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遺言書作成・遺言執行者の選任

遺言書で特定の相続人の廃除を求めたい場合

2021.01.22

世の中には様々な家族関係がありますので、必ずしも仲睦まじい家族ばかりではありません。
弁護士と言う職業に携わっていると、子供などの相続人から過酷な虐待を受けていたり、親にかける言葉としては信じられないような侮辱を日々繰り返されている方もいらっしゃったりします。

これを解決する事は別の問題として重要なことですが、このような仕打ちを受けている人としては、自分に万が一が起こったときの相続について、その虐待や侮辱を行っていた特定の相続人に対し、自分の遺産を一切相続させたくないと考えるのは当たり前の話でしょう。
そのための制度が廃除という制度ですので、遺言書を使ってどのように廃除を行うのかを説明します。

1 廃除の概要

相続人の廃除とは、被相続人が相続人から虐待を受けたり、苛酷な侮辱を受けたりしたとき、相続の権利を奪われても致し方ない程度の非行を相続人が行ったとき、被相続人が家庭裁判所に申し立てを行って、その相続人の相続人としての権利を奪う制度をいいます。
つまり、そのような行為を行った相続人は、相続人としての権利を奪われることで、相続人でなかったことになり、一切何も相続できなくなるという制度です。

虐待をされていたりすれば、その相続人に対して相続させたくないと思うのは当然の話でしょうから、そのような被相続人の気持ちを汲んであげるための制度ですね。

2 廃除の方法

このように廃除は相続人の相続する権利を全て奪う制度ですので、相当に大きな効果を発生させます。そのため、必ず家庭裁判所に申し立てを行って、家庭裁判所の裁判官の審理を経なくてはならないことになっています。

具体的な方法としては、

①生前のうちに家庭裁判所に廃除の申し立てを行って、廃除の審判を受ける。
②遺言書で廃除したい旨を記載し、遺言執行者が被相続人が亡くなった後に家庭裁判所に対して廃除の申し立てを行う。

の2種類になります。

①の場合、生きている間に家庭裁判所に本人が申し立てを行うので、家庭裁判所の裁判官に廃除を認めてもらうだけの事情を立証しなくてはなりません。確実に詳しい専門家に依頼をして、申し立てを行うべきでしょう。

②の場合は本人が亡くなっていますので、代わりに遺言執行者が申し立てを行うことになっています。もしも遺言書で遺言執行者を選任していない場合、相続人が遺言執行者の選任を家庭裁判所に求め、遺言執行者が選任されてからその人が廃除の申し立てを行うことになります。

遺言執行者を選任していたとしても、それが詳細を熟知していない専門家ではない人であれば、やはり廃除の申し立てを裁判官に認めさせる事は困難でしょうから、確実に詳しい専門家に遺言執行者を依頼しておくべきでしょう。
また、遺言執行者が選任されていない場合には、相続人がその選任を求めることになりますが、その相続人自身が廃除の対象者である可能性もありますので、そのような申し立てを行わないリスクが高いです。
それでは遺言書を残した意味もありませんし、遺言書で廃除を記載した意味もなくなってしまいますので、遺言執行者は遺言書に絶対に記載しておかないとマズイですね。

3 廃除の要件

廃除が認められるためには、①遺留分を有する推定相続人が,②被相続人に対して虐待・重大な侮辱を加えたとき,または推定相続人にその他の著しい非行が認められるとき、になります。

遺留分を有する推定相続人ですので、遺留分の認められない兄弟姉妹は廃除の対象になりません。また、虐待や重大な侮辱が認められるためには、ある程度客観的な資料でその存在が立証されないと難しいですから、虐待等により刑事事件になっていたケースや、侮辱した内容がしっかり記載された手紙が残っているなど、裁判官から見て明らかに虐待や重大な侮辱があったと認定できる資料が必要です。
ここが廃除のハードルの高いところですね。やはり、相続する権利を全て奪う効果がありますので、その効果はそれなりに絶大です。
どの程度の事実や証拠が揃っていれば廃除が認められるか、ケースバイケースになりますので、きちんと専門家に相談をした上で、過去の裁判例等に照らして裁判官が認めそうな事案かどうかしっかり事前の打ち合わせを行っておきましょう。

4 その他の注意点

遺言書で廃除を行う場合、その廃除が認められれば特定の相続人の相続する権利が奪われ、その分他の相続人の相続分が増えることになります。
相続人同士で完全に利害関係が対立する構造になりますので、遺言書に廃除を記載したことが原因で相続人間の感情的な対立が著しく深まる事は明白ですね。そのため、できれば生前のうちに廃除の対象になっていない他の相続人には、遺言書の中に遺言執行者を選任して、廃除を記載している旨を伝えておくべきでしょう。
その際、どのような問題が生じ得るのか、担当する遺言執行者が弁護士として廃除の申し立てに精通しているかどうか、紛争になってしまった場合にどのような対応を取れば良いかなど、様々なことを事前に話しておくべきです。

5 まとめ

遺言書で廃除を行うとなると、虐待や侮辱を受けた本人が亡くなった後の話ですので、完全に客観的な資料がなくては立証が難しくなります。
もしも遺言書で廃除を考えられている方は、まずは生前に廃除の申立てを行うことができないか専門家と相談して検討すべきでしょう。
ただ、本当に辛い虐待を受けているようなケースでは、生きている間に廃除の申し立てを行うことで、より虐待が激化する恐れもあります。
そのようなことを恐れて遺言書で廃除したりするのですが、その選択肢が適切か否か、きちんと専門家と相談をして検討されてみてください。

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