最近、書店やメディアなどで「エンディングノート」という言葉を目にする機会が増えたと思います。
「エンディングノート」を作成することで、自分の人生を振り返り、今の状況を整理し、家族など大切な人に自分の思いを伝えることができるツールとして注目されています。
遺言書を作成するための前準備として、活用することも可能であり、年齢や所有財産の規模に関わらず、全員に必要になるものです。
今回は、「エンディングノート」の作成方法について、手順など分かりやすくご説明いたします。
もくじ
1 法定相続人と法定相続分を確認する
法定相続人とは、文字通り、法律上定められた相続人のことを指します。相続の分配を正確に行うために、法定相続人が何名いるのか確定させるのは、とても大切な作業です。
法定相続人となる基本的なルールは以下の通りです。①~④の順番で法定相続人を確定させていきます。
①配偶者がいる場合
配偶者がいる場合、配偶者は必ず法定相続人となります。配偶者とは、婚姻関係にある相手方であり事実婚や内縁関係にある人は含まれません。本人の戸籍に入っている必要があります。
②子がいる場合(第1順位)
次に子がいる場合には、配偶者及び子が法定相続人となります。現在の配偶者との間にできた子でなくても、前妻との間に生まれた子や内縁関係にある者との子は、相続権が生じ相続人となります。再婚した配偶者に連れ子がいる場合、本人と連れ子の間で養子縁組をしていなければ、相続人とはならないため、注意が必要です。
また、子が本人よりも先に亡くなっている場合でも、亡くなった子の子、つまり本人から見たら孫がいれば、その孫が代襲相続人となります。代襲相続とは、本来相続人となるはずであった人が、先に死亡し、死亡した方に子や祖父母がいた場合に、その人に代わって相続をすることを指します。
③子がいない場合(第2順位)
子がいない場合(上記②で説明した代襲相続人がいない場合を含みます。)には、次に親が相続人となります。なお、本人が亡くなるよりも前に両親が亡くなっているが、本人からみて祖父母が存命の場合は、祖父母が代襲相続人となります。
④子も親もいない場合(第3順位)
子も親もいない場合には、兄弟が相続人となります。兄弟も本人より先に亡くなっている場合には、本人からみて甥姪が代襲相続人となります。
法定相続人が確定したら、次に法定相続分を確認していきます。法定相続分は、法律で定められた相続順位の割合に基づき決まります。法定相続人の割合は次の通りです。
①配偶者と子が相続人の場合(第1順位)
配偶者:1/2 子:1/2÷人数
②配偶者と親が相続人の場合(第2順位)
配偶者:2/3 親:1/3÷人数
③配偶者と兄弟が相続人の場合(第3順位)
配偶者:3/4 兄弟:1/4÷人数
2 記載事項及び作成手順
それでは、実際にエンディングノートにはどのような内容を書き出していけば良いのでしょうか。エンディングノートに書きだすべき主な事項について紹介いたします。
エンディングノートを作成する際に、まず一番に、自分の財産を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。自分の財産は、皆さんにとっても一番書き出しやすく、また、あらかじめ書き出しておくことで遺産分割等による後々のトラブルを避け、残された方たちの負担を軽減するためにも重要な事項になってきます。
書き出す際には、プラスの財産だけでなく、負債などのマイナスの財産も書き出すようにしましょう。すべての財産を書き出すことで、相続が発生した際に、残された方たちが相続放棄すべきか否かを判断する手立てとなります。
次に、書き出した財産中から誰にどのように相続させたいかを考えましょう。
(1)法定相続人の中に、特別貢献をした法定相続人がいた場合
資金の援助や療養看護に努めるなど行ってくれた相続人には、他の相続人より、多くの財産を残したいと考える方が多いと思います。このような被相続人の財産の維持又は増加に対する特別の貢献は「寄与分」といい、この寄与分を考慮して相続分の算定を行うことができる場合があります。
この寄与分という制度は、相続人同士に公平さを保つために重要ですが、寄与分については、相続人同士で話し合いをして決めることになります。もし、遺言書内で、寄与分に関して記載しても、寄与分の指定としての効力はありません。しかしながら、「寄与分」として認められやすくする工夫をすることはできます。
例えば、遺言書の付言事項として、対象の相続人に対して、具体的な貢献に関する内容や感謝の気持ちを記載すると良いでしょう。
(2)法定相続人の中に、相続させたくない法定相続人がいた場合
法定相続人の中に、相続をさせたくない法定相続人がいた場合に、全く相続させないという極端なケースで遺言書を作成したいと、考えられている方もいらっしゃるかと思います。
原則、作成した遺言書の内容が優先されますが、民法では、法定相続人の生活の安定及び財産の公平な分配のために、法定相続人に対して、最低限貰える相続分(遺留分)を保証しています。
遺留分を無視した遺言書を作成すると、遺留分を侵害する限度で遺言の効力は制限されてしまい、遺留分を侵害された法定相続人から遺留分侵害額請求を受ける等、トラブルのもととなるため、他の法定相続人のことも考え、作成時には十分な検討を行うことをお勧めします。
(3)相続以外の内容について
死後、相続人に知らせておきたい内容がある場合には、エンディングノートに書きだすと良いでしょう。
遺言書には書ききれない遺言者の気持ちや、事務的な事項(葬儀方法やお墓、死亡をしらせて欲しい人の連絡先等)について書き出すことで、残された方たちが事後処理に頭を悩ませることが少なくなります。
まとめ
エンディングノートは、遺言書を書くための準備になり、遣言書には書ききれない想いを残すことができます。
エンディングノートには法的な効力がないため、別途遺言書の作成が必要となりますが、エンディングノートを作成することで、ご自身の人生と向き合うことができるのはもちろん、残された方たちの負担も軽減することができます。
遺言を書こうと考えていらっしゃる方は、是非エンディングノートを活用してみてください。