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コラム

相続人調査を徹底解説!正確な相続手続への第一歩 基礎知識から専門家の活用方法まで

2025.03.17

相続が始まると、まず必須となるのが相続人調査です。どのような人が相続人になるのか、正確に把握できていないまま遺産分割や相続手続きを進めると、後々「見落としていた相続人がいる」「遺産分割の話し合いが無効になる」といった大きなトラブルにつながる可能性があります。とりわけ、相続に慣れている一般の方は多くないため、調査手続で戸惑うケースも珍しくありません。

本記事では、相続人調査における重要ポイントから、戸籍収集や名寄せなどの具体的な進め方、法定相続人の範囲の決まり方、調査時によくある問題とその解決策までを、弁護士目線で分かりやすく解説しています。

もくじ

1.相続人調査とは何か?その重要性

相続が開始した際、最初に確認すべきことが「誰が相続人になるのか」という点です。この作業を一般に相続人調査と呼びます。相続人の調査をせずに遺産分割や各種相続手続きを進めると、本来参加すべき相続人を見落としたまま話し合いや遺産分割協議書の作成をしてしまい、結果的に後で手続が無効になる可能性もあります。

被相続人(亡くなった方)が再婚していて別の家庭に子どもがいたり、何十年も音信不通のまま暮らしている兄弟姉妹がいたりすると、相続人の特定が複雑になるため、対象から漏れてしまうことが多いです。

また、各金融機関や法務局の手続には相続人全員の実印や署名が必要になるため、相続人を一人でも見落としていると大きなトラブルに発展しかねません。
相続人調査を正確に行うためには、被相続人の戸籍を出生から死亡までたどっての詳細な戸籍収集が不可欠です。

戸籍の読み解き方やスムーズに相続手続きを進めるコツについては、下記の関連コラムでも解説しておりますので、ぜひご覧ください。

2.相続人の範囲と順位を正しく理解しよう

相続人調査をするうえで、まずは法定相続人がどのような範囲・順位で確定するのかを理解しておく必要があります。民法では、血族相続人を第一順位から第三順位に区分し、それとは別に配偶者を常に相続人とする仕組みを採用しています。

①第一順位(子ども)

第一順位にあたるのは、被相続人の子です。子には、実子だけでなく養子も含まれます。また、認知された子や胎児(出生すれば相続人になる)も同様です。子がすでに死亡している場合、その子がいるならば代襲相続(孫が相続人となる)が発生します。

②第二順位(直系尊属)

被相続人に子がおらず、第一順位の相続人がいない場合には、両親や祖父母といった直系尊属が相続人となります。通常、被相続人の父母が存命ならば第一に相続権を持ち、父母がともに亡くなっている場合は祖父母へと繰り上がる形です。

③第三順位(兄弟姉妹)

被相続人に子も直系尊属も存在しない場合には、兄弟姉妹が相続人となります。また、兄弟姉妹がすでに死亡している場合には、その子(被相続人の甥・姪)が代襲相続人となります。さらに、兄弟姉妹の代襲は一代限りなので、甥・姪が亡くなっていても代襲はそれ以上進みません。

配偶者の取り扱い

配偶者は、常に相続人になります。すなわち、上記第一から第三順位のいずれかと共に相続に関与します。ただし、事実婚のパートナーは民法上の配偶者には含まれないため、相続人にはなれません。結婚している証拠として、婚姻届が役所に提出されているかを確認する必要があります。

もし、被相続人が複数回の結婚歴を持っている場合、前妻や前夫との間に子がいるかなども相続人調査で重要なポイントです。こうした事情を把握しきれずに手続きを進めると、後々発覚してトラブルが起きるケースもあります。

3.相続人調査の具体的手順

相続人調査を進める際には、戸籍の取得・確認が中心となります。以下では、どのような戸籍を取得すべきかや、注意点について順を追って説明します。

STEP1:戸籍収集の基本

相続人調査の第一歩は、被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの連続した戸籍をすべて取り寄せることです。これにより、「被相続人に何人の子がいるか」「父母が生存しているかどうか」「兄弟姉妹は何人か」という情報が正確に得られます。戸籍は本籍地の市区町村役場で取り寄せますが、被相続人が生前に本籍を移していた場合は各役場に請求が必要となり、複数回取り寄せをしなければなりません。

戸籍の読み方と注意点

近年は戸籍のコンピュータ化が進んでいますが、お亡くなりになった方のご年齢によっては、昔の形式の戸籍謄本が必要となることがあります。古い戸籍の中には、手書きで記載されているものもあり、記載内容を読み解くのが困難な場合もあります。行間などに付随メモとして記載されている情報が、子や養子の存在を示しているケースもあるため、見落としがないように注意が必要です。

