被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継せず、放棄することを「相続放棄」といいます。
家庭裁判所に相続放棄の申立てを行い、認められた場合には、被相続人の財産を一切引き継ぐことができなくなります。
また、被相続人の財産(骨とう品など)を処分したり、被相続人名義の口座から預金を下ろすことは、被相続人の財産を引き継ぐ意思があるとみなされてしまい、相続放棄が認められませんので、被相続人の財産を取り扱う場合は気をつけなければなりません。
本記事では、特にご相談の多い相続放棄をする場合に注意すべき点について解説させていただきます。
1.相続放棄手続きの進め方
ここからは、相続放棄の申立についてご説明いたします。
相続放棄の申立ては、被相続人が亡くなられた最後の住所地を管轄する家庭裁判所で手続きを行います。
最後の住所地が分からないときは、被相続人の本籍分かれば本籍から住所を調べることができますので、役所へご相談されると良いでしょう。
2.相続放棄の申し立てに必要な書類
続いて、相続放棄の申立に必要な書類をお伝えいたします。
①申述書(相続放棄)
②被相続人が亡くなったことが分かる戸籍謄本
③被相続人と申立人の関係が分かる戸籍謄本
④被相続人の住民票(戸籍の附票でも可)
⑤収入印紙800円分
⑥予納郵券(※郵券は金額や組み合わせが異なりますので、管轄の裁判所に確認が必要です。)
①~⑥の書類以外にも裁判所から追加で書類の提出を求められることがありますので、裁判所の指示に従って書類を提出しましょう。
3.相続放棄の注意点
①相続放棄の順序
相続放棄は第一順位の相続人(被相続人の子またはその代襲相続人)が全員相続放棄をしなければ、第二順位の相続人(父母や祖父母)が相続放棄の申立を行うことができません。
第二順位の相続人が相続放棄を行う場合は、被相続人が亡くなった日から3か月以内の期限ではなく、自分が相続人であると把握した日から3か月以内が期限となります。
②相続放棄の無効
相続放棄は、法的に当初から相続人とならなかったものとみなされることになります。
そのため、「相続放棄をすることと矛盾する行為」をすると相続放棄が認められなかったり、仮にその行為を裁判所に報告しないで相続放棄が認められたとしても、後から亡くなった方の債権者から相続放棄は無効であるとして、借金の返済を求められる可能性はあります。
つまり、裁判所はあくまで相続放棄をする相続人の自己申告した内容だけに基づいて相続放棄を認めるかどうかの審査をするだけですので、もしその内容に虚偽や未申告の内容があり、それを亡くなった方の債権者が知って相続放棄は無効であるとして、相続放棄をした相続人に負債を支払うように請求することはなんら禁じられていないことに留意する必要があります。
この「相続放棄をすることと矛盾する行為」とは、亡くなった方の財産を処分したり領得したりなど、相続したことを前提とした行動を指し、法的には「単純承認」といいます。
よくある例として、亡くなった方の遺品を処分したり領得したりするケースです。
亡くなった方の遺品すべてに一切手を付けてはいけないということではなく、いわゆる形見分けという、亡くなった方の遺品のうち価値のないものを貰う分には問題ありません。
また価値が一切なく処分費用が掛かるようなものは処分しても問題はありません。
しかし価値がないという判断は自己判断では難しく、古着等明らかに価値がないものを除いて、業者の見積もりを取る等して価値がないことを裏付けるものを確保しておく必要はあります。
後から相続放棄に支障が出ることがないように事前に相続放棄に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。
なお、実際に、債権者から相続人が亡くなった方の価値のある財産を処分したとします。
債権者から相続放棄は無効であるとして、相続人に対して負債を支払うように請求するケースは殆どありません。
しかし法的には請求されるリスクが付きまとい続けるという不安と、実際に請求されるケースも少なからず存在します。
実際に請求されるケース
- 関係者から債権者に対する密告した場合
- 亡くなった方に価値の高い財産があることを債権者に捕捉されている場合
- 亡くなった方が知り合い等の個人から借り入れ、その個人の債権者が相続放棄で借金が帳消しとなることが納得できずに調査をしたりして発覚する場合 等
4.まとめ
債権者から突然通知が届いたことで、自分が相続人であると知った場合は、通知を受け取った日からできるだけ早く申立てを行う必要がありますので、早めに手続きを行いましょう。
相続放棄は期限が定められていますので、手続きで分からないことやお悩みのことがあれば、裁判所や弁護士などの専門家にご相談されることをお勧めします。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
弁護士法人菰田総合法律事務所
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