今回は、相続税の申告をご自身で行う場合に必要になる、預貯金に関する書類についてご説明します。
(1)書類一覧
書類名 | 取得できる人 | 取得できる場所 | 取得費用 | 注意事項 |
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亡くなった方名義の通帳 | 自宅に保管してある場合。 | 相続開始日前後の記帳がされているもの。 | ||
または取引履歴 | 相続人 | 口座のある金融機関の窓口 | 手数料は金融機関により異なる。 | 通帳がない場合に依頼する。 |
亡くなった方の家族名義の通帳 | 各家庭に保管がある場合。 | 通帳にあるお金の出どころが家族出身の収入の場合は不要。 | ||
定期預金証書 | 自宅に保管がある場合。家族名義のものも確認する。 | 通帳式と証書式があり、証書式の場合に必要である。 | ||
利息計算書 | 相続人や遺言執行者 | 口座のある金融機関の窓口 | 手数料は金融機関により異なる | 定期預金があれば必要。普通預金は不要。 |
(2)書類を集める上でのポイント
①取引していた金融機関がわからない場合
通帳やキャッシュカード、証書等が自宅にないか確認してください。
②ネット銀行
亡くなった方のパソコンやスマートフォンを調べ、インターネット上のお気に入りにネット銀行のホームページが登録されていないか確認してください。IDやパスワードが不明でログインできない場合も、電話や郵送などで口座保有の有無を問い合わせると、確認することができます。
③残高証明書
相続開始日(亡くなった日)現在の残高証明書を発行してもらってください。外貨預金の場合、円に換算する必要があるため、対顧客直物電信買相場(TTB)に記載してもらいましょう。取引店以外で手続することもできますが、一般的には証明書の発行には日数がかかります。
④亡くなった方名義の通帳
これは税務調査では税務署が一番細かく調べるものです。過去6年分程度は必ず入手してください。
⑤取引履歴
過去の通帳が見つからない場合に、通帳と同じ情報が記載されている取引履歴の発行を金融機関に依頼してください。発行には日数や費用がかかりますが、亡くなった方の相続人であれば単独で発行を依頼できます。
⑥定期預金・定期貯金
定期預金・定期貯金は、亡くなった日に解約したと仮定した場合の利息も相続税の対象になります。よって、利息計算書を発行しなければなりません。残高証明書に既経過利息を記載してもらう形でも構いません。ただし、普通預金や通常貯金の場合は不要です。
⑦相続人が複数いても単独(1人だけ)で行える手続き
・口座の有無の調査
・残高証明書・取引履歴・利息計算書の発行依頼
上記の2つは、相続人のうちの1人が単独でできます。なお、相続人全員の署名や印鑑なども必要ありません。
⑧亡くなった方の家族名義の通帳
家族名義の通帳にあるお金が、亡くなった方の収入によるもの、かつ、家族へ生前に贈与されたものでない場合、そのお金は亡くなった方の相続財産として相続税の対象になりますので、その点を確認するために、家族名義の通帳が必要になることがあります。
相続税の申告上、預貯金や株式などの金融資産は、もともとのお金の出どころ(原資)は誰かという観点から、実質的な所有者を判断します。「誰の名義になっているか」ということは重視されません。そのため、亡くなった方の家族名義の金融資産についても、その資産が家族自身が外で働いて稼いだお金、実家から相続したお金、亡くなった方から生前に贈与されたお金などではない場合、実質的な所有者が亡くなった方である「名義預金・名義株」ではないか、検討しなければなりません。
以上、預貯金に関する書類だけでも、このように多くの書類が必要になります。あらかじめ準備しておくとよいでしょう。