相続とは、ある人が死亡したときに、死亡した人の財産を配偶者や子などの親族が引き継ぐことをいいます。
つまり、被相続人の死亡により、被相続人の財産を次の世代である相続人たちに引き継ぐことを相続と言います。
なお、日本の令和元年における行方不明者数(警察に行方不明届が出された数)は、86,933人にものぼります(警察庁webサイトより)。
では、行方不明者が身内にいる家族や親族は、死亡が確認できない場合、行方不明者の財産をいつまでも放置しなければならないのでしょうか?行方不明者がいる場合に相続手続きがどうなるのか、考えてみましょう。
もくじ
1.相続の開始原因
相続は死亡によって開始します(民法882条)。
これは、自然死亡だけでなく失踪宣告や認定死亡によって法的に死亡したとみなされる場合も含みますので、必ずしも死亡者数と相続発生件数は一致しません。
※自然死亡とは、老衰や病気、事故などが原因で亡くなること。
2.失踪宣告とは
失踪とは、不在者の生死不明の状態が継続することをいいます。
この失踪には、普通失踪と特別失踪の2種類があります。
(1)普通失踪
不在者の生死が7年間明らかでないとき
家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができます(民法30条1項)。
この場合、失踪期間の満了時(最後の音信から7年後)に死亡したものとみなされ、その時点で相続が開始します(民法31条)。
*利害関係人とは、一定の事実または他人のある行為などによって自分の権利または利益に影響を受ける人。
(2)特別失踪(危難失踪)
戦争・船舶の沈没・震災等の危難に遭遇して生死不明となり、危難が去った後1年間生死が明らかでないとき
家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができます(民法30条2項)。
この場合、危難が去った時に死亡したものとみなされ、相続が開始します(民法31条)。
3.失踪宣告の申立て
(1)申立方法
失踪宣告の申し立てをするには、下記の期間を経過する必要があります。
- 普通失踪の場合:音信普通となった時から7年間生死が不明
- 特別失踪の場合:危難が去った時から1年間生死が不明
申立てができる人は、利害関係人(不在者の配偶者、相続人に当たる者、財産管理人、受遺者など失踪宣告を求めるについての法律上の利害関係を有する者)です。
なお、不在者の従来の住所地または居所地を管轄する家庭裁判所に申立てを行います。
(2)調査と公示
失踪宣告の申立て後は、家庭裁判所調査官が申立人や不在者の親族などに対し調査を行った後、官報や裁判所の掲示板に、不在者は生存の届出を、不在者の生存を知っている者もその届出をするよう公告(公示催告)を行います。
その期間内に届出がない場合に、失踪宣告の審判がなされます。
公示催告の期間(家事事件手続法148条3項)
- 普通失踪の場合:3か月以上
- 特別失踪の場合:1か月以上
*官報とは、政府が発行する新聞のようなもので、法令の交付や国会の議案関係、大臣や各省庁などの人事異動、破産や失踪宣言などの裁判所公告が記載される。
(3)失踪宣告後の手続き
失踪宣告の審判が確定した場合、申立人は審判確定の日から10日以内に本人の本籍地または届出人の住所地の市区町村役場に失踪の届出をします(戸籍法94条・63条1項)。
これにより、戸籍に失踪の記載がなされ、相続が開始します。
4.認定死亡とは
通常、死亡届は、届出義務者が医師の死亡診断書または死体検案書を添付の上、死亡の事実を知った日から7日以内に市区町村に提出します。
しかし、もし死体を発見できない場合、これらの資料を添付することができません。
そのため、災害等の事変によって死亡が確実である場合には、死体が発見されていない場合であっても、取り調べをした官公署が死亡地の市区町村に死亡報告をすることによって、戸籍に死亡の記載がなされる扱いがとられます(戸籍法89条)。
これを認定死亡といい、この場合、戸籍に記載された日時に死亡したものと推定され、相続が開始します。
5.最後に
前述のとおり、日本における行方不明者は85,000人を超えています。
それらの家族、親族は行方不明者の財産をどうすればいいか分からず放置している場合も少なからずあるのではないでしょうか。
失踪宣告や認定死亡を知ることで、解決の糸口が見える可能性があります。
また、このことを知ったけれども実際に相続をどうすればいいか分からないこともあるかもしれません。
そのときは、一度当事務所が運営しています相続LOUNGEへお立ち寄りください。
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なお、単に行方不明の場合、タイミングやニーズによっては、失踪宣告ではなく不在者財産管理人の選任申立てが有用なケースもありますので、専門家にご相談ください。