親族などが亡くなったとき、その相続人や受遺者は、その人が保有していた財産を引き継いでいくことになります。
相続や遺贈などによって、引き継いだ財産の額が大きいときは、相続税を納めなければなりません。
では実際に、どのような場合に相続税がかかるのでしょうか。
1.相続税とは
「相続税」とは、親族などが亡くなったときに財産を引き継いだ場合や、遺言によって財産をもらった場合で相続額が一定程度以上の場合に発生する税金のことで、「相続税法」に基づいて課税されます。
そもそも、親族の財産を相続するのになぜ税金を支払わなくてはならないのでしょうか。
それは、「富の再分配」の考えに基づいて行われています。
例えば、相続は受け取る側の能力や力に関係なく、ただ相続人だからという理由で莫大な財産を手に入れることも可能です。
多くの財産を持つ家に生まれた子供はずっとお金持ちのまま、逆に貧しい家庭に生まれた子供はずっと貧しいままという状態に陥ります。
このような状態を少しでも改善するために「相続税」という制度が導入されています。
2.相続税のしくみ
① 基礎控除額
相続税は必ずしも財産を受け取る人全員が納税するわけではなく、一定の金額以上の財産を残して亡くなった人にだけかかる税金です。
この一定の金額のことを「基礎控除額」といいます。つまり、相続した遺産の総額(債務や葬式費用等の非課税財産を差し引いた額)が基礎控除額を上回る場合に課税されます。
基礎控除額は、平成27年1月1日に以下のように改訂されています。
例えば、相続人が配偶者と子供2人の場合、法定相続人は3人となり、基礎控除額は4,800万円(3,000万円×600万円×3人=4,800万円)となります。
このケースでは、遺産の総額が4,800万円を超えた場合に課税されます。
また、相続放棄をした人がいても、「法定相続人の数」には含まれますので注意しましよう。
② 相続税のかかる財産
相続税のかかる財産には、被相続人が亡くなった日に保有していた現金・預金・株式・不動産(土地・建物)などがあります。不動産以外の財産は時価で評価し、不動産については路線価により評価します。
なお、家族名義の財産など被相続人の名義でない財産についても、その財産の原資が被相続人から出されている場合のように、実質的に被相続人の財産として評価できる財産については課税対象になります。
そのため、被相続人が新築の物件を購入し、登記されていない不動産や、預貯金や株式で家族名義や無記名のものも、被相続人が出捐者であるような場合は相続税の申告に含めなければなりません。
③ みなし相続財産
被相続人が亡くなる前に保有していた財産でなくても、相続の発生により相続人に支払われる財産は「みなし相続財産」であるとして相続税がかかります。
代表的なものとして、生命保険金と退職金があります。その他には以下のような財産が含まれます。
・被相続人が亡くなって支払われる死亡保険金や損害保険金等のうち、被相続人が負担した保険料に対応する部分の金額
・被相続人が亡くなって支払われる退職金、退職給付金、功労金等
・生命保険契約に関する権利
・被相続人が掛金や保険料を負担していた年金
・遺贈によって取得したとみなされる財産
・被相続人の遺言により、債務の免除を受けた場合の経済的利益
④ 相続税のかからない財産
基本的には②③でご説明したものが課税対象になりますが、その中でも一定の範囲において課税財産から差し引くことができ、これを「非課税財産」といいます。
非課税財産には、墓地や仏壇のような祭祀財産や相続税の申告期限までに国や地方公共団体等に寄付をした一定の財産などが含まれます。
しかし、投資目的で高価な仏像等を所有している場合は祭祀財産ではなく投資目的であるため、通常通り課税対象となります。
また、被相続人が納めなければばらなかった借入金や固定資産税等の債務は、相続財産の価格から差し引かれるため、控除できます。
ただし、保証していた債務や確定していない債務は含まれないので注意が必要です。
さらに、被相続人の葬式の際に相続人が負担した費用は相続財産の価格から差し引かれます。
具体的には、通夜・告別式で葬儀会社へ支払った費用や飲食費用、お寺への支払い等が「葬式費用」に含まれます。
なお、香典返しの費用や初七日等の法要に関する費用、お墓の購入費用等は「葬式費用」には含まれません。
3.贈与財産
相続や遺贈等で財産を取得した相続人が、相続開始3年前に被相続人から贈与された財産は、原則として相続財産に加算します。
また、相続時精算課税制度(贈与の際は贈与税を非課税にしますが、相続が発生したら、非課税にした分を精算して課税する制度です)の適用を受けた贈与財産の価格は、課税価格に加算されるため、相続税がかかります。
しかし、すでに支払いが済んでいる贈与税があれば、相続税額から差し引かれ、控除しきれなかった額については還付されますので安心です。
4.まとめ
相続税についてご説明しましたが、すでに相続が発生している場合は、申告期限の10か月以内に相続財産が非課税に該当するか判断し、相続税の計算をしなければなりません。
また、まだ相続が発生していないときは、非課税財産を正しく理解し、節税の対策ができる可能性があります。
どちらにしても、一からご自身で勉強するのは難しいと思いますので、税理士などの専門家への相談を検討してみてください。