法律相談においても、相談件数のトップにあるのが相続・遺言に関わるものです。身近にある問題でありながら不明な部分や誤解されているところが数多く見られます。 今回はQ&Aとして相続の初動知識に触れてみたいと思います。
「相続についての法律相談1」はこちら
次の者は相続人となるのでしょうか?
【Q2】①内縁の配偶者、②認知されていない非摘出子、③養子、④孫、⑤胎児、⑥祖父母、⑦半血兄弟、⑧甥・姪
【回答】①相続人となりません。
②母親との関係では原則として相続人となり、父親との関係では認知されなければ相続人とはなりません。
③養親との関係では相続人となり、実親との関係でも相続人となります。
④、⑥、⑧相続人となる場合があります。
⑤原則として相続人となります。
⑦相続人となります。
【解説】
①内縁の配偶者
配偶者同様に生活しているものの入籍していない、いわゆる内縁の配偶者が死亡した場合、他方の内縁配偶者はどんなに長く一緒に生活をしていたとしても、法律上は配偶者ではありませんので相続人にはなりません。
逆にいえば、離婚はしていないけれど長期間別居しているような夫婦の一方が死亡した場合には、他方配偶者は戸籍上の配偶者ですので、必ず相続人となります。事実婚の内縁の配偶者にも相続を認めるべきとの議論もありますが、現段階ではまだ法律上の配偶者のみに限定されております。
②認知されていない非摘出子
法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子を非摘出子と言います。母親との法律上の親子関係は、原則として分娩の事実のみによって発生すると考えられておりますので、母親と非嫡出子の間には親子関係があり、母親が死亡した場合にその非摘出子は相続人となります。しかし、非摘出子と父親との法律上の親子関係は認知によらなければ生じませんので、仮に生物学上の父親が死亡した場合でも、認知されていない非摘出子は相続人とはなりません。
③養子
養子は縁組の日から養親の摘出子の身分を取得します。しがたって、被相続人の養子は相続人となります。また、養子となった場合であっても、養子と実親との法律上の親子関係はなくなりませんので、実親が死亡した場合も養子は実親の相続人となります。
④孫
被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、相続欠格事由に該当し相続権を失ったとき、廃除によって相続権を失ったときに、子の子、つまり孫が子に代わって相続人となります。
⑤胎児
民法において、相続については、既に生まれたものとみなすとされていますので、被相続人の死亡時に被相続人の子が胎児であれば相続人となります。
⑥祖父母
被相続人の祖父母は直系尊属になります。
直系尊属は、第1順位の相続人がいない場合に初めて相続人となります。子がいないという場合が典型的な例ですが、子が全員相続放棄をした場合も第1順位の相続人がいない場合になります。
直系尊属は、親などの近いものが優先されるので、例えば父と祖父母が生存している場合は、父のみが相続人となります。
また、特別養子縁組を除く養子縁組をした場合であっても、実親との親子関係はなくなりません。なので、この場合、養親と実親とは親などが同じとなりますので、養子が死亡した場合は、養親と実親の双方が相続人となります。
※第1順位の相続人…子又はその代襲者
⑦半血兄弟
第1順位、第2順位の相続人がいない場合に初めて相続人となります。
兄弟姉妹には、父母の双方を同じくする兄弟姉妹(全血兄弟)と、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹(半血兄弟)がありますが、いずれも相続人となります。例えば父に前妻との子と後妻との間の子がいて、後妻との間の子の一人が死亡し、その兄弟姉妹が相続人となるような場合は、前妻との子も相続人となるということです。
※第1順位の相続人…子又はその代襲者
第2順位の相続人…直系尊属
⑧甥・姪
兄弟姉妹が相続人となる場合で、かつ、代襲原因がある場合、相続人となります。
配偶者もおらず相続人となる血族もいない場合や、相続人全員が相続放棄をしたような場合は、相続人がいないということになります。このような場合、内縁配偶者などの被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者、その他被相続人と特別の縁故があったもの(特別縁故者)がいれば、その者に相続財産が与えられる場合があり、それでも相続されなかった相続財産は国庫に帰属となります。