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相続のトラブル・紛争

遺留分ってなに?

2017.09.12

遺留分ってなに?

<相談内容>
先日,父が亡くなりました。相続人は母と兄と私の3人で,父の遺産は1億円の預貯金で,借金などはありません。父が作成した遺言書には,「全財産を長男に相続させる。」とだけ書いてありました。兄に「お母さんも私も遺産を一切もらえないなんておかしい。」と言ってみたのですが,「それが父さんの意思だから仕方ないだろ。」と言われています。私たちはこのまま何も相続できないのでしょうか。

相続に際し,相続財産の中から一定の相続人に対して法律上必ず留保されなければならない一定の割合を,遺留分といいます。今回は,遺留分とは何か,遺留分の計算方法についてご説明していきます。

1 遺留分とは

被相続人は,自己の所有する財産について,生前は自由に処分をすることができ,死後残る財産についても,遺言により処分方法を指定することができます。しかし,残された遺族からすれば,被相続人によって生計を支えられていた場合が少なくなく,被相続人の財産全てが自由に処分されてしまうと生活が出来なくなってしまうことがあります。そこで,民法は,残された遺族の生活保障という趣旨で遺留分という制度を設け,兄弟姉妹を除く法定相続人に対しては,被相続人の生前贈与や遺言によっても侵害できない最低限度の相続分を認め,遺留分が侵害されている場合には,侵害している人に対し,遺留分を請求する権利を付与しました。これが遺留分の制度であり,侵害している人に対して遺留分を請求することを遺留分減殺請求(「いりゅうぶんげんさいせいきゅう」と読みます)といいます。
 遺留分を有する兄弟姉妹以外の法定相続人というのは,配偶者,子などの直系卑属,父母などの直系尊属をいいます。
 冒頭の相談事例では,相談者とその母はそれぞれ被相続人の子,配偶者にあたるため,遺留分を有します。

2 遺留分の計算方法

 遺留分の割合は,直系尊属のみが相続人であるときは遺産の3分の1,その他の場合は遺産の2分の1です。これに法定相続分を乗じたものが,相続人個々の遺留分の割合になります。
 冒頭の相談事例で計算してみましょう。

 今回の相続人は配偶者と子なので,遺留分の割合は2分の1です。母親の法定相続分は2分の1,子が2人いる場合1人の法定相続分は4分の1です。つまり,母親の遺留分割合は4分の1(2分の1×2分の1),相談者の遺留分割合は8分の1(2分の1×4分の1)となります。父親の遺産は1億円あるので,母親は2500万円,相談者は1250万円の遺留分について,兄に減殺請求を行うことになるでしょう。

 今回は遺産である1億円を遺留分算定の基礎としましたが,実際にはより複雑になります。遺留分算定の基礎となる財産は,遺産の価額に一定の贈与した財産の価額を加え,この価額から債務の全額を控除したものです(民法1029条1項)。この贈与は,被相続人の死亡前1年前にしたものか,贈与当事者の双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってしたものの他に,相続人の中に婚姻,養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けたものがあるときはその受けたものも含みます。

3 遺留分減殺請求の方法

 遺留分減殺請求権行使の方法は,必ずしも訴えによることなく,裁判外でも,書面でも口頭でもかまいません。遺留分減殺請求権を行使する旨の意思表示をすれば足ります。ただ,口頭で行った場合には,後にそのような意思表示があったかどうか争いになるおそれがあるので,トラブルを避けるためには,配達証明付内容証明郵便によることをお勧めします。
 ただ,裁判外で遺留分減殺請求権を行使しただけで紛争が解決することはほとんどありません。実際には,家庭裁判所に調停を申し立てるか,地方裁判所に遺留分減殺請求訴訟を提起することになるでしょう。
 また,遺留分減殺請求権は,遺留分権利者が相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年,又は相続開始の時から10年これを行わないときには時効消滅するので,注意が必要です。いったん裁判外ででも行使しておけば,どの結果生じる請求権の裁判上の行使は,この短期消滅時効にかからないとされています。

4 まとめ

 今回は,遺留分についてご説明しました。相続案件において,遺留分の主張をしたいというケースは非常に多く見られます。特定の相続人にのみ財産を与えるという遺言が残されることは珍しくありません。被相続人の遺言の内容を見て,明らかにご自身の相続分が少ない,あるいは全くないという場合には,遺留分減殺請求をすることをお勧めします。

ただ,遺留分減殺請求権を行使するには時効の問題がある上,相続人間で紛争になりやすく,ご自身で解決するのは困難です。また,遺留分請求をしても,相手方から特別受益や寄与分などの主張がされることも多く,争点が複雑になりがちです。また,被相続人が複数の人に贈与をしている場合など,誰に遺留分減殺請求をすれば良いかという問題もあります。
紛争をスムーズに解決するため,遺留分を請求したい場合はもちろん,相手に遺留分を請求された場合にも,できるだけ早めに相続問題の経験豊富な弁護士に相談しましょう。

 

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