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相続税の申告

相続税申告に必要な書類(家屋(建物)、事業用財産について)

2021.05.13

皆さんは、税金の申告をご自身でされたことはありますか。事業をされている個人事業の方などは、所得税の確定申告をご自身でされたこともあると思います。
しかし、「相続税」の申告をしたことのある方はそれほどおられないのではないでしょうか。

相続税は、簡単にいうと、①どなたかが亡くなられた場合で、②一定の基準額(基礎控除額といいます。)を超えた遺産が存在する場合にのみ申告する必要が出てきます。そもそも、毎月入ってくる収入に課税される、比較的身近な所得税と違って、相続税は、①どなたかが亡くなった場合にのみ課税される点で、皆さんの周りでもそれほど頻繁に問題になることはないかもしれません。
それに加えて、②基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の人数」という計算式で計算されますので、それなりの遺産額でなければ相続税の納税は不要ということになります。

このように、所得税と比べると、相続税の申告に触れる機会というのは必ずしも多くはありません。そのため、所得税の確定申告であればご自身でしたことがあるという方はおられるかもしれませんが、相続税の申告をご自身でしたことがあるという方はあまりおられないのではないかと思います。

残された遺産の種類や数にもよりますが、率直に申し上げて、相続税申告はかなり複雑です。
何が複雑かをすぐにご説明するのは難しいのですが、例えば、どこまでの財産を相続税の課税対象となる「遺産」と考えるのか、遺産の中に不動産や株式がある場合、いったい「いくら」のものとして評価するのか、又は葬儀費用の扱いはどうなるのかなど、検討しなければならないことが多いうえに、1つ1つについて、専門的知識を要求されることも多いです。
そのため、相続税申告については、一般的には専門家にご相談される方が多いのではないかと思います。

但し、今回は敢えてご自身で申告を行うことを念頭に、相続税申告の必要書類のうち、「相続税申告の際に取得する必要のある書類」について、一部ご紹介したいと思います。
すべての必要書類をご紹介するのは分量的に難しいのですが、今回の記事をきっかけに、相続税申告について少しでも興味を持って頂ければと思います。

1.家屋(建物)に関する書類

(1)書類一覧

家屋の中には未登記のものもありますが、それらも相続税申告の対象になりますので、以下の表を参考にしながら、注意して取得しましょう。
また、家屋(建物)に関する書類は、土地に関する書類と重複するものが多いので、一緒に取得することをおすすめします。

書類名 取得できる場所 費用 注意事項
固定資産税課税明細書 毎年、土地所在地の市区町村役場(東京23区は都税事務所)から郵送される。
登記事項証明書 法務局(郵送可)。  600円 全部事項証明書を取得すること。
または登記情報 インターネットの登記情報提供サービス。  335円
固定資産評価証明書 建物のある市区町村役場。東京23区は都税事務所(郵送可)。 手数料は市区町村により異なる。  亡くなった年のものが必要。
名寄帳(土地家屋課税台帳・固定資産課税台帳) 建物のある市区町村役場。東京23区は都税事務所(郵送可)。 手数料は市区町村により異なる。  亡くなった年のものが必要。
建物図面/各階平面図 法務局(郵送可)。
インターネットの登記情報提供サービス。
法務局の場合、450円。登記情報提供サービスの場合、365円。 古い建物や未登記の建物にはないこともある。
建築計画概要書 建築確認申請時の書類。自宅に保管があるか確認。 増築の有無や建物の配置が確認できる。
建築工事請負契約書  自宅に保管があれば必要。  設計図面などで建物の概要が確認できる。
現地の写真 現地で撮影する。 Googleマップのストリートビューなども参考になる。
建物の賃貸借契約書 貸している・借りている土地がある場合に必要。なければ不動産会社に尋ねなければならない。  所有者と利用者が違う場合に必要。
管理委託契約書 貸している・借りている土地がある場合に必要。なければ不動産会社に尋ねなければならない。 所有者と利用者が違う場合に必要。

 

(2)ポイント

①分譲マンションの登記事項証明書
分譲マンションのように、1棟の建物の中に複数の独立した専有部分があり、その専有部分ごとに登記されている建物を「区分建物」といいます。
区分建物は、土地と建物が一体で登記されていることが多いので、建物の登記事項証明書を取得すれば、土地と建物の両方の登記状況が確認できます。ただし、比較的古いマンションは、土地と建物が別々に登記されていることがあり、その場合は土地と建物、それぞれの登記事項証明書を取得しなければなりません。

②建物図面/各階平面図
建物の位置を表した図面(建物図面)と建物の各階ごとの形状を表した図面(各階平面図)が一緒になっていることが多いです。

③建築計画概要書・建築工事請負契約書
建物の概要や配置が確認でき、宅地を評価する際に役に立ちます。建物の建築時に建築会社から受け取った書類一式に含まれていることが多いです。建築計画概要書は市区町村役場で閲覧することもできますが、写しを取得するには有料ですので、亡くなった方が保管していないか確認するとよいでしょう。

2.事業用財産に関する書類

(1)書類一覧

亡くなった方が事業を営んでおり、個人事業主だった場合、事業用財産も相続税申告の対象です。

書類名 取得できる場所 費用 注意事項
所得税の青色申告決済書または収支内訳書 控えの保管がなくても税務署で閲覧できるサービスがある。コピーは不可。   無料 確定申告を税理士に頼んでいた場合は税理士に確認すること。
帳簿(総勘定元帳、固定資産台帳など)  個人事業者が事業や決済のために作成する。一定年数の保管が義務付けられている。
書類(棚卸表、通帳など)

 

(2)ポイント

①事業用財産とは
事業用財産とは、商品・製品・原材料などの棚卸財産、機械装置・器具・自動車などの減価償却資産、売掛金、未収入金などが該当します。屋号名の預金口座や事業用の手許現金も、相続税申告の対象です。

②書類の集め方
所得税の確定申告書には、青色申告の方の場合は「青色申告決算書」、白色申告の方の場合は「収支内訳書」という書類が添付されています。青色申告決済書には賃借対照表というすべての事業用財産のリストや減価償却資産の明細が、また、収支内訳書には減価償却資産の明細が載っているため、事業用財産を把握することができます。亡くなった方の確定申告書類の控えを確認しましょう。

③申告書等閲覧サービスの活用
書類が見つからない場合は、「申告書等閲覧サービス」を利用することもできます。これは、相続人などが税務署へ事前連絡をした上で、必要書類をそろえて窓口に行くと、税務職員の立ち会いのもと、亡くなった方が過去に提出した申告書などを閲覧できるというものです。手数料は無料です。閲覧できるのは、亡くなった方の相続人または一定の代理人です。ただし、閲覧をするには、相続人全員の委任状と印鑑証明書が必要です。また、閲覧内容を持参した紙に書き写すことはできますが、コピーはできません。

3.さいごに

いかがでしたでしょうか。
相続税申告の必要書類のうち、家屋に関する書類や事業用財産に関する書類に限定しても、このように多くの書類が必要となるのです。今回の件をきっかけに、相続税申告の必要書類や手続の流れについて、調べてみるのもいいかもしれません。
なお、上記以外の書類や手続きについては、機会がありましたら別の記事で取り扱います。

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