STEP2:除籍・改製原戸籍の取得

被相続人が結婚・転籍・離婚・再婚などを繰り返している場合や、戸籍が電子化される前に何度も改製が行われている場合は、一部の戸籍が除籍になっていることがあります。除籍とは、その戸籍に記載されている全員が転籍や死亡などでいなくなり「戸籍としてはもう使わない」状態になったものです。しかし、この除籍や改製原戸籍にも被相続人の昔の情報が記載されているため、相続人の特定には非常に重要となります。

STEP4:戸籍の附票・住民票からの住所確認

相続人が確定しても、実際の住所が分からなければ遺産分割協議書への署名捺印のお願いや書類の送達ができません。そこで、戸籍の附票や過去の住民票情報を取り寄せ、相続人の現住所を特定していきます。相続人が行方不明になっている場合は、追加で家庭裁判所の手続などが必要になることもあります。

戸籍収集の範囲やより具体的な細かい手順については下記の関連コラムでも解説しておりますので、ぜひご覧ください。

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4.特殊なケース:行方不明や絶縁状態の相続人が見つかった場合

相続人調査の過程で、長年連絡を取っていなかった親族や、別居状態で音信不通になっている兄弟姉妹の存在が判明することがあります。こうしたケースでは、遺産分割協議の進行が難航する場合が多いため、早めに対策を講じることが重要です。

行方不明になっている相続人がいる場合は、まずは住民票や戸籍の附票を取り寄せて住所履歴を洗い出し、親戚や知人などをあたって現在の行方を捜します。それでも見つからなければ、失踪宣告や不在者財産管理人の選任といった法的な措置を検討します。家庭裁判所に申し立てて認められれば、遺産分割協議を進めることができますが、手続きには時間がかかるため、ここは専門家のサポートを受けたほうがよいでしょう。

5.遺言書がある場合の相続人調査

被相続人が生前に遺言書を作成していた場合、遺産分割協議書の作成を省略できるケースもあります。ただし、遺言書があっても相続人調査は必要です。その理由として、遺言書に記載されている受遺者と法定相続人との利害が衝突する可能性があるためです。

遺言書内容と法定相続人との関係

例えば、遺言書にて「Aさんにすべての財産を相続させる」と書かれていることがありますが、その表現があっても、Aさん以外の他の相続人の法定相続人としての立場が完全に消えるわけではありません。民法では、一定の相続人に対して遺留分という最低限の相続を受ける権利が保障されているため、法定相続人が誰なのかを正確に確定させなければ、遺留分請求の権利をもつ相続人を見落としてしまう恐れがあります。

法定相続人外への遺贈がある場合

遺言書で、血縁関係のない人や慈善団体などへ財産を遺贈するケースも珍しくありません。しかしこの場合でも、相続人以外への遺贈によって結果的に遺留分を侵害する可能性が出てきます。法定相続人が誰なのか、すべて洗い出さないまま手続きを進めると、後になって遺留分侵害額請求を起こされるリスクがあります。

遺留分問題への対処

遺言書の内容が法定相続人に対して不公平だと感じられる場合、遺留分を巡って紛争が生じる可能性があります。相続人調査を経て、遺留分を有する人が確定した段階で、弁護士を通じて紛争を防ぐ形での早期の話し合いを行うのが得策です。

6.相続人調査で気を付けておきたいポイント

被相続人が外国籍の場合

近年は、被相続人や相続人のいずれかが外国籍であったり、海外に長く居住していたりするケースも増えています。このようなケースでは、日本の戸籍ではなく海外の公文書を取り寄せる必要がある場合や、日本法と異なる相続ルールに影響されることがあるため、専門家と連携して調査を進めましょう。

相続税申告への影響

相続税には基礎控除があり、相続税額を計算する際に「3,000万円+600万円×法定相続人の数」が控除されますが、相続人調査の際に本来は相続人としてカウントすべき人を見落とす等でこの法定相続人の数を誤ると、相続税の計算自体が変わってしまいます。たとえば実は子どもがもう一人いたという場合、基礎控除額や生命保険の非課税限度額なども増減する可能性があるのです。

相続人調査に誤りがあると、相続税申告にも影響が出てしまうので注意が必要です。

7.相続人調査でよくある質問Q&A

Q:相続放棄をした人も相続人調査で確認する必要がありますか?

