、家族の抱える課題を解決するために、受託者にどのような権限を与えるか、を吟味しなければなりません。
それにもかかわらず、包括的な権限しかなかったり、逆に必要な権限が定められていなかったりすることがあります。

家族信託は将来に備えた保険の意味もあるので、様々な事態を想定しなければなりません。
受託者の権限が不十分な信託契約書は、想定外の事態に対応できない危ない信託契約書です。

(4)期間が有期の信託契約書

「家族信託」は、家族の障害をサポートすることに活用すべきものですので、有効期間が「5年」、「10年」となっていては意味がありません。
このような信託契約書は、商事信託で顧客から報酬を貰って財産を管理していた時の契約書をそのまま流用したにすぎません。

(5)予備的な受託者の定めのない信託契約書

受託者が法人である「商事信託」とは異なり、「家族信託」では受託者は子ども等の自然人になります。
残念なことに、子どもが親よりも長生きで、また健康である保証はありません。財産の管理を託された子どもが親より先に亡くなった場合に、親の判断能力が低下していると、新たな受託者を指定することができません。
あらゆる事態に対応するためには、予備的な受託者を定めておかなければなりません。

3.まとめ

以上の通り、いわゆるひな形を使って自分で「家族信託」の信託契約書を作成することができないことはご理解いただけたのではないでしょうか。
弊所では、最先端の家族信託についても、お客様に寄添った「家族信託」の契約書を作成することが可能です。

また、今回は説明できませんでしたが、「家族信託」をする際には、登記や税務の問題を解決する必要があります。
弊所は司法書士法人や税理士法人を併設するワンストップ型の事務所ですから、上記の問題も対応が可能です。
「家族信託」に興味をお持ちでしたら、是非、弊所にご相談ください。

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