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生前の相続対策一般

財産目録は作成していますか?

2021.05.05

生前に財産目録を作成しておくことで、遺産相続を進める際に故人の相続財産を調べる必要がなくなるため、相続人同士の争いを避け、よりスムーズな相続が可能になります。また、財産目録の作成は遺言書作成の第一歩でもあり、財産目録と一緒に相続人リストも作成するとより円滑な相続が可能になります。

相続財産には預貯金、不動産、有価証券、株券、装飾品等様々な財産が考えられるため、まずは財産をリストアップしていくことから始めましょう。

ただし、借金などのマイナスの財産も相続財産の対象になり、誰かの連帯保証人になっている場合にはその地位も相続人へ引き継がれてしまいますのでこちらも記載することを忘れないようご注意ください。

リストアップした後は、財産の所有状況を整理し、さらに詳しく書き出していきます。不動産であれば、不動産登記事項証明書を取り寄せれば正確な情報が分かります。

以下、財産目録を作成する上で知っておくべき知識として、相続財産にはどのようなものがあるか、どのように相続人へ承継されることとなるのかといったこと等をご説明します。

主な相続財産

①預貯金

預貯金は相続の対象となるため、相続人が名義変更や払い戻し請求を行い、預貯金を承継します。

遺言の中に、特定の預貯金を特定の相続人に相続させる旨の定めがない場合には、預貯金の名義変更や払い戻しの請求の際に、銀行から遺言書もしくは遺産分割協議書、相続人全員の住民票と印鑑証明、戸籍謄本、除籍謄本などの必要書類の提出を要求されることがあります。

②不動産

不動産は相続財産の中で大きな割合を占めることが多い相続財産です。共同相続人の間で均等に分けることが難しく、分割することで価値が下がることもあるので、相続財産をめぐる争いの要因となることもあります。

特に、相続財産が不動産しかない場合には、数人の相続人のうちの1人が遺言で不動産を相続することになると、他の相続人に分け与えられる財産がなくなってしまう場合もあります。主な遺産が不動産で、それを現物分割することが難しい場合には、競売手続等で売却し、その代金を分割する「換価分割」、又は、不動産を取得した相続人が、その代償として他の相続人に相当な金銭を支払う「代償分割」を行うことになります。

③借地権・借家権

被相続人が生前有していた借地権や借家権(ここでは、建物の賃貸借契約上の権利(賃借権)のことをいいます。)は、財産上の権利として相続の対象になります。この場合、相続人は、特段の事情が無い限り、被相続人と同居していたか否かにかかわらず、被相続人が契約当事者となっている賃貸借契約をそのまま承継することとなります。

なお、借地権や借家権については、被相続人に事実婚関係にある内縁の妻がいた場合に、その内縁の妻が借地権や借家権を承継することができるかが問題になることがあります。内縁の妻は相続人にはならないのですが、被相続人の生前から、内縁の妻が被相続人の賃借する建物に同居していた場合において、相続人がいないときは、借地借家法の規定により、内縁の妻がその借家権を承継することができます。(ただし、相続人がいた場合には適用されず、相続人及び賃貸人の双方との話し合いが必要になります。)

④損害賠償請求権

被相続人の第三者に対する損害賠償請求権は、財産上の権利として相続の対象になります。

⑤事業資産

事業資産については、株式会社の場合は株式、合名会社、合資会社、合同会社又は旧有限会社法による有限会社の場合は出資の持分が相続の対象になります。

なお、会社の代表取締役等の経営者が同時に株主でもある場合、同人が死亡したときは、相続財産である株式の名義を相続人へと書き換える必要が生じますが、会社所有の財産は遺産とは無関係であるため、その名義を個別に書き換える必要はありません。

これに対し、個人事業の場合の事業資産の相続は、一般の相続と同じ扱いになります。特許権や意匠権、商標権、不動産、借地権、借家権、債権などは相続財産ごとに個別の手続きが必要です。

⑥債務

被相続人が金融機関に対して債務を負っていたり、連帯保証人になっていたりした場合、このような負の財産も相続人に相続されます。ただし、債務が過大なときは、相続人は、家庭裁判所に申述を行うことで、相続を放棄することができます。相

続放棄をしない場合には、原則として、各相続人が法定相続分に応じた債務を負うことになりますが、相続人の1人が相続放棄をすると、当該相続人が承継すべきであった債務は、相続放棄をしなかった相続人で負担することとなります。

また、被相続人の財産状態が不明で、債務の額が積極財産を上回るか否かが不明であるような場合には、相続開始(被相続人の死亡)を知った日から3か月以内であれば、相続人全員で裁判所に申述を行うことにより、相続によって得た財産の限度でのみ債務を弁済する責任を負うこととすることも可能です(このことを、「限定承認」といいます。)。
なお、保証債務も相続の対象となり得ますが、身元保証契約に基づく包括的信用保証債務など相続の対象とならないとされるものもあります。

⑦生命保険金

保険金請求権は、保険金の受取人によって相続財産かどうかが決定します。保険金の受取人が「被相続人」自身の場合は、相続財産となります。

一方、受取人に「特定の相続人」を指定している場合には相続財産とはなりません。保険金請求権は保険契約の効力発生と同時に受取人と指定された相続人の固有財産となるからです。また、受取人が「法定相続人」と指定されている場合にも相続財産とはなりません。

⑧公営住宅の使用権

公営住宅は、入居者の入居資格を審査したうえで認めるものなので、当然に相続できるものではありません。

相続人が再度、入居資格を審査されて条件を満たすことができるときに限り、引き続き居住が可能になります。

⑨墓地・位牌などの祭祀財産の承継

墳墓、祭具などの「祭祀財産」は、祖先の祭祀を主宰する者(祭祀承継者)が承継することとなり、遺産分割の対象となる相続財産には含まれません。

遺言で祭祀承継者の指定がない場合、祭祀財産は、それまでの慣習に従って引き継がれます。慣習がない場合は、家庭裁判所に調停または審判を申し立てて祭祀承継者を決定することになります。

まとめ

今回は、財産目録を作成するうえで知っておくべき主な相続財産についてご説明しました。

ただ、法務局での証明書取得や役所での確認など、相続財産調査は簡単なものではないと思いますので、負担の軽減やリスクを減らすために一度弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

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