ご家族・ご親族が亡くなり、葬儀・法要、相続人・相続財産の確定や準確定申告などの手続きを終えて、やっと相続財産に関する手続きに着手する方が多いのではないでしょうか。
相続が開始され、まず、最初に相続人が行うことは、遺言の有無の確認です。
もっとも、遺言がある場合・ない場合において、それぞれどのような相続手続きを行わなければならないか、よく分からない方も多いのではないでしょうか。
今回は、遺言がある場合・ない場合それぞれにおける相続手続きについてご紹介いたします。
1.遺言がある場合
被相続人の最終意思の尊重という意図から、遺言がある場合は、遺言分割をすることなく相続人又は受遺者(遺贈により相続財産を受け取る人)に財産継承を行うことができます。
遺言は、普通方式による遺言と特別方式による遺言と2つの方式に分けられ、さらにそこから、合計7種類の遺言が存在します。
⑴普通方式による遺言
①自筆証書遺言
自筆証書遺言とは、遺言者が自身で書き、作成した遺言書のことをいいます。
自筆証書遺言には、遺言者が遺言の全文を本人が書き、日付・氏名を自署し、押印をしておく必要があります。
また、自筆証書遺言は、検認の手続きを家庭裁判所で行う必要がございますのでご注意下さい。さらに、遺言書が封印されていた場合は、家庭裁判所にて相続人等の立ち合いの下開封しなければなりません。万が一、検認の手続きを経る前に開封してしまった場合は、5万円以下の罰金が課される可能性がありますので、こちらも合わせて注意しておきましょう。
※自筆証書遺言書の保管に関して、令和2年7月10日より法務局にて「自筆証書遺言書保管制度」が開始されました。自筆証書遺言が家の中・金庫などにない場合は、法務局に保管されている可能性もあります。
②公正証書遺言
遺言者が遺言書を公正証書として作成している場合、その遺言書は、公証役場に保管されています。
こちらは、証人2人以上の立会いのもと、公証人という法律の専門家が作成しており、検認の必要はございません。
③秘密証書遺言
遺言者自身又は代筆をしてもらった遺言書に、署名・押印をし、更にこの遺言書に用いた印章をもって封印し、公証役場にて公証人と証人の立会いの下で保管をされた遺言のことを秘密証書遺言といいます。
公正証書遺言と同様、保管場所は公証役場にはなりますが、公証人が遺言書の内容を確認するわけではないため、こちらも自筆証書遺言同様に検認の手続きを家庭裁判所で行う必要があります。
⑵特別方式による遺言
特別方式による遺言とは、突然の死期が迫った緊急の状態で作成をした遺言のことをいいます。
特別方式による遺言は、民法第983条の定めにより「遺言者が普通の方式によって遺言をすることができるようになったときから6ヶ月間生存するときは、その効力を生じない。」とされています。
種類は以下4種となっており、いずれも検認の手続きを家庭裁判所で行う必要がございます。
① 死亡危急者遺言
疾病その他の事由によって死亡の危急が去った際の遺言のことです。。
作成方法といたしましては、証人3名の立会いの下、その1人に遺言を伝え、証人が書き記し、各証人が正確なことを承認のうえ署名・押印する、という流れとなります。
②伝染病隔絶者遺言
伝染病に疾患してしまい行政処分にて隔離された者のための遺言のことです。。
こちらは、警察官1名・証人1名以上の立会いが必要であり、遺言者、筆者、警察官、及び証人の署名、押印が必要となります。
したがって、口頭遺言は無効となりますので注意が必要です。
③在船者遺言
遺言者が、船舶中の場合認められる遺言のことです。
この場合、船長又は事務員1名以上と証人2名以上の立会いが必要です。
④船舶遭難危急者遺言
船舶遭難により遺言者に死期が迫った際の遺言のことです。この遺言は、船舶遭難という事態を想定した遺言ですので、死亡危急者遺言より方式が緩和された遺言です
具体的には証人2名以上の立会いのもと、口頭で遺言し、証人が遺言の趣旨を書き記し、署名・押印をします。
2.遺言がない場合
遺言がない場合、まず、民法第900条にて定められた法定相続人を確定させます。
法定相続人に該当するのは、
②(被相続人に子がいない場合)直系尊属=親や祖父母
③(被相続人に子や直系尊属がいない場合)被相続人の兄弟姉妹
となります。
もっとも、配偶者は常に相続人となるのに対し、子、直系尊属、兄弟姉妹は相続順位が定められているため、上位の相続順位の人がいる場合には、下位の人に相続権はありません。(①子→②直系尊属→③兄弟姉妹の順になります。)
(なお、法定相続人が亡くなっている場合、その亡くなった法定相続人の子に相続権が与えられることを「代襲相続」といいます。
被相続人の子が亡くなっている場合は、その亡くなった子の子(=被相続人の孫にあたる方)、被相続人の兄弟が亡くなっている場合は、その亡くなった兄弟姉妹の子(=被相続人の甥・姪にあたる方)が代襲相続人に該当します。)
次に、被相続人の戸籍を辿り法定相続人を確定していきます。
(戸籍を辿り、法定相続人を確定する際は、戸籍の見方には十分に注意しましょう。万が一一人でも相続人が欠けた場合は、遺産分割が無効となります。
戸籍の見方に不安がある場合は、弁護士・司法書士などの専門家に依頼をすることをお勧めします。)
法定相続人確定後は、今後の相続手続きで必要となる場合があるため法定相続人全員の戸籍謄本を所得します。
戸籍謄本の発行は、本籍地でないと所得できませんが、本籍が遠方の場合は、郵送で請求することも可能です。
3.まとめ
遺言がある場合・ない場合、それぞれに各手続きがあり、手続き完了後も遺産分割や相続税申告・納税など様々な手続きが続きます。
どんな手続きがあり、どのように進めるべきか、少しでも不安を抱えている方は、各専門家へ相談することをお勧めします。