亡くなった方の遺産を誰がどのように引き継ぐのか決まったら、名義変更などの手続きを行わなければなりません。
遺産分割が終わったら、どのような手続きが必要なのかご説明いたします。
1.不動産について
相続が原因で行う所有権移転登記のことを「相続登記」といいますが、亡くなった方(被相続人)の名義の土地を相続で受け取ることになった場合、管轄の法務局で「相続登記」を行わなければなりません。
遺言書や遺産分割協議、遺産分割調停などで被相続人の不動産を相続する方が決まったら、受け取る方が法務局で登記申請を行います。
相続登記の手続きは、不動産の所在地を管轄している法務局へ申請をします。申請を行うときには、①登記申請書 ②被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本 ③被相続人の住民票 ④不動産を受け取る相続人の住民票 ⑤相続人全員の戸籍謄本 ⑥不動産の固定資産証明書 ⑦遺言書、遺産分割協議書、調停調書 などが必要になります。
また、不動産の固定資産評価額に応じて、登録免許税が課されます。登録免許税については、収入印紙で納めますが、収入印紙は法務局で購入することができますので、事前に準備しておく必要はありません。
また、相続登記とよく似たもので遺贈を原因とした「遺贈登記」というものがあります。相続人以外の方に不動産を遺贈する場合は、遺贈登記による不動産の名義変更が必要となります。
なお、遺贈登記の場合は、受遺者(登記権利者)と遺言執行者(遺言執行者の指定がない場合については、法定相続人全員となります。)で登記申請を「行わなければなりません。相続登記の場合は、相続を受けるものが単独で登記申請を行うことができるため、その部分が一番大きな違いであると言えます。
なお、相続登記には申請期限が定められていません。そのため、相続登記申請を行わないまま放置されているケースが多くあります。
しかし、登記簿上の所有者が変更されていないため、実際に不動産を売却するときに、登記申請から行う必要があり、とても時間がかかります。また、何年も放置しておくと、登記申請を行う際に、相続人が亡くなって収集しなければならない書類が増えて、手続きが複雑になることもあり、トラブルを避けるためにも、相続登記の手続きを早めに行うことが必要となります。
加えて、先日相続開始後3年以内に相続登記をしない場合に罰則を科す法改正が成立し、令和6年を目途に施行(実際に効果を発生させることを言います)される予定ですので、早めに相続登記の手続きを行われることをお勧めいたします。
2.株式について
被相続人名義の株式や国債がある場合は、名義変更を行わなければなりません。被相続人が遺言書を作成していない場合は、遺産分割協議書や調停調書で株式をどのように分配するのか記載しておく必要があります。
上場株式の場合
上場株式の名義変更を行う際には、取引口座がある証券会社に対して手続きを行います。遺言書で株式を受け取る方が指定されていない場合には、相続人全員で遺産分割を行い、遺産分割協議書を作成します。なお、相続人全員での話し合いがまとまらなかった場合には、家庭裁判所に調停の申し立てを行い、裁判所が作成した調停調書を受領します。
手続きには、名義変更の申請書(申込書)、被相続人の戸籍謄本、相続人の戸籍謄本、相続人の印鑑証明書や遺産分割協議書(調停の場合は調停調書)などの書類が必要ですが、証券会社によって提出を求められる書類が異なりますので、事前に必要書類を調べておくとスムーズに名義変更の手続きができます。
なお、遺言書や遺産分割協議書がない場合は、相続人全員の署名・捺印を行った書類に印鑑証明の添付を求められますので、相続人が遠方に住んでいる場合は、時間がかかりますので注意が必要です。
非上場株式の場合
非上場株式の名義変更を行う際には、直接会社に連絡をして手続きを行う必要があります。該当の株式会社に被相続人が亡くなったことを伝え、名義変更の手続きを行いましょう。
国債の場合
国債の場合は、金融機関によって手続きの内容が変わってきます。
個人向けの国債は1万円から相続ができますし、異なる金融機関に口座を持っている方に譲ることも可能です。また、国債の保有者が亡くなったときは、相続人の口座へ移動することができます。
3.預金はどうやって引き出すの?
亡くなった方の預金については、原則として、遺産分割が完了するまでは払い戻しを行うことができません。金融機関は口座の名義人が亡くなったことを知ると口座を凍結します。相続人であったとしても、手続きを行わなければ被相続人の預貯金を引き出すことはできませんので注意が必要です。
なお、遺産分割を行っていない場合にどうしても預貯金を解約したいときは、各銀行の預金額の3分の1に自己の法定相続分を掛けた金額については、払い戻しを行うことができます。(金融機関ごとの限度額は150万円です。)金融機関によっては、払い戻しの手続きについて把握していない場合もありますので、手続きに行く前に問い合わせを行いましょう。
また、預貯金を払い戻す方法は、遺言書によって預貯金の分配方法が指定されている場合は、遺言執行者が払い戻しの手続きを行うことができます。遺言執行者が金融機関で手続きをする場合は、相続人の印鑑等は不要ですので、遺言書と遺言執行者の押印があれば、手続きが可能ですが、各金融機関によっては追加で必要な書類もありますので、スムーズに手続きを行うためには事前に確認を行うとよいでしょう。
遺言書がない場合は、相続人全員で協議を行い、全員が分割の割合について合意していれば払い戻しの手続きを行うことができます。その場合は、相続人全員の印鑑証明や戸籍謄本など必要な書類がありますので、金融機関の指示に従い書類の提出を行いましょう。
4.まとめ
亡くなった方の相続を受ける場合は、登記手続きや預金の払い戻しなど様々な手続きが必要です。
相続人全員の戸籍を収集する必要があったり、相続人が遠方に住んでいる場合には、印鑑証明などの取り付けにも時間がかかります。
金融機関によって、フローが異なりますので、スムーズに解約手続きを行うためには事前に問い合わせを行うことが大切です。