みなさんは、ご自身の遺留分を意識したことがありますか?
遺産の全てを他の相続人に相続させる旨の遺言がある場合など、自分が遺産を取得できない場合に、自己の最低限の取り分として主張できる相続分を「遺留分」といいます。
しかし、この遺留分については、なんとなく聞いたことがあってもあまり正確に理解していない方もいらっしゃるでしょう。そのため、遺言書がある以上自分には取り分がないと思い込んで何も請求しない方が非常に多く見られます。遺言書で、自分の名前が出てこなかったのであれば、それが亡くなられた方の意思なのだからと請求をすることが倫理的にはばかられている方もいらっしゃいます。しかし、日本の民法では今回ご説明するような遺留分というものを定め、これはどんな内容の遺言書を作られたとしても、法定相続人として取り上げられることのない最低限保証された相続分であるというルールになっていますので、法的には気にせず、堂々と権利を主張して良いものです。
そこで、今回は遺留分についてお話ししていきます。
1 遺留分権利者
遺留分は全ての相続人に認められるものではありません。遺留分を有する相続人は、被相続人の兄弟姉妹以外の法定相続人に限られます。兄弟姉妹に認められないことから、その子供である甥姪にも当然認められません。
ただし、相続人の欠格事由に該当して相続権を失った者や、廃除によって相続権を失わされた者には、相続人たる資格が認められないことから、遺留分も認められません。
2 各相続人の遺留分割合
各相続人の有する遺留分の割合は、「遺留分の基礎となる財産額×各相続人の法定相続分×遺留分全体の割合」という計算式によって算定されます。
ここでいう遺留分全体の割合とは、相続人が直系尊属(両親や祖父母など上の世代)のみの場合には3分の1、それ以外の場合には2分の1となります。
例えば、相続人が配偶者と2人の子供の場合には、各相続人の法定相続分は配偶者が2分の1、子供がそれぞれ4分の1ずつとなり、遺留分全体の割合が2分の1となることから、配偶者は対象財産の4分の1、子供はそれぞれ対象財産の8分の1の遺留分が認められることになります。
また、相続人が両親のみの場合には、両親それぞれの法定相続分は2分の1となり、遺留分全体の割合は3分の1となることから、それぞれに6分の1ずつの遺留分が認められます。
3 遺留分の対象財産
遺留分の対象となる財産は、以下の通りです。これらの財産の合計額から債務額を差し引いた額が遺留分算定の基礎となります。①が基本的な遺留分算定の基礎となる財産であって、②〜④はお亡くなりになるよりも前に生前贈与を行っていたケースになります。相続税対策などで生前贈与を行っているケースが多いので、これらの生前贈与どこまで持ち戻して計算するかで、遺留分額も大きく変わりますから、注意するようにしましょう。
①相続開始の時点における被相続人の有していた財産(遺言によって相続させるとされた財産もこれに含まれます。)
②相続人以外の人に対して、相続開始前1年以内に行った生前贈与の対象財産
③法定相続人に対して、相続開始前10年以内に行った特別受益にあたる生前贈与の対象財産
④遺留分を侵害していることを当事者が認識しながら行われた生前贈与の対象財産
なお、③について、特別受益とは、被相続人から遺贈を受けた場合、婚姻もしくは養子縁組のために贈与を受けた場合、生計の資本としての贈与を受けた場合にかかる財産のことをいいます。つまり、特別な受益を得ていなくてはならないので、親から扶養の範囲として送られた仕送りや生活費みたいなものは、特別受益に該当しないこととなります。ここの特別受益に該当するか否かは、非常にデリケートな評価となりますので、必ず専門家と相談しながら検討しましょう。
まとめ
このような算定方法によってご自身の遺留分を算定することができます。
被相続人による遺言があったとしても、まずは弁護士に状況を説明した上で、ご自身の遺留分がどの程度あるのかを把握してみてはいかがでしょうか?
ただし、遺留分は相続開始及び遺留分を侵害する贈与があったことを知った時から1年経過すると時効によって消滅し、請求できなくなってしまいます。
少しでも気になる方は、なるべくお早めにご相談ください。