どなたかがお亡くなりになって相続が発生すると、資産の量によっては相続税の話に発展します。
一昔前までは、相続税はそれなりの資産を持ったご家庭だけの問題でしたが、税制改正に伴って相続税が課税されるボーダーラインである基礎控除がぐんと引き下げられましたので、一般家庭でも相続税申告の必要なケースがかなり増えているところです。
各種特例を使えば相続税の納税自体は必要ないケースが多々ありますが、その特例を使うためには相続税申告を行わなくてはならないケースがほとんどですので、かなりのご家庭で相続税の申告自体は行わなくてはなりません。
どのような資産状況だと相続税申告を行わなくてはならないか、それをどのようなスケジュール感でどのような手順で行わなくてはならないか、しっかり把握しておかなくては申告漏れで多額の追徴を受ける恐れがありますので、相続が発生するご家庭では確実に相続税のことを考えておきましょう。
1 基礎控除
相続税申告が必要かどうかのボーダーラインである基礎控除額についてご説明します。相続税の基礎控除額は、【3,000万円+法定相続人の人数×600万円】と定められています。つまり、法定相続人が1人なら3,600万円、2人なら4,200万円、3人なら4,800万円ですね。
一般的な相続では法定相続人が2人か3人ぐらいのケースが多いでしょうから、上記のような金額が相続税の発生するボーダーラインになってきます。
そうなると、多少の預貯金を持っていて、そんなに田舎ではない場所にご自宅お持ちであれば、余分な資産をそんなにお持ちじゃなくても簡単に基礎控除額を超えてしまいます。
ですので、東京都内にご自宅をお持ちであったり、地方都市であっても市内の主要路線沿いにご自宅をお持ちであったりすれば否応なく相続税が発生するものです。
ただし、配偶者が相続する場合には配偶者控除を使うことでほとんど納税はゼロになりますし、ご自宅も小規模宅地等の特例を使うことによって納税がゼロになるケースが多いかと思います。
しかし、これらの特例を用いるためには期限内に相続税申告を行わなくてはならないこともあり、生前のうちからご自身の資産状況において、相続税申告が必要になるケースかどうか検討を進めておくことが極めて大事になります。
納税が必要になる場合、生命保険を用いて納税資金を準備しておいたり、その分の預貯金を確保しておいたりなど相続人のためにお金の準備をしておいてあげないと相続人が困りますし、相続税申告を行う場合の税理士などもある程度アテをつけておかないと困るでしょう。
2 スケジュール
相続税申告の申告期限は、相続の発生を知った日の翌日から起算して10カ月間になります。
通常のご家庭では、被相続人がお亡くなりになった場合、その日のうちにお亡くなりになったことを知るでしょうから、一般的には亡くなった日の翌日から起算して10カ月間が相続税申告期限になります。
しかし、被相続人と疎遠だったりなど本当に死亡したことを知らないケースもありますので、その場合には起算点がずれることを注意しておいてください。
3 税理士への依頼
相続税申告は、財産の評価が極めて大事で、評価の基準時や評価額の算定など間違っていると申告の内容が誤った納税になってしまうものです。そのため、ご本人で相続税申告を行う事はあまりお勧めいたしません。
これを相続人の代わりに行うために税理士という国家資格がありますので、相続税申告は税理士に任せるべきでしょう。また、適切に使うと税額がかなり減る特例も多数ありますので、どのような特例が使えるのか専門家でないと判断が難しいケースも多々あります。
資料がまだ揃っていない場合、被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍や相続人の戸籍、遺産に関する資料や遺産の評価額が分かる証明書、不動産を評価するための地図や地積測量図など、集めて確認しなければならない資料が山のようにあります。これらを適切に判断することや、実際に集める作業を行うとなると、専門知識なしには間違いのない資料収集が相当難しいものです。
以上のように、資料収集も財産評価なども難しいため、相続税申告は後日の税務調査を考えても必ず税理士依頼にすべきでしょう。
4 まとめ
以上のように、基礎控除が下がったことで相続税が発生するご家庭が増えましたし、期限もあり、税理士に依頼するとなるとそれなりの余裕のある期間も欲しいところです。
税理士も資料が揃っていない段階で依頼が来ると、資料収集からお手伝いしなくてはならないため、最短でも3ヶ月程度はお時間をいただきたいところです。なるべく早い段階で税理士に相談に行っておくことをおすすめします。
このような相続税申告の実情を理解した上で、早め早めに税理士事務所へ相談しておくことをお勧めいたします。理想としては、被相続人がお亡くなりになる前に、将来の相続税申告を見越して、担当する税理士を決めておいてあげるのが一番良いでしょう。