先日、父が亡くなりました。
生前、父は「自分の死後に子供たちがもめないよう遺言書は書いておくから。」と言っていたのですが、遺言書を実際に書いているかどうかは分かりません。
父が遺言書を残しているかについて、調べる方法はあるのでしょうか?
1. 遺言書の調査の可否
遺言書を作成しても、作成者が作成した事実や保管場所を誰にも告げないまま亡くなってしまった場合は、遺言書の存在に誰も気付かないまま、相続手続が終了してしまうというケースもあります。(遺言書がなければ、相続人間で、遺産をどのように分けるかについて協議を行い、遺産分割協議書を作成することによって相続手続は可能です。)
しかし、遺言書は、一定の場合、作成の有無や内容について調査することが可能です。調査方法は遺言書の種類によって以下の通り異なります。
2. 遺言書の調査方法
(1)公正証書遺言の場合
被相続人が公正証書で遺言書を作成していた場合、相続人等、法定の利害関係がある者であれば、公証役場で照会手続をすることによって、遺言書の有無を確認することができます。
公証役場では、平成元年1月1日以降に作成された公正証書遺言は、全てデータベース化して保存されているため、日本中のどこの公証役場からでも、保存されている遺言書の有無を確認することができます。なお、被相続人(遺言者)の生存中は対応不可ですので、生存中に遺言書の存在・内容を確認することはできません。
また、照会手続をするにあたっては、以下の書類等が必要になりますので、予め準備のうえ、来所の予約をとったうえで手続を申し込むとスムーズです。※手数料は無料です。
<必要書類等>
①遺言者(被相続人)の除斥謄本
②申請者と遺言者との関係性が分かる書類(戸籍謄本等)
③申請者の本人確認書類(免許証、パスポート、印鑑証明書など※直近3ヶ月以内)
④申請者が代理人の場合、申請者の実印を押印した委任状と申請者の印鑑証明書
⑤申請者の印鑑(持参)
上記書類等が揃っていれば、その場で照会を行い、回答結果を得ることができます。
照会の結果、公正証書遺言が作成された事実がなければ、該当する遺言書はない旨の回答がなされます。
他方、該当がある場合は、作成日、証書の番号、作成した公証人の名前と所属の公証役場が記載された回答書を発行してもらえますので、さらに遺言書の内容を確認したい場合は、遺言書の閲覧請求又は謄本の交付請求の申込みを行います。
なお、遺言書の有無の調査は全国の公証役場で可能ですが、謄本の交付請求は、被相続人が公正証書を作成した公証役場に対して行う必要があります。
もし、照会請求を行った公証役場が被相続人の遺言書を作成した公証役場でない場合は、交付申請書に照会請求を行った公正証書で署名認証を受け、それを作成公証役場に郵送してもらうことで謄本の交付を受けることができます。なお、署名認証には認証手数料がかかります。
(2)自筆証書遺言の場合
法務局における遺言書の保管等に関する法律(令和2年7月10日施行)により、自筆証書遺言については、遺言者が希望すれば、作成後に保管料を納付することで、法務局で保管してもらうことが可能になりました。
そのため、被相続人が、自筆証書遺言(遺言書の本文と日付、署名を全文直筆で記載して作成した遺言)を法務局に保管していれば、「遺言書保管事実証明書」の交付請求を行うにとによって、遺言の保管の有無を調査することができます。
なお、公正証書遺言の調査と同様、申請者は、被相続人と法定の利害関係を有する者であり、かつ一定の必要書類を準備する必要があります。
なお、郵送請求でも可能ですが、窓口で手続きをする場合は、予め法務局に予約をしてから行く必要があります。
<必要書類等>
①交付請求書
②遺言者(被相続人)の除籍謄本
③申請者と遺言者との関係性が分かる書類(戸籍謄本等)
④申請者の住民票の写し
⑤収入印紙800円(印紙を手数料納付用紙に貼って提出します。送付の方法による交付請求の場合は、住所を記載した返信用封筒の同封も必要です。)
※申請者が法人のときは代表者の資格証明書(3か月以内)
窓口での請求の場合は、運転免許証等により、本人確認をした後、「遺言書保管事実証明書」の受け取りが可能となります。
なお、法務局に保管がされていなければその旨の回答がなされ、保管がされていれば、遺言者の氏名、生年月日、遺言書の作成年月日、遺言書が保管されている法務局と保管番号が記載された回答書を受領できます。
さらに、遺言書の内容を確認したい場合は、「遺言書情報証明書」の交付請求を行うか遺言書の閲覧請求を行う必要があります。なお、遺言書の閲覧は、モニターを通じて確認をするか、あるいは遺言書の原本を確認するかの2通りがありますが、原本確認をしたい場合は、遺言書の原本が保管されている遺言書保管所でのみ閲覧が可能です。
また、遺言書の内容を確認するには、以下の書類が必要になります。但し、申請者が既に法務局から、「関係遺言書保管通知」を受領している場合、当該通知があれば①の交付請求書のみで請求が可能です。(関係遺言書保管通知とは、遺言者死亡後に、関係相続人が遺言書の閲覧や保管の有無を調査した場合に、遺言の存在や内容を知らない他の相続人に対して法務局からなされる通知です。)
<必要書類等>
①交付請求書
②法定相続情報一覧図の写し(住所の記載があるもの)
or
③②がない場合は以下が必要
(i)遺言者の出生時から死亡時までの全ての戸籍(除籍)謄本
(ii)相続人全員の戸籍謄本
(iii)相続人全員の住民票の写し(作成後3か月以内)
④収入印紙1400円(なお、原本の閲覧は1700円)
※請求人が法人の場合は代表者の資格を証する書面(3か月以内)
3. 小括
以上の通り、一定の場合は、遺言書の有無や内容の調査することが可能です。
遺言書があれば、煩わしい遺産分割協議は不要ですので、まずは作成状況だけでも調査をしてみるとよいでしょう。