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相続の基礎知識

遺言信託ってなに?

2021.04.24

最近テレビやネットなどで「遺言信託」という言葉を目にすることが多くなってきました。

みなさんは、遺言信託とはどのようなものかご存じですか?ここでは、遺言信託について分かりやすくご説明していきます。

1.遺言信託ってなに?

「信託」とは、いろいろな手続きや決定を、信頼できる者に委託することをいいます。活用方法は様々ですが、相続の場合は、委託者(被相続人)が受託者(信頼している者)に対して、受益者(財産を残したい方)の生活支援や教育面などのために財産を利用することを目的として、財産の管理や処分を任せるという使い方が一般的です。
このような信託の方法としては、自己信託や信託契約などがありますが、このうちの遺言に関して行う信託のことを「遺言信託」と呼びます。

ただ、信託業は信託銀行以外の人が行うことを禁止されていますので、相続対策として「遺言信託」を利用することがあまり多くないのが現状です。

信託銀行は、遺言書の作成をサポートしたり、遺言書を保管するサービスや遺言の内容に従って執行業務を行うなど、遺言に関係する業務も取り扱っているため、まとめて相談することができます。このようなサポートを信託銀行では「遺言信託」と呼んでいます。

信託銀行に全てのサポートを任せることができるので、管理などを気にする必要がなく、とても楽ですが、遺言書を預けておく際の年間保管料や遺言執行が完了したときに、執行報酬が発生しますので、事前に費用面を確認した上でご依頼されることをお勧めいたします。

2.信託は相続対策になるの?

遺言による相続対策では、二次相続の内容まで指定することができず、必ずしも被相続人(信託契約では委託者といいます。)の希望通りに相続がされるかは保障できませんので、そういった意味では信託の契約を締結することで遺言よりも柔軟に相続対策をすることができると言えるでしょう。信託はあくまでも「契約」ですので、委託者(被相続人)が契約内容を比較的自由に決めることができるという点が遺言との大きな違いです。

①受益者連続型信託

受益者連続型信託とは、委託者が受託者に財産を信託する際に、受益者が死亡した場合、特約として、次に誰に承継するかあらかじめ決めておくことができる信託のこといいます。通常の場合、受益者が死亡すると、財産を保有する受益権が相続されることになるため、受益者の相続人が受益者になります。ですが、特例によって受益者の次の受益者を決めることができますので、受益者が死亡した後であっても委託者の希望通りに相続させることができるのです。

例えば、相続人が妻だけの夫の場合、自分たちには子供がいないため、夫が亡くなった場合の「受益者は妻、妻が亡くなった後の新たな受益者は姪(姉の子供)」と信託契約に定めておけば、我が子のようにかわいがっていた姪を受益者に指定することができます。ですが、特例を定めていない場合は、妻の法定相続人が受益者になりますので、姪には承継させることができません。

また、遺言の場合は受遺者(相続を受ける者)が亡くなった場合、次の受遺者を決めることはできませんので、受益者連続型信託は、遺言ではできない次の受託者を指定するという良い点があると言えるでしょう。

②遺言代用信託

遺言代用信託とは、遺言と同じように、本人が亡くなったことによって開始される信託のことをいいます。
具体的な仕組みとしては、委託者が、自分の死後に受益者となる者を予め指定しておき、委託者死亡時に、指定された受益者が受益権を取得するという仕組みになります。この場合、委託者生存中から信託はすでに開始していますが、委託者が亡くなるまでは委託者に受益権があり、委託者が亡くなって初めて受益者は受益権を持つことになります。

このように、委託者が亡くなった後で効力が発生しますので、遺言書の代用として遺言代用信託を使用されることが多いようです。また、遺言書と同じように、委託者の考えが変われば、信託契約を変更することができますので、その点もメリットだと言えるでしょう。

3.後見信託ってどんな制度なの?

認知症などによって、ご自身で財産を管理することが難しくなる前に、信託契約を行い、認知症になっても財産を望んだ形で管理することができます。信託契約の内容としては、委託者の財産運用を受託者に管理してもらい、運用によって発生した成果については委託者が受け取ります。

委託者が認知症などの発生により、財産を管理することが難しくなったときに、任意後見契約が開始し、後見人によって財産の管理がなされます。信託契約時に、委託者が死亡したときに誰を受益者にするかも決めておきます。そうすれば、財産管理については信託、委託者の監護については任意後見で行うことができますので、委託者本人が望んだ形で相続や財産承継をすることが可能です。

また、任意後見の契約だけでも足りるのではないかと思われるかもしれませんが、成年後見人はご本人の財産を減らす行為が禁止されていますので、贈与したり処分することが認められません。しかし、信託契約であれば、契約に基づき委託者の希望通りに財産を運用したり、処分することができますので、任意後見の契約だけでは不十分だと言えるでしょう。

まとめ

信託についてご説明しましたが、いかがでしたか。
遺言書ではカバーしきれない部分も、信託契約であれば思い通りの相続が実現できるかもしれません。信託銀行や法律事務所など、まずは専門の方にご相談されてみてはいかがでしょうか。

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