養子縁組とは、血縁上の親子関係がない者同士に、法律上の親子関係を成立させるための制度です。
養子縁組をすることで法定相続人の数を増やすことができるため、代表的な節税対策の1つとして知られています(ただ、養子縁組で相続税の節税を行える範囲は限度が決められていますので、要注意です。)。
もくじ
1.養子縁組とは?
養子縁組とは、血縁上の親子関係がない者同士に、法律上の親子関係を成立させるための制度です。
養子は縁組の日から養親の実子と同じ身分を取得します。
したがって、養子は養親と1親等の血族になるだけでなく、養親の実子と兄弟姉妹になるなど親族関係が生じます。
また、養子は実子と同様に養親の第1順位の法定相続人となり、財産を相続することができます。
養子縁組には、普通養子縁組と特別養子縁組の2つの種類にわけられます。
参考:法務局「養子縁組について知ろう」https://www.moj.go.jp/MINJI/kazoku/youshi.html
2.養子縁組の種類
(1)普通養子縁組
実の親との法律上の親子関係を解消しないまま養子縁組をする。
縁組の成立方法
養親と養子の同意により成立(養子縁組届)
条件
養親:成年に達した者
養子:尊属又は養親より年長でない者
監護期間
特段の設定はない
(2)特別養子縁組
実の親との法律上の親子関係を解消し、新たに親子関係を結ぶ
*実親が精神的・身体的あるいは経済的事情により子の監護養育ができない場合や、虐待・遺棄など著しく不適当な監護を行うなど子が利益を著しく害されている場合に、その子の福祉のため実親から断絶し養親の実子として育てられるよう、子どもの健全な育成を図るために出来た制度
縁組の成立方法
養親の請求に対し、家庭裁判所の決定により成立します。
実父母の同意が必要。
(ただし、実父母による虐待など養子となる者の利益を著しく害する理由がある場合や実父母が意思を表示できない場合は、この限りではありません)
条件
養親:原則25歳以上(夫婦の一方が25歳以上の場合、一方は20歳以上で可)
配偶者がある者(夫婦ともに養親)
養子:原則、15歳に達していない者(ただし、15歳に達する前から養親となる者に監護されていた場合には、18歳に達する前までは、審判を請求することができる)
監護期間
6ヶ月以上の監護期間を考慮して縁組
2.養子縁組を行った場合、相続の際にどのような影響がでるのか?
節税の面では、普通養子縁組でも特別養子縁組でも効果は変わりません。
しかし、特別養子縁組は、前述したとおり子どもの健全な育成を図るために出来た制度であり、実親との親族関係も終了するため、節税対策のためだけに養子縁組を行う場合は、普通養子縁組の手続きを取ることが一般的といえるでしょう。
なお、普通養子縁組の手続きを行った場合、養子は養親に対しても実親に対しても、子として第一順位の相続権を持つことになります。
「うちの家では次男を養子に出したので、父の相続の際には次男は一切相続権がない」といったように、養子縁組をすることで養子は実親の相続に一切関係がなくなると思われている方もいらっしゃいますが、養子に出しても実親の相続権は失われるわけではありません。
普通養子縁組では、実親と養親の両方を親として持つことになり、養親と実親いずれの相続が発生した場合でも相続人になるため、注意が必要です。
3.養子縁組を行った際の戸籍の取り扱いについて
(1)普通養子縁組の場合
養子縁組の届出がされると、養子は実親の戸籍から除籍されるとともに、養親の戸籍に入ります。
養子は実親の戸籍から除籍されますが、前述したとおり親子関係が切れることはありません。
また、養子は養子縁組届を出した日から、養親の嫡出子になり相続などの権利は実子と同じ割合で持ちますが、養子の続柄は実子が「長男」「長女」等と書かれるのに対して、養子は「養子」と記載されます。
戸籍に実親の名前が記載される点も、特別養子縁組を行った場合の戸籍表記と異なります。
(2)特別養子縁組の場合
特別養子縁組の届出がされると、まず養子が実親の戸籍から除籍されるとともに、養子を筆頭者とする単独の新戸籍が作成されます。
この時点で、養子の氏は養親の氏と同一となり、父母欄には養父母の氏名が記載されます。
その上で、養子は新戸籍から養親の戸籍に入籍することになります。
養親の戸籍において、養子の続柄は、「長男」「長女」のように実子と同様の記載がされます。
このように一度新戸籍を編製することで、養親の戸籍に記載されている養子の欄には、「従前戸籍」として新戸籍(筆頭者は養親の氏を称する養子)が記載されることとなるため、養親戸籍の養子の欄には実親の氏名や、養子の元の氏(実親の氏)が記載されなくなり、一見すると養子縁組がなかったかのような外観となります。
もっとも、養子の「身分事項」欄には、「民法817条の2」と記載されるため、養子が特別養子であることを知る手がかりは残されています。
なお、養子が養親の戸籍に記載されている場合を念頭に置くと、特別養子縁組における養子は「戸籍に記載されている者」として、養親戸籍の謄本等の交付を請求することができ、「その戸籍から除かれた者」として、新戸籍及び実親戸籍に係る戸籍謄本等の交付も請求することができます。
一方で、特別養子縁組が成立した場合には、もはや、養子は実親の「直系卑属」には当たらないため、実親が実親戸籍(特別養子縁組成立時のもの)から除籍されている場合には、養子は、原則としてそれ以降に実親が入籍した戸籍に係る戸籍謄本等の交付を請求することができません。
実親は、特別養子縁組の成立以降は養子の「直系尊属」には当たらないため、新戸籍・養親戸籍等・特別養子縁組成立以降に養子が入籍した戸籍に係る戸籍謄本等の交付を請求することは出来ません。
4.まとめ
相続対策として養子縁組を検討することは、法定相続人を増やして相続税を節税する有効な手段です。しかし、普通養子縁組と特別養子縁組では、戸籍の取り扱いや相続権に違いがあり、それぞれのメリット・デメリットを正確に理解する必要があります。特に養子縁組を行うことで、家庭内の関係や将来の相続手続きにどのような影響があるかをしっかり検討することが重要です。 「節税には興味があるけど、家庭内のトラブルは避けたい」「相続税だけでなく、子どもたちの将来も考えた選択をしたい」――そんなお悩みをお持ちの方は、専門家に相談することで最適な解決策を見つけることができます。 当事務所では、弁護士だけでなく、税理士、司法書士が在籍しており、養子縁組を含む相続対策をトータルでサポートします。無料相談も実施中ですので、まずはお気軽にご相談ください。
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