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相続のトラブル・紛争

兄弟が遺言書を偽造した!相続はどうなる?

2017.09.24

兄弟が遺言書を偽造した!相続はどうなる?

遺言が偽造されてしまったとき,偽造した人も相続人となるのでしょうか?今回は,遺言の偽造・隠匿等の問題についてご説明します。

1 事例

Aさんは2人兄弟の長男で,母親は数十年前に亡くなっています。今回父親が亡くなり,弟Bさんが自分に全財産を譲るという父の自筆証書遺言を持ちだしてきました。しかし,父は何年も前から認知症で,そんな時期に父が遺言書を書くことができたとは思えません。また,全財産をBさんに譲るという父の意向もこれまで一度も聞いたことがありません。疑問に思ったAさんがBさんを問い詰めたところ,本当は父の遺言は存在せず,Bさんが父の筆跡に似せて遺言書を偽造したことを認めました。

この事例のように,相続人となるはずの人が遺言を偽造していた場合,偽造した人は相続人の資格を失います。この制度を「相続欠格」といいます。
 今回の事例では,Bさんは相続人となることはできません。なお,これは裁判所などで特段の手続が必要なものではなく,法律上Bさんは当然に相続人となる資格を失うという仕組みになっています。

2 相続欠格とは

 相続欠格となるのは,遺言を偽造した場合だけではありません。相続について規定している民法では,相続欠格となる事由が他にも挙げられており,全部で5つあります。

⑴ 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ,又は至らせようとしたために,刑に処せられた者
⑵ 被相続人の殺害されたことを知って,これを告発せず,又は告訴しなかった者。ただし,その者に是非の弁別がないとき,又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは,この限りでない。
⑶ 詐欺又は強迫によって,被相続人が相続に関する遺言をし,撤回し,取り消し,又は変更することを妨げた者
⑷ 詐欺又は強迫によって,被相続人に相続に関する遺言をさせ,撤回させ,取り消させ,又は変更させた者
⑸ 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し,変造し,破棄し,又は隠匿した者

このうち,⑶から⑸が,遺言に関する不当な干渉をした場合について規定したものです。相続欠格となるのは,故意にこれらの行為を行った場合に限られます。つまり,うっかりして遺言を破いてしまったようなケースでは,故意がないので相続欠格となることはありません。

 さらに,行為についての故意だけでなく,相続に関して不当な利益を得る目的も必要とされます。例えば,自分に有利な遺言であったのに,わざとそれを破棄したり,隠したりしたときには,その行為によって不当な利益を得るわけではありません。ですから,この場合には相続欠格には当たりません。

3 代襲相続

 最初の事例の続きを見てみましょう。
Bさんは遺言を偽造して利益を得ようとしたので,相続欠格となりました。Bさんには,妻と娘(被相続人の孫)が1人います。Bさんが相続欠格となった以上,妻や娘も何も相続できないのでしょうか?

 相続欠格者に子がいる場合,その子は相続欠格者に代わって相続人となります。この制度を,「代襲相続」といいます。通常,代襲相続が起きるケースとしては,相続人となるはずの者が死亡していた場合が多いですが,相続欠格により本来相続人となるはずの人が相続できないという場合にも代襲が起こります。

したがって,この事例のケースでは,Bさんの娘がBさんを代襲して相続をするため,Aさんが2分の1,Bさんの娘が2分の1の割合で相続するという結論になります。
 なお,代襲相続は子や孫が相続をする制度なので,Bさんの妻が相続をすることはできないということに注意が必要です。

4 争いがある場合

 今回の事例のBさんのように,遺言を偽造したことを認めてくれれば良いですが,実際には偽造を認めず争いになるケースが多いようです。「他の相続人が遺言を偽造したのでは?本物の遺言を捨てたり,隠したりしているのでは?」という疑問がある場合,どのように対処すべきでしょうか。

まずは,遺言の筆跡が本人のものであるかを調査することになるでしょう。もし筆跡が本人のものと酷似していても,本人の認知症が進んでいることを利用して遺言を書かせたというおそれもあります。その場合には,遺言が作成されたという当時に,被相続人が遺言の内容について判断する能力があったかどうかを調査しなければなりません。そのためには,被相続人の病院のカルテ等を入手し,認知症がどの程度進んでいたかを検討する必要があります。
 調査の結果,遺言が偽造された可能性が高く,それでも相手が偽造を認めない場合には,遺言無効確認の調停・訴えを起こすこととなるでしょう。

5 まとめ

 今回は,遺言が偽造された場合についてご説明しました。ご自身が被相続人と離れて暮らしていて,ほかの兄弟が同居していた場合などで,兄弟にあまりに有利な遺言が残されていたとしたら,遺言が偽造されているのではないかと疑ってしまうこともあるかもしれません。そのようなとき,病院からカルテや入院記録を入手したいと思っても,病院が拒むこともあるでしょう。その場合,弁護士に依頼すると,弁護士照会制度というものを使ってカルテ等を取り寄せることができる可能性もあります。しかし,これは内容によるので,一度相談に行くことをお勧めします。
 また,兄弟間の相続トラブルは,感情的になりやすいものです。相続に関して経験豊富な弁護士に交渉を依頼すると,感情的な対立を避けることができるでしょう。

 

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