A:相続放棄をしたかどうか、期限内に正式な手続きを行ったかなどを確認するためにも、当初は法定相続人となる人全員を相続人候補として調査する必要があります。相続放棄が有効に受理されたら、その人は遡って相続人でなかった扱いになりますが、正式に確定するまでは把握しておきましょう。

Q:被相続人の戸籍を集めようにも、複数回本籍を移動していた場合どうすればいい?

A:最後の本籍地だけではなく、過去の本籍地も含めてそこにある戸籍をすべて請求して、出生時点から死亡時点までの戸籍を連続的に揃える必要があります。移転先が遠方の場合、郵送請求で対応可能です。

Q:海外に渡った親族がいる場合、どのように相続人調査を進めるべきでしょうか?

海外在住の親族がいるときは、その国での在留証明書や本国の戸籍に相当する公文書の収集が必要になる場合があります。ただし、各国で書類の形式や制度が異なり、手続きが複雑になりがちです。一般的には、現地の大使館・領事館に紹介を行うこととなります。

Q:相続放棄した人が後から「やっぱり相続に加わりたい」と言い出した場合、相続人調査はやり直しになるのでしょうか?

相続放棄は基本的に撤回できないため、正当な理由なしに「やっぱり加わりたい」という主張は原則認められません。相続放棄が有効であれば、その人は相続人にはなりませんので、相続人調査を一からやり直す必要はありません。

Q:相続人調査にかかった費用や手数料は、誰が負担するのが一般的でしょうか?

通常、相続人調査に必要な戸籍の取得費用や専門家への報酬は、最終的に相続人全体が負担することが多いです。もしくは、相続人全員の合意を得て相続財産から支出するか、特定の相続人が一旦負担のうえで遺産分割協議の中で清算する場合もあります。

7.相続人調査を弁護士に依頼するメリット

古い戸籍も含めて必要な戸籍収集を代行

被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍の連続性が途切れていないか、すべての相続人を網羅した戸籍が揃っているかについて、古い除籍・改製原戸籍まで含めてすべて確認が必要になりますが、弁護士に依頼すればすべて代行をしてくれますので相続人の方の負担軽減となります。

その後の相続手続の依頼もスムーズに

相続人の確定作業が終わった段階で、複数の兄弟姉妹や遠縁の親族など、思わぬ人物が相続人として登場することも珍しくありません。

そういった際でも、相続人調査を弁護士に依頼していた場合は、継続してその後の手続を依頼することができますので、できるだけ紛争化を防ぎながら相続手続を進めるうえで次にどのような一手を取るべきかのアドバイスを受けられます。

8.戸籍収集の費用・相続人調査費用の目安

戸籍謄本の取得費用

相続人調査を進める際に気になるのが、戸籍収集や弁護士費用などのコストです。戸籍収集にかかる費用は、戸籍謄本1通あたり450円~750円程度(市区町村による)で、除籍や改製原戸籍なども含めると、相続人の人数や婚姻・離婚歴など状況によってはかなりの通数が必要となる場合があります。遠方の役所から取り寄せる場合は郵送費もかさむため、負担が大きくなることも考えられます。

弁護士費用・調査費用の相場

弁護士に相続人調査を依頼する場合の費用は、事務所によって異なりますが、戸籍収集の実費に加えて、調査に伴う手数料が発生するのが一般的です。事務所によって報酬規程はさまざまですので、実際にどれぐらい費用がかかるかは依頼前に確認をされてください。

当事務所での無料相談受付

当事務所は、相続に関する初回のご相談は無料とさせていただいております。相続人調査について、戸籍収集や費用面でのご不安、複雑な親族関係の調査など、どんなことでもまずはお気軽にご相談ください。

8.本コラムのまとめ:専門家とともに正確な相続人調査を進めよう

相続人調査は、相続開始後の手続きを適切に進めるうえで欠かせない作業です。特に、再婚歴がある方や行方不明の親族がいる場合、昔の戸籍を読み解かなければならないケースなど、慣れていない状態での相続人調査は混乱しがちです。

当事務所では、弁護士をはじめ、税理士・司法書士が在籍のうえで相続のワンストップサービスを展開しています。相続人調査だけでなく、その後の相続財産調査、遺産分割協議、相続税申告、不動産の名義変更まで、一括してサポートできる点が大きな強みです。さらに、紛争に発展しそうな場合でも、調停や審判への対応も含めて弁護士が迅速に対応いたします。

相続人調査の段階で疑問を感じたら、あるいは相続手続の一連の流れをスムーズに進めたいとお考えでしたら、まずは無料相談にて当事務所へご相談ください。

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