相続税の負担が少しでも軽くなると嬉しいですよね。
今回は、どのようなときに相続税が安くなるのかをいくつかの例を挙げてご紹介します。
これから挙げるものは、相続税申告を行う大半の方が使いますので、ぜひご覧ください。
1.配偶者の税額軽減
これは、亡くなった方の戸籍上の配偶者は、亡くなった方の財産を相続しても、1億6000万円か法定相続分相当額のどちらか多い額までは相続税がかかりませんというものです。
つまり、夫の遺産の総額が1億6000万円以下なら、全財産を妻が相続すれば相続税は1円もかかりません。
また、遺産の総額が1億6000万円を超えていても、妻の引き継いだ財産のうち法定相続分に達するまでの財産額には、相続税がかかりません。
これが適用されるためには、税務署に相続税の申告書を提出する必要があります。
戸籍上の配偶者なら自動的に特例が適用されるわけではありません。
さらに、税務署に申告書を提出するまでに、配偶者が「何を」「いくら」相続するのかが決まっている必要があり、申告期限までに分割されなかった財産については適用を受けられません。
また、確認が必要な事項がもう一つあります。配偶者名義の金融資産の実質的な所有者が故人(被相続人)ではないか(いわゆる「名義預金」ではないか)ということです。
相続税では、財産の所有者を名義では判断しません。配偶者が実質的な所有者は被相続人とみるべき自己名義の金融資産を意図的に隠すなど、不正に相続税を逃れようとした場合、その部分にはこの「配偶者の税額軽減」の適用が制限され、重加算税が課されますので、お気を付けください。
2.小規模宅地等への相続税
被相続人又は被相続人と生計を一にしていた親族の事業または居住の用に供されていたなど、一定の要件に該当する場合、亡くなった方の居住用または事業用だった土地の課税価格を80%または50%に減額して相続税を計算することができます。
対象になる土地の区分は3つに分けることができます。
以下で上限面積・減額割合をご説明します。
①特定居住用
個人の自宅の敷地のうち、330㎡までの部分を80%減額できます。
(例)敷地面積が330㎡以下で、相続税評価額が1000万円の土地だったら、80%の800万円を減額でき、200万円として相続税を計算できます。
②特定事業用
個人が貸付事業用以外の個人事業や商売に使っていたお店や工場などの敷地のうち、400㎡までを80%減額できます。
③貸付事業用
貸家や賃貸マンション、貸駐車場の敷地など、個人が有償で貸していた土地のうち、200㎡までを50%減額できます。
区分 | 個人の用途 | 上限面積 | 減額割合 |
---|---|---|---|
①特定居住用 | 自宅の敷地 | 330㎡ | 80% |
②特定事業用 | 商売用の土地 | 400㎡ | 80% |
③貸付事業用 | 賃貸業の土地 | 200㎡ | 50% |
ここで、気を付けなければならないのは、対象になる取得者は、要件を満たした親族だけであるということです。親族とは、配偶者・六等身内の血族・三等身内の姻族のことです。相続人以外の親族に遺言で財産をのこした場合でも、以下の要件さえ満たせば対象者になります。
区分 | 引き継いだ人 | 要件 |
---|---|---|
①特定居住用 | ①配偶者 | なし |
②同居親族 | 申告期限までその土地を持ち続け、家屋に住み続けること。 | |
③別居親族 |
申告期限までその土地を持ち続けること。 死亡日後、家屋に移り住む必要はない。 ただし、その別居親族が、相続開始前3年以内に日本国内に ある自分または自分の配偶者の持ち家に住んでいなかった場合に限る。 つまり、持ち家を持っていてもその家に住んでいなかった場合は該当する。 |
|
②特定事業用 | 親族 | 申告期限までその土地を持ち続け、事業を続けること。 |
③貸付事業用 |
※申告期限…亡くなった日の翌日から10ヶ月以内
また、適用されるためには、「適用可能な土地を取得した人全員」の同意が必要です。そのため、当該土地について「遺産分割でもめている」「遺言はあるけれど同意が得られない」といった場合は、適用されません。
・相続税申告をしなければ適用されません。
・税務署に申告書を提出するまでに、適用を受ける土地の取得者が決まっている(遺産分割協議が済んでいる)必要があります。
・個人の居住用や事業用だったかは、相続開始直前の利用状況で判断するため、「元」自宅の敷地は対象外になります。
・申告期限を過ぎれば、適用を受けた土地を売っても、そこから引っ越しても、事業をやめても構いません。申告期限の前に土地を売る契約を結んだ場合も、引渡しが申告期限後なら、適用されます。
・分譲マンションの敷地権にも、適用されます。
・建物や構築物がない土地(更地)には、適用されません。そのため、駐車場として使っている土地は、コンクリート舗装をしていれば構築物があるので適用されますが(ただし、貸付事業用宅地として減額割合は50%となります。)、青空駐車場の場合は適用されません。
3.死亡保険金の非課税・死亡退職金の非課税
①死亡保険金の非課税について
亡くなった方が保険料を払っていた生命保険や損害保険の保険金を、個人の死亡により相続人が受け取ったとき、合計で「500万円×法定相続人の数」までの金額は相続税が非課税になります。
ただし、相続人以外の人が受け取った保険金は、課税対象となります。
また、非課税枠は、相続税申告をしなくても使うことができます。つまり、非課税枠を使えば、課税対象となる相続財産の価格の合計額が相続税の基礎控除額以下になるときは、相続税申告の必要はありません。
②死亡退職金の非課税について
亡くなった方が勤務していた会社などから支払われた死亡退職金を相続人が受け取ったとき、合計で「500万円×法定相続人の数」までの金額には、相続税がかかりません。死亡保険金と同様に、相続人以外の人が受け取った保険金は、課税の対象にはならず、また、非課税枠の範囲内の部分については、相続税申告をする必要はありません。
4.遺産を寄付した場合
①相続財産からの寄付(相続人などからの寄付)
亡くなった方から引き継いだ財産を、相続税の申告期限までに、
・国や地方公共団体
・既存の公益社団法人や公益財団法人その他公益事業を行う法人に寄付し、公益目的に使ってもらう場合、その財産には相続税が課税されません。団体名に「公益」と入っていなくても、学校法人、社会福祉法人、認定NPO法人など、公益事業を行う法人は数多くあります。希望する目的や使途に財産を使ってもらえる寄付先を探してもよいでしょう。これが適用されるためには、証明書類を添付した申告書を税務署に提出する必要があります。
②遺産を寄付しても非課税にならない場合
新たに特定の公益法人を設立するための寄付や、葬儀や通夜の参列者に対する香典返しの代わりに寄付する場合には、適用されません。また、財産をそのまま寄付する場合に限られるため、売却して得た金銭を寄付しても、相続税は非課税になりません。
③遺言による寄付(亡くなった方の意思による寄付)
亡くなった方が生前に遺言を作成し、上記のような寄付先に遺産をのこすと指定していることがあります。
相続税は原則として、「個人」が財産を引き継いだ時にかかる税金です。そのため、個人以外が財産を引き継いだときに相続税は課税されず、通常は法人税がかかります。ただし、公益目的事業を営む団体は法人税が非課税なので、寄付を受けた団体に何らかの税金がかかる心配はありません。
5.まとめ
今回は、相続税が安くなる例をご紹介致しましたが、いかがでしたでしょうか?
注意点もあり、複雑なこともありますがが、適用することができればお得なのでぜひ使ってみてください!