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生前の相続対策

死ぬ時まで投資信託をやっているかどうか分かりません・・・

2021.01.17

遺言書を書く場合、金融資産を特定して記載をする必要がありますね。では、満期があるような金融商品を持っている場合はどうなるのでしょう?
満期がある金融商品の場合、満期が来ると償還となり、一度元本を含めてお金が全て戻ってくるものです。

1 社債・投資信託・定期預金と遺言書

社債:一定期間企業などにお金を貸すことにより、その利息を受け取る金融商品になります。一定期間お金を貸しているだけのため、その一定期間が経過すると当然に元本を含めて返済され、満期を迎えて償還になります。
投資信託:投資信託も期間の定めのある投資信託の場合、満期で償還されます。
定期預金:一定期間預金を預けたままにしておき、解約できないことを条件に普通預金よりも一定程度高めの利息を支払ってもらう預金方法になります。満期を迎えれば償還となり、普通預金に組み戻したり、改めて定期預金に入れたりします。

このような満期になって償還される金融商品を保有している場合、満期が先か死ぬのが先が分かりませんので、相続開始時点において既に満期を迎えていて金融商品自体を持っていなかったり、別の商品に変わっていたりする可能性が十二分にあります。

では、そのような場合に、遺言書を書く時点で保有している金融商品で記載してしまうと、相続開始時点でその金融商品を保有していない可能性がある以上、せっかく書いた遺言書が何の役にも立たない可能性が生まれてしまいます。

2 金融資産の特定

特定の相続人に対して特定の金融資産を相続させる場合、どの金融資産をどの相続人に相続させるのか明確に記載しなくてはならない以上、その金融資産の特定が極めて重要になってきます。

通常、最も典型的な金融資産といえば銀行に預けている預貯金債権でしょうが、預貯金債権を特定する場合には、金融機関名・支店名・口座の種類・口座番号などで特定することが一般的です。(ゆうちょ銀行の場合は、記号・番号にて特定します。)

口座自体で特定をしてしまえば、必ずしも残高がいくらかは関係なく金融資産の範囲を特定できますので、残高などは遺言書に記載する必要はありません。
この場合、将来の金融資産の状況が分からない以上は、ある程度包括的に定めるしか方法がなく、「遺言者が〇〇銀行に保有する金融資産の全てを長男に相続させる。」などの包括的な記載方法になります。

3 自分で金融資産をコントロールできない場合

一般的にはどのような金融資産を保有するか自分で決めますので、定期預金が満期になって普通預金に組み入れるか、改めて定期預金を組み直すか、満期になった社債の償還を受けて改めて社債を購入するか、全てご本人が自分の意思に基づいて金融資産をコントロールしていきます。

だとすれば、自分が書いた遺言書と矛盾が生じない範囲で金融資産をコントロールし、もし矛盾が生じる場合には遺言書を書き換えるなど、やり方は都度考えながら進めば問題ありません。

では、自分で金融資産をコントロールできない場合にはどうすれば良いでしょうか?
例えば、認知症になってしまって成年後見人が就任し、成年被後見人として財産管理を受ける立場になってしまった場合、 自分は認知症で既に判断ができず、何らかの事情で保有していた預貯金を解約するケースなどよくある話です。(成年後見人が業務を行う場合、多数の金融機関口座を管理し続けることは煩雑であるため、最寄りの金融機関口座のみを残して、残りを全て解約し、最寄りの金融機関口座にすべての金融資産を集めるなどするものです。金融機関によって異なりますが、成年後見人が就任した状況ではATMで使えるキャッシュカードを発行しない運用が多数あることも原因の一つでしょう。)

このように自分で金融資産をコントロールできず、他人にコントロールされてしまう場合、遺言書を書いた時点で保有していた金融資産とお亡くなりになる相続開始時点で保有している金融資産が一致しないケースは多々あります。

4 解約されていたときは?

では、解約されていた時はどうなるのでしょうか?一般的な書き方で、特定の金融機関口座を特定の相続人に対して相続させる旨の遺言書になっていた場合、すでに口座の解約がされていれば、相続開始時点でその口座は解約されて存在しないため、その部分の遺言書は無効になってしまいます。

そこで、「仮に、〇〇銀行××支店口座番号〇〇の口座が解約されていたときは、遺言者は、解約時点における同口座の残高と同額の金額を長男に相続させる。」などと記載し、口座が解約されていたとしても渡したい相続人に対して金銭が相続させるように工夫しておきます。

また、「仮に、〇〇銀行××支店口座番号〇〇の口座が解約されていたときは、遺言者は、長男に対し金〇万円を相続させる。」など、具体的な金額を指定して記載をする場合もあります。

5 まとめ

以上の通り、金融資産は流動的であって、不動産のようにずっと同じ形のまま保持し続けるものではありません。
基本的に金額が変わったり、持っている金融資産の種類が変わったり、状況が変化し続けるのが金融資産の特徴です。 そのため、遺言書を記載しようと思った時に将来持ち続けているのかが最も不確かなものの一つになります。

しかし、大人である以上、何の金融資産も持たずにお亡くなりになる方は皆無でしょうから、遺言書を書こうと思った人はほぼ間違いなく何らかの金融資産を持っており、その書き方に悩むものです。

遺言書に金融資産を書き込むのとは基本的なことではありますが、将来形が変わっている可能性を見据えながらカバーできる遺言書を作ろうと思うと難易度が高まりますので、必ず専門家に相談した上で遺言書を作成されてみてください。

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