相続とは、相続人の状況に応じて様々な問題があり、法律的にクリアしなければならない事柄が多くあります。
例えば、遺産分割協議を行っての相続では、共同相続人の間で利益相反がないか、相続権を剥奪された被廃除者が遺産分割協議に加わっていないか等が挙げられます。
また、法律的問題に不備がなくても相続人が漏れていれば、その遺産分割協議は無効となります。
すなわち、相続業務において一番の基本は、【相続人の確定】にあるといえます。相続人を確定するためには、被相続人の出生から死亡までの戸籍を不備なく揃え、そのうえで戸籍に記載されている被相続人の身分関係を間違えることなく確認することが必要です。
しかし、時代により戸籍の様式や記載方法が違っていたり、古い戸籍は手書きのため読みにくいものです。今回は、戸籍の基本事項として、戸籍の種類と歴史についてご説明します。
1.戸籍とは
日本人が出生してから死亡するまでの、身分関係を登録・証明するものです。
親子関係(父母の氏名、続柄)、養親子関係、婚姻・離婚、死亡などを証明することができます。
2.戸籍の種類
戸籍は、3つの種類にわけられます。
1)現在戸籍
現在戸籍とは、現に在籍している人がいる戸籍です。現在戸籍は450円で取得できます。また、現在戸籍を取得する際は、戸籍謄本を取得するか戸籍抄本を取得するか選ぶことができます。
・戸籍謄本
役所に保管されている戸籍の原本全部(全員の記載事項)。戸籍に記載されている全部の事項を搭載されたもの
・戸籍抄本
戸籍の原本の一部(請求された特定の個人の記載事項)を抜粋して写した書面のこと 例:筆頭者のみを請求したもの
基本的に、婚姻など戸籍届出などの添付や、パスポート申請、資格取得のための提出書類などに必要なのは、戸籍の謄抄本です。
2)除籍
戸籍に記載されている人が死亡したり、婚姻などにより別の戸籍に移動することで、最終的に在籍者が誰もいなくなった戸籍です。筆頭者が死亡しても、その妻や子どもがひとりでも残っている場合は除籍にはならず現在戸籍になります。750円で取得できます。
3)改製原戸籍
改製原戸籍とは、改正により編製替えされた従前様式の戸籍のことです。戸籍は、社会の変遷や時代の求める様式によって、様式が変わってきました。戸籍の様式が変更されると、変更前の旧様式は、閉鎖され、新しい様式に沿った戸籍が改めて編製されます。
改製の原(もと)になった戸籍ということで『改正原戸籍』と呼ばれています。750円で取得できます。
3.戸籍の歴史
戸籍の歴史は古く、制度として確立されたのは645年の大化の改新後といわれています。当時の戸籍は、課税や賦役、徴兵等を目的として作成されていました。この時代の戸籍は、各地それぞれの方法・様式で作られ、全国で統一されていませんでした。
全国で統一された戸籍様式が初めて定められたのは、明治4年太政官布告の時です。実際に実施されたのは翌年、明治5年からなので、実施の年を基準に『明治5年式戸籍』と呼ばれています。また、この年の干支が壬申であったことから干支にちなんで『壬申戸籍』とも呼ばれています。
戸籍は、社会の変遷や時代が求める要請によって様式が変更されており、戸籍の様式や記載内容及び記載例等が変更されると、変更前の旧様式、旧記載内容及び旧記載例は、原則として閉鎖され、新しい様式に沿った戸籍が改めて編製されてきました。このような旧様式・旧記載内容は、改製の原(もと)になった戸籍ということで【改製原戸籍】と呼ばれています。
最初に定められた明治5年式戸籍は、その後「明治19年式戸籍」「明治31年戸籍」「大正4年式戸籍」と変わっていきました。この、明治5年式戸籍から大正4年式戸籍までを「旧法戸籍」といいます。
これに対して、昭和22年に公布された新民法に基づき改正された戸籍法が昭和23年に施行されました。これ以降に作成された戸籍を「現在戸籍」と言います。現行戸籍の原本は、戸籍法施行規則に従い、各市町村でB4判の丈夫な紙に記録し調製することになっていましたが、平成6年の戸籍法の一部改正により、磁気ディスクに記録して調製できるようになりました。これを「戸籍のコンピュータ化」といいます。
~戸籍(様式)の変遷~
明治 5年式戸籍
明治5年2月1日に、明治4年太政官布告第170号が施行されてつくられた戸籍
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明治19年式戸籍
明治19年の内務省令により改製され、この戸籍から除籍制度が設けられた
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明治31年式戸籍
明治31年民法(旧法)が制定されたことに伴い、戸籍制度も根本的に改められ、
編製単位は「戸」から「家」となり、戸籍簿の他に、身分登記簿という制度が創設される
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大正 4年式戸籍
大正3年の戸籍法の改正により、戸籍簿と身分登記簿の二本立てが廃止され、
大正4年式戸籍に一本化された
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昭和23年式戸籍
昭和23年の改正民法の施行に伴い戸籍法も全面的に改正され、
編製単位が、それまでの「家」から「夫婦とその間の未婚の子」となる
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昭和改製原戸籍
昭和32年に、それまでの「家」を単位とした戸籍から
「夫婦とその子供」を単位とした戸籍に改製される前の戸籍
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平成改製原戸籍
古い様式から現在戸籍に「改製」される前の戸籍
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現在戸籍
平成6年の法改正によりコンピュータ化が可能になり、電子化された戸籍
4.まとめ
今回は【戸籍の基本】についてご説明させて頂きました。
被相続人の生い立ちが複雑で、取得手続きに不安を感じられている方等は、市町村役場や手続き代行を行っている弁護士事務所など、まずは専門家にご相談されてみてはいかがでしょうか。