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遺産分割での紛争

相続人不明で遺産分割が進められない。どうしたら良いの?

2021.03.20

親子・兄弟・親族間で音信不通、家出・蒸発等で行方不明者がいる…そういった事態は、少なからず存在します。

「もう付き合いもないし、争っていないから別にこのままでいいや」そうお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、実はこのような、相続人の中に1人でも行方不明者がいるという状況下では、相続時の遺産分割が進められず、最終的に遺産を相続する迄に苦労します。
今回は、このような事態に陥らないために相続人の中に行方不明者がいる場合に取るべき手続きについて、ご説明したいと思います。

1.なぜ、行方不明者がいると遺産分割が行えない?

冒頭で相続人の中に1人でも行方不明者がいるとそのままの状態では遺産分割が行えない、とお伝えしましたが、それは一体なぜなのでしょうか。
遺産分割は、相続人全員で行う必要があり、相続人が1人でも欠けた状態での遺産分割協議は、法的に無効とされるためです。
※ここで、遺産分割協議の必要性についても簡単にご説明しておきます。

遺言書によってすべての遺産の行き先が指定されている場合や、そもそも相続人が1人しかいない(相続放棄や相続人の排除・相続欠落等による場合も含む)場合ですと、遺産分割協議を行う必要はありませんが、それ以外の場合(遺言書が無い・遺言書に記載のない遺産がある・相続人が複数人いる場合)は相続人全員で遺産分割協議を行う必要があり、遺産分割協議書を作成する必要があるのです。

しかし、行方不明者がいる場合は相続人全員で遺産分割協議を行うことが出来ません。そのため、遺産分割も行えずスムーズに相続を終えることができないのです。

2.行方不明者がいる場合に取るべき手続き

ここまで、相続人に行方不明者がいる場合、遺産分割を行うことが出来ないということが分かりましたが、遺産分割できないままでいる訳にもいかないですよね。
そのような場合に取ることが出来る2つの手続きについてご紹介します。

(1)失踪申告の申立て

失踪宣告とは、行方不明者の生死が不明な場合、家庭裁判所に失踪宣告の申立てを行うことで、法律上行方不明者は死亡したものとみなされる制度です。
失踪宣告は、2つに分けられ、①普通失踪と②特別失踪の場合に分けられます。

 

①普通失踪は、一般的にいう失踪のことを指し、この場合の失踪宣告は、行方不明の期間が7年を経過した場合に死亡したものとみなされます。
②特別失踪とは、戦争や船舶の沈没や震災などによって行方不明になる場合のことを指し、この場合は危難が去った後行方不明期間が1年続く場合に失踪宣告を受けると、危難が去った時に死亡したものとみなされます。
いずれの場合も、行方不明の相続人に子がいた場合はその子が相続人となる代襲相続が認められます。(失踪宣告による死亡認定日が、被相続人が亡くなった日より後の場合は、数次相続※となります。)
※数次相続=遺産分割中に相続人の一人が亡くなり、その相続人の相続が立て続けに発生すること。

 

(2)不在者財産管理人の選任

上記(1)で説明した失踪宣告の申立ては、法律上死亡したものとみなす強力な効果を持ちますので、音信不通で連絡先が分からない場合に気軽に利用するものではありません。
そこで、音信不通の場合や行方不明だが生存していることは分かっている場合は、不在者財産管理人の選任の申立てを行うことになります。

不在者財産管理人とは、行方不明者に代わりに財産管理を行う人のことです。相続発生時には、相続人の財産を管理します。
この不在者財産管理人を、家庭裁判所に選任してもらうことにより、財産管理人と残りの相続人間で遺産分割協議を行うことが出来ます。

一般的に、財産管理人には相続に違い関係の生じない第三者が選任されます。例えば、被相続人の友人や、行方不明者の親族と連絡がつく場合はその人などです。また、候補がいない場合や、先任者が不適切だと判断された場合は、家庭裁判所が弁護士や司法書士などの専門家を選任する場合があります。

 

3.失踪宣告を受け遺産分割を実施した後に行方不明者が現れた場合について

ここまで、行方不明者がいなくても遺産分割が行える方法をご説明しましたが、もしこれらの手続きを終えて行方不明だった相続人は現れた時はどうなるのでしょうか。
この場合、先ほど説明した「失踪宣告」は当然取り消されることになります。

そして、他の相続人たちは失踪宣告が取り消された時点で残っている財産を限度に行方不明だった相続人に変換すれば良いとされています。また、行方不明者が存命であることを知らずに行った財産処分などは有効で取り消されることはありません。

 

まとめ

今回は、相続人が行方不明の場合の対応についてご説明しました。いずれも手続きの際には家庭裁判所への申立が必要になり、申立てには書類の収集や届出の記入などが必要になります。

これらに時間を要してしまうと、相続税が発生する場合であれば相続税申告期限までに遺産分割が終了せず、続税の特例である小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例や配偶者の税額の軽減の特例などが適用できない申告となるリスクが生じます。

また、相続人の1人が遺産分割未了のまま亡くなり、数字相続が発生して更に遺産分割が複雑化する等のリスクも考えられます。

そうならないためにも、早い段階で一度専門家へご相談されることをお勧めします。
また、遺されたご家族がこのように苦労しないためにも、生前からご自身の遺言書作成なども有効な手段なので、ぜひ一度考えてみてはいかがでしょうか。

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