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家族信託

【家族信託】受託者ってどんな人?

2021.05.02

「家族信託」は、信託法という特別法を根拠とする「信託」のうち、財産を託す相手を家族や親族にしたものをいいます。
「信託」には、基本的に3人の登場人物がいます。

①現在財産を持っていて財産の管理や処理を任せる主体となる「委託者」、②委託者が信じて財産を託す相手であり、実際に財産の管理処分を行う「受託者」、③受託者に管理を託した財産(これを「信託財産」といいます。)から経済的利益を受ける「受益者」です。

しかし、これだけではそれぞれの登場人物が一体どのような人なのかはイメージがつかないのではないでしょうか?
出来れば登場人物3人を一度に説明したいところですが、そのようなことをすれば膨大な量になってしまします。
そこで、今回は「受託者」に絞って、説明をしたいと思います。

1.「受託者」に資格っているの?

「受託者」とは、財産を預かり管理する人のことです。畏まった言い方をすると、「委託者から信託財産を託され、信託目的に従って受益者のために信託財産の管理・処分等を行う者」をいいます。

受託者は、信託財産の内容や受益者の状況等を総合的に判断できる能力のある者とされるため、未成年者は受託者となることができません(信託法7条)。
裏を返せば、未成年者以外であれば、個人でも法人でも受託者になることができます。

受託者が個人であると、信託契約期間中に、受託者の死亡や病気等で信託業務ができなくなるリスクがあるため、家族・親族で設立した法人を受託者とすることができます。
家族で設立する法人としては、株式会社、合同会社、一般社団法人が多いかと思いますが、家族信託は純粋な営利目的ではないので、一般社団法人を設立する人が多いようです。

なお、法人を受託者にして信託報酬を受け取る場合、信託業法における「不特定多数の人の財産を反復継続して預かる場合」に該当することになると、法人が信託報酬を受け取るには金融庁の免許が必要となります。そのため、法人を受託者とする場合、信託業法に抵触しない工夫をしなければならないなどの問題も生じるのですが、これについてはまた別の機会でご説明致します。

2.受託者の権限

では、受託者はどのようなことができるのでしょうか。
受託者は「信託の目的達成のために必要な権限」が広く与えられています(信託法26条)。

信託財産の現状を維持する行為、賃貸等の収益を図る利用・運用行為のほか、信託契約等で定めることで新たな不動産の購入や建物の建設、銀行からの借入を行うなどの新たな権利取得も可能です。
また、信託契約で受託者の権限を制限することもできます。例えば、信託された不動産の賃貸は認めるが、売却は認めないとすることができます。

3.受託者の義務

受託者には、上記のような広い権限が認められている一方で、次のような義務が課されています。

①善管注意義務(信託法29条)
「善管注意義務」とは、善良な管理者の注意義務の略称ですが、管理をする人の地位や職業に応じて要求される義務の程度が異なります。
「家族信託」では、受託者は財産管理の専門家でないことが多いので、他人の財産を預かっていることで一般常識的に要求される注意を払う必要があります。例えば、アパートを借りた際に、家具をぶつけて窓ガラスを割らないように注意しなさい、といったものをイメージして頂くとわかりやすいと思います。
また、信託契約で、「自己の財産に対するのと同一の注意義務」と注意義務の程度を軽減させることは可能です。
これは、単に「善管注意義務」より軽いことを意味する法律用語です。なお、注意義務を免除する条項は無効となり得ます。

②忠実義務(信託法30条)
受託者は、法令と信託目的に従い、専ら受益者の利益のため忠実に信託事務を行わなければなりません。
簡単に言えば、受託者となった子供が親の財産を自分のために使ったり、自分の子に贈与したりするなど受益者の利益にならないことはしてはいけないという義務です。

③分別管理義務(信託法34条)
受託者は、信託財産と自分の財産を区別して管理しなければなりません。具体的には、自分の預金口座に信託財産を預けてはいけません。
そのため、受託者は、信託の登記または登録できる財産については、登記・登録する義務があります。また、登記・登録する義務を完全に免除することはできませんが、信託契約に定めた分別管理の方法をすることができます。

④自己執行義務(信託法28条)
信託契約は、委託者と受託者の信頼関係に基づいたものなので、受託者は原則として、他人に代行させず、自分で信託財産の管理・処分をしなければなりません。
とはいっても、信託事務は専門化・多様化しており、受託者だけで信託事務を行うことは困難になっています。
そこで、信託契約に第三者に委任できる規定がある場合や第三者に委任できる条項がなくとも信託の目的から相当であると認められる場合、第三者委託禁止の定めがあっても信託の目的に照らしてやむを得ないと認められる場合には第三者への委託が認められます。

⑤公平義務(信託法33条)
これは、受益者が複数いる場合には、受益者全員のために公平に職務を行え、という義務です。

⑥帳簿等の作成等、報告・保存の義務(信託法37条)
受託者は毎年1回、信託財産にかかる帳簿その他の書類を作成して受益者に報告する義務があります。
また、信託に関する書類を10年間保存し、受益者の請求に応じて閲覧させる必要があります。
信託契約で受託者の報告義務は軽減できる一方、書類の作成・保存義務は軽減・免除ができません。

⑦損失補填義務(信託法40条)
受託者の職務違反で、信託財産に損失や変更があった場合には、受益者の請求により受託者は損失の補填や原状回復義務を負います。

4.まとめ

受託者の資格、権限や義務について説明させて頂きましたが、受託者がどのような人なのかの、大まかなイメージは掴めたでしょうか?
今回は受託者についての基礎的な説明しかできませんでしたが、機会があれば、受託者を法人にした場合、複数にした場合、受託者の詳細な業務内容についても説明させていただければと思います。

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