inheritance basis

相続の基礎知識

贈与って何?ー相続との違いー

2021.04.10

相続に関連する「贈与」ということばを耳にしたことはありますか?また、「相続」との違いについてご存知でしょうか?
今回は、「贈与」について詳しくお話したいと思います。

1.贈与とは

贈与とは、ある人が別の人物へ、無償で金銭や物品などを贈ることをいいます。無償ではなく、金品を受け取る代わりに対価を求める場合は贈与とはいえません。
この贈与関係というのは、双方の合意があって成立しますので、AさんがBさんにお世話になっているからと金品を贈ろうとした時、Bさんが拒否した場合は贈与成立となりません。
なお、ここでいうAさんは贈与者、Bさんは受贈者と呼ばれます。

単に贈与と言っても、生前贈与と死因贈与の2つに分けられます。
それぞれについてご説明したいと思います。

①生前贈与
贈与者が生きているうちに贈与すること。

②死因贈与
生前に取り決めていた贈与の約束を、贈与者の死後に行うこと。
贈与は上記2つに分けられますが、「相続」とは異なります。相続は財産を遺す人が亡くなった時点から発生するものですが、贈与は生前に履行されたり、取り決めが行われていたりするからです。

死因贈与は、「遺贈」と混同されることもありますが、遺贈は遺言書によって一方的に遺産を渡す意思を残しているので、2つは異なります。
なお、生前贈与であっても死因贈与であっても双方の合意があれば口約束でも認められます。しかし、贈与の事実が存在したか否かについては、口約束のみですと、事実関係を明らかにすることが困難になります。

特に、死因贈与については死後に贈られるため口約束だと事実関係を明らかにさせるのが難しいのが一般的です。贈与をしておきたいと考えているのであれば、きちんと契約書を結んでおくと後々に争いが発生しにくくなるため、是非弁護士に契約書の作成をご依頼ください。です。なお、死因贈与について、契約書がない場合であっても、相続人の同意があれば死因贈与として認められ、有効な状態で遺産相続を行らうことが可能です。

2.相続と一緒で贈与するにも税金がかかる?

相続時に一定の条件で相続税が発生するのと同様に、贈与の際も「贈与税」という税金が発生する場合があります。どのような時に発生するのかみていきましょう。
まず、贈与税の課税方法には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあります。
一定の要件に該当する場合に、相続時精算課税を選択することができますが、基本的には暦年課税が適用されます。

※相続時精算課税:60歳以上の父母または祖父母から、20歳以上の子または孫に対して財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度。贈与時は、贈与額が2500万円までは贈与税が発生せず(2500万円を超えた部分の金額については一律に20%の贈与税が課されます。)、その後相続時に財産贈与と、その他の相続財産を合計した額をもとに計算した相続税額から、既に支払った相続税額を精算する方法。

暦年課税とは、毎年1月1日から12月31日までを課税期間とし、この1年間でもらった財産の合計額に課税されます。
また、贈与税には年間110万円の基礎控除額あります。(基礎控除額=すべての納税者に無条件に適用される控除のこと)
ですので、1年間にもらった財産の額が110万円以下の場合は非課税となり、贈与税申告は不要です。
なお、この時の基礎控除とは、受贈者に適用されるもので、贈与者の人数に関係なく、、受贈者1人当たりに110万円と決まっています。
贈与額の計算方法は、以下の通りです。

【贈与額の計算方法】
①1月1日から12月31日までの1年間でもらった財産の合計額を出す。
②合計額から基礎控除額を差し引く。
③残りの金額に税率を掛け、速算表の控除額を差し引く

速算表とは、下記表のことです。なお、特例税率とは、直系尊属(祖父母や父母など)から、その年の1月1日において20歳以上の者(子・孫など)への贈与税の計算に使用します。

 

課税価格控除額
(1年間でもらった財産の額-110万円)
税率 控除額 特例税率 控除額
200万円以下 10% なし 10% なし
300万円以下 15% 10万円 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円 20% 30万円
1,000万円以下 40% 125万円 30% 90万円
1,500万円以下 45% 175万円 40% 190万円
3,000万円以下 50% 250万円 45% 265万円
4,500万円以下 55% 400万円 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

 

例えば、祖父から800万円贈与された場合は、
①800万円
②800万円-110万円=690万円
③690万円の税率は40%なので276万円-65万円=211万円となり、
211万円が贈与税額となります。

※受贈者(孫)が20歳以上の場合には、特例税率が適用され、207万円(30%)−30万円=187万円が贈与税額となります。
ちなみに、余談にはなりますが1年間でもらった財産の額が100万円以下であれば非課税なので、暦年贈与という形で毎年110万円以下の額で贈与を続けるという相続税の節税方法もあります。もっとも、ご自身のみで暦年贈与を利用して相続税の節税を行った場合、税務調査などでトラブルになる可能性があるため、暦年贈与を利用して節税をご検討される場合には、是非当事務所にご相談ください。

3.贈与税がかからないケース

実は、贈与は一律で条件に当てはまれば贈与税が発生するのではなく、贈与税が発生しないケースもあります。
それは、以下のケースです。(国税庁HPより)

①法人からの贈与
贈与税は個人から財産を贈与し取得した際にかかる税金のため、当該ケースの場合は受贈者に所得税がかかります。

②生活費や教育費
夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てる為に取得した財産で、通常必要と認められるものは贈与税がかかりません。この場合、名目が生活費や教育費であっても、預金したり株式や不動産などの買入資金に充てていたりする場合は贈与税がかかる場合があります。

③公益事業用財産
宗教や慈善、学術その他交易を目的とする事業を行う者が取得した財産で、その公益を目的とする事業に使われることが確実なものも贈与税はかかりません。

④奨学金
奨学金の支給を目的とする特定公益信託や財務大臣の指定した特定公益信託から交付される金品で一定の要件に当てはまるものも贈与税がかかりません。

⑤心身障害者扶養共済制度に基づく給付金
地方公共団体の条例により、精神や身体に障害のある人またはその人を扶養する人が心身障碍者共済制度に基づいて支給される給付金を受ける権利を取得した場合、給付金には贈与税はかかりません。

⑥公職選挙費用
公職選挙法の適用を受ける選挙の候補者が、選挙運動のために金品を取得した場合も贈与税はかかりません。

⑦香典・見舞金
個人から受ける香典や花輪代、年末年始の贈答、祝物または見舞いなどのための金品で、社会通念上相当と認められるものに関しても贈与税はかかりません。

⑧相続開始年の贈与
この場合、贈与税はかかりませんが、相続税課税の対象となります。

このように一律に贈与税がかかるわけでなく、例外もありますので知っておくと良いでしょう。

まとめ

贈与および贈与税についてご説明しましたがご理解いただけたでしょうか。
相続との違いについて正しく理解しておくことで、相続発生前に生前に対策できることの幅が広がりますよね。
分からないことがあれば、ぜひ一度専門家に相談してみてくださいね。

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