相続が開始すると遺産分割を行わなくてはなりません。
遺産分割とは、相続人で話し合いを行い、被相続人が残した遺産を具体的に誰がどれだけ相続するか決め、最終的に遺産分割協議書を作成して互いの話し合いの結果を確認するものです。
1 遺産分割未了の遺産
この話し合いの結果に基づいて預貯金の解約や不動産登記などを行い、全ての相続手続きが完了すれば相続は終了となります。
相続税申告などは申告期限がありますので、お亡くなりになってから一定期間の間に対象の皆さんが必ず済ませますが、遺産分割協議については特に期限がありません。
そのため、曾祖父名義の不動産が登記簿として残っていたりするものです。
2 父名義の不動産
遺言書を書こうかなと思った場合、まずは自分の現在の財産状況を整理するものです。
その上で、どの財産を誰に承継させるのか考えていきますが、自分の財産は綺麗に整理がついたものの、10年前に亡くなった父親名義の不動産が残っていた場合にはどうすれば良いでしょう?
本来であれば兄弟で遺産分割協議を行って、誰がその不動産を相続するか話し合いを行い、その結果に沿って不動産登記を行います。
これに伴って、この不動産が自分名義になれば、その不動産も自分の財産として遺言書の中に書き込むでしょう。
では、何らかの事情があって兄弟間での遺産分割協議が前に進まず、話し合いが決着していないために父親名義のままずっと不動産が残っていたらどうすれば良いでしょうか?
また、今後もこの遺産分割協議が前に進まなそうであればどうすれば良いでしょうか?
遺産分割協議が決着しない場合には、家庭裁判所で遺産分割調停を行い、それでも決着しない場合には家庭裁判所で遺産分割審判を経て遺産分割が最終的に完了します。
しかし、これを行うには多大な労力と時間がかかりますので、これを行わなくては遺言書が書けないというのも不都合ですよね。
そこで、父名義の不動産が遺産分割未了の状態のまま自分の遺言書を書くことを試みなくてはなりません。
3 相続分の相続
上記のような状況で遺言書を書く場合、そもそも遺産分割協議が未了なのであれば、その不動産だけでなく、その他にも遺産分割が済んでいないがゆえに、分けられていない遺産が残っているはずです。そのようなものも含めて全ての父親名義の遺産の相続分自体を遺言書で次の世代へ相続させることも可能です。
その場合には、以下のような記載の仕方をしなくてはなりません。
4 共有持分権の相続
上記のような相続分の相続ではなく、特定の不動産の共有持分権のみを相続させることもできます。
遺産分割が未了であるケースの一例として、全体として遺産分割が未了なわけではなく、遺産分割協議を行って遺産分割協議書の作成をしたものの、一部の不動産のみがその遺産分割の際に見付かっておらず、遺産分割の対象から漏れていたというケースが結構あるものです。
そうなると、その不動産についてのみ遺産分割が終わっておらず、父親名義が残ったままになっているケースもよく見かけます。
そのような場合には、相続分の相続ではなく、特定の不動産の共有持分権を相続させる形で遺言書を作成します。
【不動産の表示】 【省略】
5 まとめ
以上のように遺産分割協議が未了のまま、親の世代の名義が残っているケースは本当に多いものです。
そもそも、田舎の方に行くと、土地は特定の誰かが保有するものではなく、家として保有しているものだという家制度の感覚が強いため、不動産の名義人が亡くなったからといって即座に相続登記を行わなくてはならないという感覚が極めて薄いものです。
そうなると、既にお亡くなりになっている人名義の不動産が多数残っており、家を建て替える際、家を売却しようと思った際に登記簿を取り寄せてみると、祖父名義になったままになっていて、相続登記を行ってからでないと家の建て替えや不動産の売却ができずに困っているケースを多々見かけます。
相続登記を怠っていると、世代が移るにつれてどんどん相続人が増えてしまい、遺産分割協議を行わなくてはならない人数が増加し、しまいには相続人同士で面識がないレベルの親族関係にまで発展するケースが見受けられます。
そうなると必要のない紛争が発生したりしますので、相続登記は行うべき時に早め早めに行うようにしてください。
ただ、このような遺産分割手続きが完了していなくても、次の世代の方の遺言書は書くことができますから、遺産分割が未了だとしてもそれを踏まえた書き方をして遺言書を確実に残しておきましょう。