相続税対策として生前贈与することがあります。
通常、長期にわたって計画的に行っていくことがセオリーなのですが、中には対策が遅れて亡くなられる直前になって贈与される方々がいらっしゃいます。
しかし、相続税法上は、「亡くなられる前の3年以内に行われた贈与」については、相続財産に足し戻さなければならないというルールがあります。
今回はこのテーマを説明していきたいと思います。
もくじ
1.相続税法19条(相続開始前3年以内の贈与加算)
相続税法第19条においては、次のように規定されています。
少し分かりづらいので、噛み砕いてみましょう。
2.世間の誤解として
条文はさておき「要は3年以内にされた贈与についてはなかったものとして相続財産に足し戻すのね」と解釈されるかたがたが多いです。
財産をもらう人が妻であっても子であっても孫であっても・・・・。
ちょっとお待ちください。もう一度上記1の条文をご覧ください。
3.条文をよく読んでみると
条文の出だしですが、「相続または遺贈により財産を取得した人が・・」となっております。
ポイントは、「相続または遺贈により・・」のところであります。
仮にある被相続人(お亡くなりになられた方)の親族関係が下記のような場合、3年以内加算はどうなるのでしょうか。
①夫(被相続人)
②妻(法定相続人)
③長男(法定相続人)
④孫(長男の子:法定相続人以外)
(※注)遺言書なし
この場合、相続開始前3年以内に法定相続人に対してなされた贈与は加算の対象となりますが、④孫については、法定相続人でないため3年以内加算の対象外になります。
よく相続セミナーや雑誌等で、「孫への贈与は有利である」というのは、たとえ3年以内の贈与であっても加算の対象とならず相続財産を減らすことができるところにあります。
ポイントは、法定相続人以外の贈与であるため、長男のお嫁さんに対する贈与も3年以内贈与加算の対象外になります。
4.孫への贈与は無条件に3年以内贈与加算の対象外??
ここまで読まれた方は、「孫への贈与は3年贈与加算の対象外!」ということにつきご理解いただけたかと思います。
ただ、お孫さんへの贈与であっても、法定相続人と同様に3年以内加算の対象となることがあります。
5.孫でも3年以内贈与加算の対象となる場合
一つは、遺言書で孫に財産を遺贈すると記載されている場合であります。
条文での「相続または遺贈により財産を・・」の「遺贈により」に該当するため加算の対象となります。
もう一つは、死亡保険金の受取人が孫になっている場合です。
法定相続人以外が、死亡保険金の受取人となっている場合には、「みなし遺贈」となりこれもまた3年以内加算の対象となります。
6.まとめ
孫に生前贈与をされる場合には、今回記載しました内容を踏まえられてください。
また、孫への贈与が名義預金とみなされないように、きちんと贈与の要件に当てはまっているかの確認も重要となります。