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遺言書作成・遺言執行者の選任

遺言書作成の基本

2021.05.29

遺言とは、遺言者の最後の意思表示であり、それを反映させるためのものです。
遺言書を作成することにより、相続人間で遺産分割の手続を行うことが不要となり、被相続人の死後の手続がスムーズとなるため、相続人にとってもメリットがあります。また、被相続人にとっては自己の意思に沿った遺産の分配が実現されやすくなります。よって結論を言いますと、遺言書は可能な限り作成しておく方が良いでしょう。

しかし、遺言書を作成しておいた方が良いというものの、いざ実際に作成してみようと思っても、「何をどのようにしたら良いか全くわからない。」という状況になり悩んでしまいます。
そこで今回は、遺言書作成の基本について紹介いたします。

1.遺言代理の禁止

遺言の作成にはいくつかの基本的な原則があります。
まず1つ目は、遺言代理の禁止です。先ほども述べたように、遺言とは、遺言者の最後の意思表示です。それを尊重するという観点から、遺言は、第三者が遺言者の代理でなすのではなく、遺言者自身で行います。

しかし、すべての人が自筆で遺言書を作成できるわけではありません。加齢や病気等により、文字を自筆することが不可能な方もいます。

そのような場合は、遺言者が公証人に口頭で遺言の内容を伝え(口授)、公証人が遺言書を作成する公正証書遺言の方法によることも検討してみてください。
公正証書遺言にすると、形式不備により遺言が無効になる確率が低くなります。他方で、公正証書作成手数料等の費用が掛かってしまうというデメリットもあります。

2.方式の遵守

2つ目は、方式の遵守です。遺言は、民法により定められた方式に従って初めて法的効力を持ちます。

なぜこのような仕組みになっているかというと、遺言は、死後に効力が生じる意思表示であることから、遺言の存在と内容をはっきりさせる必要があるからです。それにより、遺言者の真意を確保し、偽造・変造を防止します。
遺言の方式は、大きく普通方式と特別方式に分けられます。また、普通方式とは、自筆証書遺言、公正証書遺言、そして秘密証書遺言の3種類があります。

一方で特別方式には、さらに危急者遺言と隔絶地遺言に分かれています。
前者は、死亡の危急に迫った者が行い、死亡危急者遺言と船舶遭難者遺言があります。後者とは、交通を遮断された者が行い、伝染病隔離者遺言と在船者遺言があります。後者の特別方式の遺言は、普通方式の遺言に要求されている厳格な方式の遵守が緩和されています。

また、特別方式の遺言は、普通遺言ですることができない場合に認められる方式であり、遺言者が普通方式で遺言をすることが可能になった時から6か月間生存している場合は、特別方式のよる遺言は無効になります。
どのような方式であっても作成の際は、遵守しましょう。

3.共同遺言の禁止

次に3つ目の共同遺言の禁止です。これは、2人以上で同一の証書で遺言をすることはできないという原則であり、これに反してなされた遺言は無効となります(民法975条)。

禁止されている理由として、①遺言作成にあたって、他の遺言者の意思が相互に制約を受けることが多く、遺言者の自由意志を保護が難しくなること、②遺言の撤回も共同で行うことになり、遺言撤回の自由に反すること、③一方の遺言が失効した場合に、他方の遺言者が死亡しており真意がわからず法律関係が混乱してしまうことが挙げられます。
どのような遺言が共同遺言にあたるかというと、①同一の証書にそれぞれが独立して遺言をしている単純共同遺言、②数人の遺言者が互いに相手方に遺贈したりする相互的共同遺言、③それぞれの遺言が互いに他方の遺言を条件として牽連的に成立する相関的共同遺言の3つの形態があります。

もっとも、判例上、同一の用紙に記載されていて一見すると共同遺言のように思えても、切り離せば2通以上の独立した遺言になる場合は、それぞれの独立した自筆遺言証書として効力が認められるとされた事例もあります。
また、2人以上が個別に遺言を作成して同一の封筒に保管していただけでは、同一の証書ではないため、他に特段の事情がなければ、共同遺言とはならないと考えられます。

4.遺言自由の原則

4つ目は、遺言自由の原則です。遺言自由の原則とは、遺言をするか否か、どのような内容の遺言をするかは遺言者の自由に属し(ただし、法的に有効な遺言として効力を有するのは、財産を誰に対してどのように与えるか、遺言執行者を誰にするか等、民法上定められた事項のみです。)、また遺言の内容は遺言者が自由に変更し、全部または一部を撤回することができるという原則のことです。しかし、完全に遺言者の自由にできるというわけではありません。

民法では、遺言による財産処分の自由に一定の制限を課しているほか、一定の相続人に最低限の取り分を保証する、「遺留分」という制限もあります。

5.同時存在の原則

最後の5つ目は、同時存在の原則です。これは、相続開始の時点で被相続人も相続人も存在していなければならないということです。被相続人は死亡により人格を失います。その人格を承継するために、相続開始の時点において相続人も人格を承継しうる状態にある必要があります。

これは、遺言においてのみ妥当する原則ではなく、相続一般に当てはまることであるため、覚えておきましょう。相続人が相続開始の時点で生存する場合、通常は問題となることはないと考えられます。しかしながら、まだ生まれていない胎児が相続人となり得る場合もあります。

胎児の場合は、民法886条により、死産の場合を除いて、相続については「既に生まれたものとみなす。」とされています。同条の解釈については、胎児の段階で相続が開始した場合に、相続開始後に生まれたときに初めて、相続開始時に遡及して相続人としての権利を認めるとする停止条件説と、当該胎児は相続開始時から相続権を行使できるが、死産となった場合には相続開始時に遡及して胎児への相続がなかったことになるという解除条件説があります。

また、例えば被相続人Aの子であるBは、本来であればAの相続人となるはずですが、Bが相続開始(=Aの死亡)以前に死亡していれば、Bの子で被相続人Aの孫Cが代わりに相続人となることがあります(このことを「代襲相続」といいます。)。この代襲相続の場合、代襲相続人(被相続人Aの孫C)は、代襲相続原因の発生(=被相続人Aの子Bの死亡)の時に生まれていなくても、相続開始時に被代襲者Bの子として存在し、または胎児として存在すれば足りるとされています。

6.まとめ

以上のように、遺言に妥当するいくつかの原則があります。遺言をする際には、このことを念頭にして作成してください。

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