パスポートの申請に戸籍謄本を添付しますが、その戸籍にはどのようなことが記載されていて、何を証明しているのか知っていますか?
戸籍の制度やしくみについて学んで行きましょう。
1.戸籍の制度について
戸籍には人の出生・婚姻・離婚・縁組・離縁・死亡など、親族の身分関係を証明できる事項が記載されています。人が生まれてから亡くなるまでの一生を登録し、証明する制度といえます。
戸籍法では、日本人と日本に在住する外国人の夫婦や親子が対象となります。一般的には、出生時に管轄の役所に出生届を提出し、戸籍に出生日や届出の事実が記載されます。その後、結婚により婚姻届を提出すると新しい戸籍が編成され、その戸籍には婚姻の事実や婚姻前の従前の戸籍、婚姻届の提出日等が記載されます。
また、離婚届を提出すれば戸籍筆頭者でない方(多くは女性側になります。)が戸籍から抜け、新しい戸籍を編成するか、婚姻前の戸籍に戻ることになります。
しかし、現在の戸籍には二世代までしか登録ができないため、子供を連れて離婚をする場合は、元の戸籍には戻らず、新しい戸籍を編成し、そこに子供が入ることになります。最後に、死亡すると死亡届が提出され、戸籍に死亡したことの事実や死亡日が記載されます。このように、戸籍には出生から死亡までの記録が全て記載されることになります。
戸籍に関することを定めた法律で「戸籍法」があり、概要は次のとおりです。
すなわち、戸籍は原則として、市区町村の区域内に本籍を定める夫婦及びこれと氏を同じくする子ごとに編成し(戸籍法第6条)、氏名、出生年月日、戸籍に入った原因及び年月日、実父母の氏名及び実父母との続柄、養子であるときは養親との続柄、夫婦については夫又は妻である旨などを記載しなければなりません(戸籍法第13条)。
また、戸籍の記載は届出や報告、裁判などによって行います(戸籍法第15条)が、ほとんどが届出によって行われています。虚偽の届出を行い、真実ではない事項を記載させた場合は、公正証書原本不実記載罪が認められ、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられます。
2.戸籍の歴史
全国統一で身分の登録制度が設けられたのは明治時代に入ってからです。大きく7回制度が変わっており、①明治5年式戸籍②明治19年式戸籍③明治31年式戸籍④大正4年式戸籍⑤応急措置法施行中戸籍⑥現行戸籍⑦電子情報処理組織を用いた戸籍があります。
①明治5年式戸籍
施行の干支にちなみ「壬申戸籍」と呼ばれます。人口の調査を目的として作られた制度で、家(戸)ごとに作成し、世帯の居住関係を記録するもので、身分登録簿の機能も果たしていたそうです。
②明治19年式戸籍
今までの戸籍をきれいに整えるために戸籍の制度を改正しました。
③明治31年式戸籍
明治31年に民法が施行され、それに伴い戸籍法が施行されました。戸籍はその家を示すことになり、戸籍は身分関係を証明する公的な証明書として求められるものになりました。また、戸籍の他に身分を証明するものとして、「身分登記簿」も作られました。
④大正4年式戸籍
戸籍の様式が新しくなり、「身分登記簿」の制度が廃止されました。
⑤応急措置法施行中の戸籍
戦後の日本国憲法の施行に伴い家族法の民主的改正が行われ、応急措置法が制定されたため、戸籍の制度が改正されました。なお、民法応急措置法は昭和22年12月31日まで効力がありました。
⑥現行戸籍
戦後の民法の改正に伴い、戸籍法が全面改正されました。この制度は現在も効力があり、家制度が廃止され、戸主と家族を記録していたものから個人の登録へと変わったことが大きな変化であると言えます。
⑦電子情報処理組織を用いた戸籍
電子情報処理組織(コンピュータ)を用いた戸籍では、磁気のディスクに記録を行います。コンピュータ化することにより、事務手続きの効率化や円滑なサービス提供につながり、現在はこの制度が適用されています。
3.戸籍法について
戸籍の処理は、「戸籍法」に基づいて、管轄の役所が行います。なお、「戸籍法」の施行地域は日本ですが、日本の領土、領海、日本船舶が含まれています。そのため、日本の領海にある外国の船舶や外国の領域にある日本の船舶で出生や死亡の事実があった場合は、戸籍法が適用されます。
また、これは外国人であっても戸籍法の適用が認められます。原則として、戸籍法に定められた身分に関する事実が発生した際に、日本国内での事件であれば、日本人・外国人に関係なく戸籍法の適用が認められます。そのため、外国人が日本で婚姻や認知、養子縁組をするときも戸籍法が適用されます。
4.まとめ
今回は、戸籍の制度や歴史についてご説明してきました。現在のコンピュータ制度になる前は、手書きで戸籍事項の登録がなされていました。
また、昔の戸籍は現在の戸籍とは異なり、「家」ごとに作成されていたため、何人もの人が登録されており、5枚以上にわたって家族1人1人の情報が記載されています。
ご自身が生まれてから亡くなるまでの戸籍や、先祖の戸籍等は役所で取得することができますので、戸籍の歴史と共に家族の歴史を知っていくのも良いかもしれません。