procedure 2

相続手続き

未成年者が相続放棄をするときの手続

2017.12.01

未成年者が相続放棄をするときの手続

夫が若くして亡くなった場合など,配偶者と未成年の子どもが相続人となるケースがあります。子どもに相続放棄をさせたいとき,どのような手続が必要でしょうか。未成年者は一人で有効な法律行為ができないため,未成年者が相続放棄をしようとする場合,その法定代理人が代理して相続放棄の申述を行わなければなりません。未成年者であれば,親権者(離婚等していない場合,父母)が法定代理人に当たります。
今回は,親権者が未成年者を代理して相続放棄を行おうとする場合の手続についてご説明します。

1 親権者は相続放棄しない場合

Aさんの夫が亡くなり,Aさんと未成年の子どもBが残されました。夫の財産は住宅ローン返済中の自宅のみです。Aさんは,Bに住宅ローンを負わせたくないので,自分一人で住宅ローンも含め自宅を相続し,Bには相続放棄をさせようと考えています。Bの相続放棄手続を,Aさんが代理で行うことは可能でしょうか。
 この事例の場合,結論から言えば,AさんがBを代理して相続放棄をすることはできません。
 民法826条には,「親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については,親権を行う者は,その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。」と規定されています。つまり,親権者とその子との間で利益が相反する場合,親権者はその子の代理人となることはできず,特別代理人を立てる必要があるのです。
 そして,利益が相反するかどうかというのは,その行為の外形(客観的な側面)から判断されるので,親権者の意図や行為の結果などは考慮されません。

 では,今回の事例はどうでしょう。AさんがBの相続放棄を代理で行うという行為は,AさんとBの利益が相反すると判断されるでしょうか。Aさんには,Bに住宅ローンを負わせたくないという意図があり,相続放棄をすればBは住宅ローンを負わないで済みます。しかし,AさんがBの相続放棄を行うと,その分Aさんの相続分が増えることになります。したがって,外形から見ると,Aさんの行為はBと利益が相反すると判断されるのです。
 そこで,Aさんは特別代理人の選任を請求しなければなりませんので,子どもBの住所地を管轄する家庭裁判所に,特別代理人選任審判の申立てをする必要があります。ちなみに,未成年の子どもが複数人いる場合には,それぞれに特別代理人を選任しなければなりません。特別代理人となるのは,祖父母や親戚であることが多いようですが,勿論弁護士もなることができます。

2 親権者も相続放棄をする場合

Cさんの夫が亡くなり,Cさんと未成年の子どもDが残されました。夫には多額の借金があったので,CさんはDと共に相続放棄をしたいと考えています。Dの相続放棄手続を,Cさんが代理で行うことは可能でしょうか。
 この事例では,Cさんも相続放棄を行うので,Dが相続放棄をした結果Cさんの相続分が増えるという訳ではありません。つまり,客観的に見ても,CさんとDの利益が相反するとは言えないため,CさんはDの法定代理人として相続放棄をすることができます。

 ただ,CさんがDの法定代理人として相続放棄できるのは,①Cさんの相続放棄の後に行う場合か,②CさんとDが同時に行う場合に限ります。Dの相続放棄を先にする場合,たとえCさんが内心では自分も後から相続放棄しようと思っていても,それは外形から判断できないので,利益が相反すると判断されてしまうからです。

3 未成年者が相続放棄できる期間

Eさんは離婚し,未成年の子どもFの親権者となりました。最近,元夫の債権者から借金の返済を求める通知が届き,初めて1年前に元夫が死亡していたことを知りました。元夫の死亡から1年経っていますが,EさんがFのために相続放棄をすることはできるでしょうか。

 通常の成年者が行う相続放棄は,「自己のために相続の開始があったことを知った時」から三カ月以内に申述の申立てをしなければならないと決められています。「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」とは,被相続人(亡くなった人)の死亡を知った時,そして自分が相続人となったことを知った時のことをいいます。
 しかし,未成年者の場合,相続放棄をするかどうか判断するのは法定代理人です。そこで,未成年者の相続放棄は「法定代理人が未成年者又は成年被後見人のために相続の開始があったことを知った時」から三カ月以内に行うと定められています。したがってこの事例では,Eさんが元夫の死亡を知ってから三カ月の間に相続放棄をするかどうか決めることができます。三カ月では決められない場合には,期間伸長の申立てが認められることもありますので,お早めに弁護士に相談すると良いでしょう。

4 まとめ

 今回は,未成年者の相続放棄手続についてご説明しました。未成年者が相続放棄をするときには,親権者が代理人となれるケースかどうかをきちんと確認することが不可欠です。そのためには弁護士に事情を説明し,代理人となれるかどうか判断してもらうのが確実でしょう。
 また,親権者が代理人になれるとしても,相続放棄の申述をするには様々な添付書類があり,記載方法にも注意しなければなりません。相続放棄について経験豊富な弁護士に依頼して作成してもらうか,書き方についてアドバイスをもらうことをお勧めします。

困ったときに頼りたい安心の弁護士ニュース

電話予約

050-5799-4483

Web予約

無料相談は
こちら Zoom等で対応可能です