遺言書とは、書くだけでなく実際に相続手続きを行う際、その原本がないと遺言書に沿った手続きができないようになっています。
また、遺言書は必ずしもお亡くなりになる間際に作成するわけではなく、本来はお亡くなりになるよりもかなり前のタイミングで作成するものですね。だとすれば、遺言書は作成してから数十年間保管し続けなければならず、これを紛失してしまえば遺言書を作った意味が全くなくなってしまいますので、遺言書の保管方法は極めて重要なものになります。
さらには、遺言書は保管し続けるだけではなく、被相続人が亡くなった後に相続人が見つけ出さなければ意味がありませんので、相続人が遺言書の保管方法を正確に理解し、どうやったら遺言書が探し出せるのか分かっておかなくてはなりませんね。
では、遺言書の保管方法やその探し方を見ていきましょう。
1 遺言書の種類
遺言書には、自筆証書遺言と公正証書遺言があります(本当は秘密証書遺言というものもありますが、ほとんど活用されていないのでここでは割愛します。)。
自筆証書遺言は、何の紙でも良いので自分で遺言書を手書きするパターンです。
これに対して公正証書遺言は、公証役場で公証人に遺言書を作成してもらい、公正証書の形式で遺言書を作成するパターンです。
自筆証書遺言であれば証人等がいりませんし費用もかかりませんが、公正証書遺言の場合は2人の証人が必要で公証役場に公正証書遺言作成の手数料を払わなくてはなりません。
ただ、自筆証書遺言の場合は自分で保管しなくてはならないため紛失の恐れがありますが(後述の通り法務局が自筆証書遺言の保管制度をスタートさせたので、このデメリットも補完されています。)、公正証書遺言なら公証役場の耐火金庫に保管されてますし、公証役場の遺言書検索システムも使えるので安心で便利ですね。
法的な効力は何も変わりませんので、そこはご留意ください。
2 保管方法
⑴ 自筆証書遺言の場合
自筆証書遺言の場合、従来は特段の保管制度が定められておりませんでしたので、遺言書を書かれた方がご自宅で保管したり、相続人に渡して保管しておいてもらったり、銀行の貸金庫を借りて保管していたりなど、人によって保管方法は様々でした。
しかし、この形だとどこに保管されているか相続人が分からず、保管場所を明確に伝えていないと見つけることが困難で、遺言書としての機能を果たせないまま見つからずに終わっている遺言書がかなりの数あるであろうと懸念されていました。
また、相続人が保管場所を知っている仕組みになってしまうので、都合の悪い相続人が遺言書を破棄してしまったりするケースも見受けられました。
このような自筆証書遺言の保管に関するデメリットを改善するため、2020年7月から法務局で自筆証書遺言を保管する制度がスタートしています。
この保管制度は、地質証書遺言を書いて法務局に持っていき、手数料3900円で遺言書を保管してもらいます。
そして、相続人が遺言書を探したい際には法務局へ問い合わせを行うことで、遺言書の内容に関する証明書を発行している場所が容易に見つかる仕組みを実現させました。
この他の制度が始まったことで、従来の自筆証書遺言の保管場所に困ったり、破棄や隠匿の恐れがあるといった、自筆証書遺言のデメリットが解消されましたので、
これからは自筆証書遺言の活用がより促進されることでしょう。
⑵ 公正証書遺言の場合
公正証書遺言の場合は、従来通り公証役場で作成すると、そのまま公証役場の耐火金庫で保管してもらえます。
作成から保管までがワンストップで完結するため、
紛失の恐れが皆無でより安全な遺言書作成が可能になりますね。
3 探し方
自筆証書遺言の場合は、法務局の遺言書保管制度を活用していない場合はご自宅等で保管しているだけですので、ご自宅の中で土地の権利証などの重要な書類を保管している場所を探してもらうしかありません。人によっては銀行の貸金庫を借りたり、ご自宅に金庫を置いて保管しているでしょう。
特定の相続人に偏って相続させる内容の場合は、その相続人に渡しているケースも多々見受けられます。
自筆証書遺言で法務局の保管制度を用いている場合には、法務局に問い合わせて遺言書の検索をかけることが可能です。相続人であれば問い合わせが可能ですので、ご自宅で見つからない場合には問い合わせてみてください。
公正証書遺言の場合は、公証役場に保管されており、全国どこの公証役場でも遺言書検索システムで検索をかけることが可能です。
この3種類が現在の法制度の下で想定される保管方法になりますので、この3種類の探し方をして見つからなければ、遺言書は存在しないと思って良いでしょう。法務局か公証役場に存在すれば必ず見つかりますので、後はご自宅にあるけど誰も見つけきれていないだけの場合もあり得ますから、念入りに調べてみてください。
4 まとめ
遺言書は書いても原本が見つからずに、相続手続きで原本が存在しないと何も意味がありません。
相続人たちが確実に見つけられるように配慮しながら遺言書の作成を考えてみましょう。
そのような保管方法にお悩みの方、親が遺言書を残したはずなのに見つけきれなくて悩んでいる方など、保管に関してお悩みの方もぜひ専門家に相談してみてください。